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真実への一歩なんだが?

 天空城、昇龍は既に納得した。しかし、まだ美沙は納得していない。昇龍自体、上条の相手をして疲れたというのが大半だが、あんなキスシーンを間近で見せられてただで帰すわけにはいかない。

 そのためならば、幼馴染の隆を疑おうが何の躊躇(ためら)いもいらない。


「お兄ちゃんと上条くんが暖簾(のれん)を入れ替えてないとすれば、じゃあ誰がやったっていうの? この旅館にはスタッフを含めた十一人しかいない! そしてそれを実行できるのは、お兄ちゃん、上条くん、女将さん、新月さんの以下の四人!」


 ビシッと人差し指を上条に向ける美沙。

 女性陣七人は当然温泉に入っているため、除外。そうなれば状況的に消去法で実行できるのは、隆、上条、女将、新月の四人となる。そのうちスタッフである女将と新月は違うと宣言。そうなればもう、この二人のどちらか、もしくは両者ということになる。


「まさか、スタッフがやった……なんて言わないよね?」


 再度確認だが、スタッフがやることも一様は可能。しかし、旅館内のスタッフがわざわざそんなことをするだろうか、というのが大前提。



「いや、スタッフじゃない。そして僕らでもない」


「じゃあ、誰?」


「考えられる可能性は二つ。一つは外部からの侵入した人物X!」


「人物X? この旅館の入り口は既に封鎖されたも同然! どこからその人物Xが侵入したっていうの?」


「侵入したのが入り口でないとしたら? 例えば、そこの窓とか」


「……っ!?」


 上条は女湯の左側にある小窓を指差す。一堂の視線がそこに集まる。

 しかし、窓は閉まっていて一見すれば侵入した形跡がないように見える。


「そういえば、さっき新月さんが窓を閉めていたような……」


「そうなのか!?」


「お兄ちゃんと上条くんが来る前、ここに私たち五人とスタッフの二人が集まった後、新月さんが窓を閉めていた。だからその時までは空いていたんだよ」


「ビンゴ」


 親指を鳴らし、音を立てる。

 こうなれば話はまた変わってくる。

 外部からの侵入した人物X。その人物が暖簾を入れ替えた可能性が出てきた。


「でもなんでそんな人が暖簾を変える必要があるの?」


「きっとその人物には変えなくちゃいけない理由があったんだろうね。それがなんなのかまではわからないけど。どう? 納得してくれた?」


「……まあ。ごめんね、上条くん。疑って」


「あーしも悪かったな」


 美沙と昇龍は納得し、謝罪をした。もしかすれば、隆と上条を決めつけて疑っていたところもあったのかもしれない。


「え? 全く気にしてないんだけど。こうしてみんなで可能性を一つ一つ潰していくのも、真相への第一歩だと僕は思うね」


 その言葉に一同はにっこり笑った。

 一つ一つの可能性を潰すことによって、真実へと近づく。可能性が消えることで、最後に残った可能性こそが真実へと変わる。今の上条たちにはそれが大事なのだ。


「待て。さっき君は二つと言ったよな? 残りの一つはなんなんだ?」


「だから幽霊だよ」


「キャーーーーーーーッ!!」


「おお……」


 可憐はまた幽霊という言葉に反応し、近くにいた天空城にしがみつく。

 管理局も隆もいないため、しがみつく相手が天空城しかいないのだろう。天空城の腕を自分の胸で挟むが、天空城は全くの無反応。そういう部分もまた抱きつきやすさなのかも。


「そういえば可憐ちゃんは納得したの?」


「へ? 私?」


「だって最初手を上げてたじゃん」


 初めに手を挙げたのはシャルロットを除いた、美沙、昇龍、天空城、可憐。そのうちすでに三人は納得している。


「今納得したわ……全部幽霊なのよ……」


「……」


(全く違う解釈してるし……まあいいか)


 しかし、可憐の答えも一理ある。

 今回のこの騒動、幽霊という可能性だってある。だから一概には誰も否定できない。上条は少し呆れつつも、黙っていることにした。


「あとさ……全く関係ないんだけど、上条くん一ついい?」


「うん」


 天空城の身体からおずおずと小さく顔を出す可憐。

 可憐には一つ、気になることがあった。


「男の子ってさ……みんなその……えっちなのが好きなの?」


「「「「……」」」」


 とんでもない爆弾発言だった上、本当に全く関係ない話だった。可憐は女湯から出た後からずっと何を考えていたのか。場が隆と上条に向く中、一人だけおかしなことがずっと頭によぎっていた。


「そりゃもう、好きでしょ!」


 元気いっぱいに答えた。


「じゃあさ……そこの東條隆も?」


「もちろん! だって、覗きを過去にするくらいだよ! だから今回のこの旅行だって、美少女たちと遊べて隆もご満悦だったよ!」


 めちゃくちゃ嘘を盛り込むアホ。隆が気絶していることがいいのか悪いのか。否定する人物が誰一人いないため、全員が上条の話を受け入れてしまう。


「でもさ、エロは悪ではない。法の先にいったり、公衆の面前でエロを言う奴が悪いだけ。隆は、それを守り抜いた男なんだ……」


 もう何を言っているのかがわからないアホ。隆の好感度を上げようとしているようだが、隆からしてみればいい迷惑。

 隆は三次元には全く興味がない、ただのオタク。

 しかし、五人は上条の言っていることに納得した。


 "隆も実はエロいのが好きなのだ"と。



「あと他に怪奇現象らしきものが起きてたりとかはしてない? どんな小さなことでもいい」


「起きてるよ。温泉内で謎の生命体が暴れ出してタオル剥ぎ取ったり、全員分の服が消えたり」


「ええ!? そんな大事なこと早く教えてよー!」


 暖簾の話でだいぶ遠くなっていたが、謎の生命体が暴れ出したことや、全員分の服が無くなったことがいまだに解決していない。

 上条も今初めて聞いたそうだ。

 そもそもあれは一体、なんだったのだろうか。


「僕と隆も、新月さんらしき人物が二人いるのを、ほぼ同時に見たんだ」


「ひい……!」


「なんだそれ……! おい上条。あーしら先にまだ情報交換した方がいいんじゃねえのか?」


「みたいだね」


 ここで双方の情報を一旦全て交換することにした。

 上条からは二人目の新月の存在。昇龍たちからは温泉内で起きたこと。



 しかし、重要な情報が手に入るなどではなく、余計に謎が深まっただけ。そうなればやることはもう、一つしかない。


「だめだ。全くわからん。とりあえず、僕らにはいざという時の赤城ちゃんがいる。赤城ちゃんは僕らにここを調べるように言った。それなら今はここを調べることにしよう」


 赤城は間違いなく何かを掴んでいる。

 しかし、そのために必要な情報としてここの調査を頼んでいた。ならば、今はそれに専念するしかない。


「振り分けはどうする?」


「僕とシャルロットちゃんと昇龍ちゃんでここの浴室前を。江南ちゃんは隆の看病をお願い」


「浴室前に三人がかりでいいのか?」


「問題ない。赤城ちゃんはきっと、この浴室前に何かがあると踏んでいる。ならここを徹底して調べた方がいい」


 赤城が調べてほしいと言ったのは、あくまで浴室前。彼女が掴んだ手がかりはきっと、この浴室前に繋がるはず。

 隆もまだ気絶しているため、看病は美沙に任せるのが適任。

 他にもメンバーのチョイスにも意味がある。


「あとは天空城ちゃんと可憐さんの片方が脱衣所、もう片方が温泉を調べてほしい」


 この二人は洞察力が高いため、万が一この二つに何かあった時でも見落としは起きない。


「ああ」


「わかったわ」


「あとさ、」


 全員がそれぞれに散ろうとしたその時、上条が何かを言いかけた。


「さっき僕、隆にキスしてないよ。キスしたフリをしただけ。ほんとだよ」


「……ッ!?」


 その言葉で全員の目が丸くなる。キス……してない……?

 じゃあ、隆の唇は――


「よし、始めよう!」


 気合の入った掛け声の元、上条は動き出す。

 こうして六人はそれぞれ動き出し、調査を始めた。確実に沢村さんの正体に近づきつつある。

 多少なりとも希望が見えたことで、隆の命を救うことに近づけた。僕がなんとしてでも、隆を助け出して見せる……!

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