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何の数字かわからないんだが?

 ――十九時五十五分――


 美沙が出ていった後、部屋は昇龍によって収められ、この場に全員が集まった。

 その後は天空城の説明により、隆たちも状況を把握した。天空城は可憐な言葉をメモしていたため、それを見せながら。天空城がメモを広げ、三人に見せる。

 メモにはのちのちのあの加賀の行動も記されている。


【メモの内容】


 17時30分:旅館に到着(以降は部屋で美沙、加賀、シャルロットはテレビを見る。昇龍、赤城が話す。天空城、可憐が話す)

 17時55分:加賀のみが部屋に少しの間残る(扉の施錠は可憐)

 18時00分:土間に東條隆、上条、女将さん、新月さんを含めた十一名が集まる

 18時30分:全員が部屋に戻る(可憐が鍵を使って部屋の扉を開ける)、天空城が退出

 18時55分:天空城が戻る

 19時00分:料理が運ばれる(この時、加賀が料理の説明を受ける)

 19時20分:全員が食べ終わる、シャルロットが退出

 19時25分:テレビがついていたことに加賀が気づく


 メモには、天空城の字で達筆にメモされていた。


「すげえな、天空城」


「わ、私のことはいいっ……!」


 少し照れくさそうに頬を染める天空城。メモを見せただけなのに、まさか褒められるなんて思ってもいなかったようだ。


「いやでも、わかりやすいよ」


「さすがは風紀委員の天空城さん!」


 上条とシャルロットも賞賛している。


「わかったわかった! それより、君らから見て何か気づくことはあるか?」


 気を取り直し、問いただす天空城。

 この部屋に先ほどまでいた六人ではなく、隆たち三人から見て何か気づくことなどがもしかすればあるかもしれない。

 そう思った。


「見た感じないな。でもなにかこのメモ、引っかかる」


「すまない。どこか間違っていたか」


「違う、そうじゃない。何かが引っかかるんだよ。なんだ、この感覚……」


 顎に手を当て、メモをじっくり見ながら考える。

 隆の中で何かが引っかかっていた。天空城からは起きたことの説明を踏まえた上でメモを見せてもらっている。そして、メモを見て何か引っかかったと感じた。

 もちろん、加賀が一番怪しいのは間違いないが、そこではない。もっと重要な、テレビをつけた犯人に繋がる何かが。


「それで、結局加賀ちゃんが犯人かどうかって話だっけ? 君がそうかどうかは置いておいて、犯人についておおよその予想がついてるんだっけ?」


「……」


 上条の問いに横目で口角を上げ、無言の加賀。

 そして――


「まあねえ〜」


 加賀には予想がついているという。だからこそ、今は彼女の情報が一番重要になってくる。それが嘘であれ、本当であれ、これ以上考えても今の段階では何も出てこない。

 だからこそ、加賀の協力が必要と感じた。


「よかったら、君の思う犯人像やその推理を聞かせてくれる? ヒントでもいい」


「……嫌だね」


 少しの迷いの後、加賀はノーと答えた。


「どうしてですか?」


「だから、私はこの状況を楽しんでるんだって! 私がそんなの答えてもつまらないでしょ!」


「そこを何とかっ!」


 上条は手を前に出し、加賀に祈るように言った。


「ど〜しよっかな〜。タダじゃ情報を渡せないねえ〜。それじゃあ私が楽しめなくなるし、ここはウィンウィンに私が今から提示する条件を呑んでくれたらいいよ〜」


 もしここで加賀が推理を披露すれば、もしかすれば真犯人はわかるかもしれない。それどころか、沢村さんの正体がその人物であるということがわかり、推理を女将、新月のどちらかに宣言すれば怪奇現象はこれ以上は起こらなくなる。


 しかし、加賀から言わせてみればそれは全くもってつまらない。なぜなら、これ以上怪奇現象が起きなくなるから。

 ならば、それと対等に加賀を楽しませられるほどのものがなければ、加賀は口を破ろうとはしない。


 不気味な笑みを浮かべながら、ニヤニヤニヤニヤとずっと笑い続ける加賀。その口角はかつてないほど上がり、右手を触手のようにぐちゃぐちゃと動かす。


「条件?」


 可憐と赤城は目を合わせ、何かを企んでいることを察した。


 そして、鋭い目つきで人差し指を立て、ある人物を指差す。


「十一」


「十一?」


 天空城。天空城に十一と言い、ふっと笑った。何の数字なのか全くわからない天空城。

 天空城が考えている間にもその指はすぐさま動き――


「十二」


「?」


 次は昇龍。これまた身に覚えのない数字。加賀の顔はいまだに笑いを引きつっている。その後も、彼女の数字の連呼は続き――


「十四。八」


「んー?」


「何の数字?」


 シャルロットと美沙にも数字を言う。美沙に関しては数字は一桁。これには何か意味があるのだろうか。当然、二人も何の数字なのかわかっていない。


 ――そしてその指は隆と上条にも。


「ゼロ。ゼロ」


「え!? ゼロ!?」


「……」


 隆と上条にはゼロと宣言。上条はリアクションこそ大きいが、何なのかは本人はよくわかっていない。


 シュッ……!


 そして、ものすごい速度で可憐を指差す加賀。


「十九!」


「私の年齢、なんてことはないわよね……」


 苦い顔で笑う加賀を見続ける可憐。この時の加賀の声量は、他の数字を言った時よりも大きい。十九は可憐の年齢でもあるが……


「十五……いや、十八」――


「なぜ言い直す必要が」


 最後に赤城を指差し、にっこり笑顔で十八と言う。十五と初めに言ったが、言い直した。


 そしてその意味がすぐにわかることとなる。

 これら全ての数字の意味を加賀はすぐさま答えた。


「今私が言った回数分、全員乳を揉ませろ」


「「「「「「「「……ッ!?」」」」」」」


 その場に居た全員が驚く。加賀の顔はまたしても不気味な笑顔の表情に戻っていく。

 数字なんて最初から全く関係なかった。ただ加賀が揉みたい回数を言っていただけ。

 そして、まさかこんな場面ですらこんなことを言うなんて誰が思っていただろう。一体彼女は何を考えているのか。


「そうすれば、私の推理を心置きなく言ってあげる。もしかしたらこれでもう、怪奇現象は起きなくなるかもねえ」


「そ、そうだ。早いうちに沢村さんの正体を暴けば、怪奇現象は起きなくなる」


 早いうちに沢村さんの正体を暴けば、もう怪奇現象は起きない。しかし、暴かなければ今日は残りの時間、ずっと怪奇現象が起き始めることとなる。


「ていうか、私の数字小さくない? 赤城ちゃんは多いのに」


「そりゃまあ、赤城は特別だし!」


 文句を垂れる美沙。


「はあ。それで僕と上条はゼロというわけか」


「そーゆーこと!」


 男の胸なんて揉んでも仕方ないのは当然。加賀はとにかく、女の胸が揉みたいただ一つ。


「あ、ちなみにそこの男子は部屋に戻ってね。入ってきたらぶち殺すぞ」


 猛獣のように低い声、鋭い目つきで二人を睨みつける。

 隆の頭からはへんな汗が出るほどに。

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