手のひらで踊らされていたんだが?
これで七人全員の行動がはっきりした。
加賀は一人、部屋に戻る時間があった。
その間、加賀が何をしていたのかは誰も見ていない。
つまり、考えられることとすれば――
「もう一度聞くわ。加賀、あなたがテレビの電源をその間につけたの?」
「くっくっく……」
「加賀ちゃん?」
俯きながらわざとらしく笑う加賀。
全員に謎の緊張感が走る。
そして、彼女は大きく口を開いた。
「あーっはっはっはっはっはっ!! だからさっき言ったじゃん! 何をかって? もう一度言っちゃう! 私の手のひらで踊るなんて可愛いね〜、君たちは!!」
これまでにないほどの悪役のような笑いっぷり。加賀のテンションは最高潮を迎えていた。まるで、この時を待っていたかのように。初めからこうなることへと導かせるためかのように。
と言ってもこれは、テレビをつけたかどうかというだけの話なんだが。
「はあ。どうせこんなことだとは思ってたけどね。あなたの性格からして、みんなを楽しませようとか考えてたんでしょ?」
「もちろん! 私はいつだってみんなを楽しませるために動いてるからね!」
「……」
ここまで考えてきたのに、結局犯人は加賀。そんな彼女にこの場の全員は遊ばれていた。
ただただそのことで頭がいっぱいになり、言葉が誰も出なかった。
しかし、ここで終わらないのが加賀。そんな空気すらも変える一言を放つ。
「ってまあ、私が犯人じゃないんだけどね!」
「え? 何を言ってるの? あなたしかいないじゃない! それに、今みんなを楽しませようとって――」
「いやいや! それは、推理ごっこでみんなを楽しませようとっていうだけ! テレビをつけたのは私じゃない」
加賀の推理ごっこというのは、加賀がシャーロック加賀と名乗ってから、今の今まで。
決して、加賀が犯人だから快楽的に楽しんでいるというわけではない。
そして、犯人と言ってもただテレビの電源をつけたかどうかというだけである。
「でも、加賀ちゃんが部屋から出てきた後は私たち三人で出てきたし、鍵は可憐さんが持ってる。そうなれば、施錠する前に入った加賀ちゃんしかいないと思うんだけど」
「……」
加賀は口角を上げながら、横目になる。
「じゃあそうかもね。私かもしれない。でも、私はもうおおよその予想ではわかってるよ。テレビをつけた人物が誰なのかが。確信はまだないけどね」
怪しそうにニヤニヤと笑う加賀。
加賀は自らを犯人ではないと宣言し、別に犯人がいると言う。さらには加賀の思う、その犯人と思わしき人物の検討もおおよそでついているという。彼女の言葉が本当なのか嘘なのか。それは、加賀本人のみぞ知る。
「つまりはどういうことだ? 加賀さんは犯人ではないのか?」
「でも、どう考えても状況的に可能なのって加賀ちゃんしかいないし……」
「あー、わっかんねえー!!」
頭をくしゃくしゃとして困惑する昇龍。昇龍自身、考えることが他の女性陣に比べて得意ではないため、頭の中にははてなマークしか浮かんでいない。
「みんな、惑わされちゃダメよ。この子は平気で嘘をつく子。明らかにこの状況を楽しんでいる」
そんな中でもやはり可憐は冷静だ。加賀のことをよく理解している彼女だからこその言葉。
(このまま加賀のペースに惑わされては、さらに混乱を招くだけ)
「さっすが可憐! 私のことをよくわかってるじゃん! そんな可憐に免じて、私からヒントをあげよう!」
「ヒント?」
「犯人は三択。私か」
自分の胸に手を当てる加賀。
「私以外の人物Xか」
人差し指を立て、ぐるりと回し、全員を指差す。
ここまで誇らしげに語る加賀。
その直後、この場の加賀以外の全員が考えることをやめていた第三の選択肢を出す。
「幽霊である、沢村さんか」
その人差し指を口元に当て、半目で言った。
「いやああああああっ……!!」
「ちょ、可憐さんっ!?」
その瞬間、可憐が叫び出して近くにいた天空城の腕にしがみつく。
こうなると一瞬にして冷静さを失う可憐。
これすらも加賀の計画のうち。冷静さを失わせ、さらに場を盛り上げる。それが彼女の性格。
「こうなると、急いだ方がいいかもね。私の予想だけど、怪奇現象はこれから次々と起こる! まだまだこんなの序章に過ぎないっ! あっはっはっはっはっ! 楽しみで仕方がない!!」
「……」
場は一気に鎮まり、主役は加賀。もはや彼女を止めることは誰にもできない。これが本当の頭脳派。いつどこからか、何が計算されたのか。それすらも曖昧にさせるのが彼女。加賀という、魔性の女――
「加賀。悪役ぶってますが、あなたそんな悪いことしてないでしょう。なんならしたかどうかすらもわからないし」
「赤城っ! こういう場では言わない約束でしょ!」
「はあ……」
赤城も呆れていた。またいつもの悪い癖が始まり、場を一気に混乱させようとする。一番近くで見てきた赤城だからこそ、この場を笑わせ、加賀の潔白を証明させようとしていた。
「なあ、江南」
「ん?」
昇龍は美沙に声をかける。可憐は天空城に捕まり、加賀は赤城と漫才じみたことをやり出した。
そうなると、今頼りになるのは美沙しかいない。
「シャルロット遅くねえか? この部屋を出てから随分経つよな」
「あ、確かにっ!」
シャルロットが部屋を出てから、かれこれ四十分が経つ。隆たちの部屋に行くとはいえ、いくらなんでも遅すぎる。
「ちょっと様子を……いや、この場にあの三人を連れてきてくれねえか? 怪奇現象も起きてるとなりゃ、尚更だ。ここにはあーしが残ってここの四人に説明しとくからよお」
怪奇現象は解決しなければいけない。
そうなれば、隆たちとの情報共有も必要。もしかすれば、隆たちもすでに怪奇現象に遭っている可能性だってある。
「そうだね、わかった」
美沙は提案に乗ることにして頷いた。そしてこの部屋は昇龍に任せ、一目散に隆たちのいる部屋に向かっていった。




