時系列の確認なんだが?
「こういう時はまず、時系列順に何があったか、そして全員の行動を追うことが大事よ」
可憐は顎に手を当て、真剣に考える。可憐自身、記憶力が優れており、頭の回転も速い。今この場をまとめる人物として最も適任なのは彼女だろう。
「そうねえ……天空城さん、今から私が言うことを時系列順にまとめてメモしてもらってもいいかしら?」
「わかりました」
可憐は天空城を補佐に指名した。天空城は知っての通り、風紀委員。かなりのしっかり者のため、補佐として任せるには適任の人物。
天空城は自分の鞄から普段から持参しているメモ帳とポールペンを取り出し、可憐の話を聞く準備をする。
「まず、十七時半ごろに私たちはこの部屋に来た。その間、シャルロット、江南、加賀はテレビを。可憐、天空城が話を。昇龍、赤城が話をしていた」
この頃、この部屋でのグループは大きく分けて三つ。
第一にシャルロット、美沙、加賀。この時点で三人はテレビを見ていた。その間は特に変わったことは起きていない。
第二に可憐、天空城。二人で仲を深めて話していた。この二人は近いような信念を持っており、話も合う。
第三に昇龍、赤城。彼女らに関して言えば、サブカル系が好きという、ズッ友の関係である。その他には言うことはないだろう。
これがこの部屋にいた七人の行動。特に怪しい行動をしている人物はおらず、全員どこかのグループに入り、楽しんでいた。
「その後、五時五十五分ごろ、この部屋を七人は出て、土間に移動。その際、私がこの部屋の鍵を施錠した」
鍵は普通の鉄製でできたキー。それは可憐が管理しており、この部屋を出る際、施錠した。そして七人は固まって土間に移動。
「江南さん、あと加賀。確認よ。本当にテレビは消したのよね?」
「消したね」
「だから電気代もったいないから消したって!」
「なんであなたは電気代という言葉を今日よく使うんですか」
テレビを見ていたシャルロット、美沙、加賀。シャルロットは現在隆たちの部屋にいるため確認はできないが、美沙と加賀は消したと宣言している。
「そして十八時ごろ、土間にて話し合いが始まる。そこに集まったのは私たち七人を含め、東條隆、上条。それと、女将さんと新月さん。この旅館に現在いる十一名が全員その場で揃った」
「え!?、 この旅館って今、十一人しかいねえのか!? 他の客は!? スタッフは!?」
「今日は他のお客さんはいないみたいよ。スタッフも女将さんと新月さんだけと女将さんからは聞いたわ」
「すげえな。二人でよく旅館回せるんだな」
女将曰く、この旅館には現在、十一人いるとのこと。そのうち、スタッフは女将と新月。
そうなると昇龍の言う通り、この二人で旅館を回していることになる。
なお、この話はビーチに行く前、可憐が女将と手続きをしていた際に聞いていた話とのこと。
「その後、十八時半ごろにその場を全員が出て、七人は部屋に戻る。鍵はちゃんと施錠したままで、私がその鍵を使って扉を開ける」
「そしてその頃にはすでにテレビはついていたっと」
「そういうことよ」
扉の施錠の状態は部屋を出る際と変わらず、施錠されたまま。そして、扉を開けた頃には消したはずのテレビはついていた。
「この間に何かが起きていることは確実。でも一様その後の確認よ。十八時半には天空城が部屋を出て旅館内を見て回り、十八時五十五分ごろには天空城は戻ってきている」
「一様言っておくが、私はただ回っていただけだからな」
少し不安そうな天空城。
「大丈夫よ、誰もあなたを疑ってないから。そして十九時には料理が到着」
「ちなみにこの間に、私が新月さんに料理の説明を申したんだよね!?」
「はいはい、そうね」
適当に受け流す可憐。一つ一つの行動を追うと言っても、ここまでは流石にいいだろうと思ったのだろう。
「新月さん、この料理の説明をお願いします! 雰囲気を味わいたいんです! お願いします! お願いします!」
「ちょっと、新月さんも忙しいんだから――」
「料理の説明ですね。いいですよ」
「おっしゃあっ!!」
この間、加賀は新月に料理の説明をするようお願いしていた。
「その二十分後に食べ終わったけど、その後シャルロットが隆たちの部屋に移動。そしてその数分後、テレビがついていたことに加賀が気づく。こんなところかしら?」
「全て合っています。よくこんな鮮明に覚えていますね」
可憐が喋り終えてしばらくすると、天空城の手も止まり、メモが完了した。
可憐は大体の時間、何が合ったかを大体は覚えていた。
「まあ、職業柄ね」
「そういえば、食器はいつ運んでくれるんだろう?」
「そのうち運びにきてくれるんじゃね」
食べ終えた食器は部屋の隅に置いてあり、片付けがまだ来ていない。旅館などでは大体がスタッフが運びに来てくれることになっているが、まだ来ていない。
そのことに小さくも疑問を抱く加賀。
「ある程度見直した気がするんだけど、何か大事なことを見落としている気もするのよね。うーん」
「あっ!!」
可憐の言葉の直後に、何かを思い出したかのように大きい声を上げたのは美沙。
「どうした?」
「七人で部屋を出て、土間に行った。けど、その間に部屋に戻った人が一人だけいた。すっかり忘れてた」
「何!?」
「そうなのか!?」
ここにきてまさかの新情報。その間に部屋に戻った人が一人でもいた場合、その人物が一番怪しい。
そしてそれは、この中の六人の中にいる。
「誰なんだ、そいつは……! 絶対そいつが犯人だよ! ここまでみんなを弄ぶなんて、なんてやつだ!」
加賀が拳を震わせながら感情的になる。それもそうだ。その人物は部屋に戻ったことを、今の今まで知っていたのにも関わらず隠しており、ここまで全員を誘導させて見せた。
その人物の正体は一体誰――
「って、加賀ちゃんでしょ」
「……」
「……」
沈黙が続き、全員の視線が加賀に集まる。そんな中、一人だけ燃えるような怒りを感じている人物もいた。
「……てへっ!」
頭に軽く拳を当て、ウインクしながら舌を出した。
「人の胸を散々触っておいて、あんたが一番怪しいんじゃないのよおおおおおおおっ!!」
「痛い痛い痛いっ!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!」
十字固めで加賀を締め上げる可憐。それもそのはず、先程加賀は可憐の胸の谷間を見ると同時に、どさくさに紛れて思いっきり胸を揉みまくっていた。あの三人の中で一番。
「そうよ、思い出したわ! あの時確かに七人で部屋を出た! けどその間、あんた何か忘れ物したって言って一人部屋に戻ってたじゃないの!」
――六人が部屋から出た、18時55分ごろ――
「美沙さん、どうしたの?」
美沙が扉の前で部屋の中を軽く覗きながら見ている。
この時部屋の外からはテレビは見えず、死角になっている。さらに、防音などではないものの、その先には襖が一つあり、テレビなどの音は聞き取りづらい。
「まだ中に加賀ちゃんがいるみたいで……鍵を掛けるのはもう少し待っててほしい」
「ったく、何してるのよあの子」
「なんか、忘れ物したとかなんとか……」
「忘れ物? すぐ帰ってくるっていうのに」
「どうしましたー?」
すでに先を歩いていたシャルロットが可憐たちに少し大きな声で声をかける。その先には残りの女性陣たち。距離は数メートルは空いている。
「すぐ行くから先行ってていいわ」
可憐の言葉のすぐ後、加賀が二人の目の前に姿を表す。
「いやあ、おまたせ! よし、行こうか!」
その後、部屋の扉を可憐は施錠し、三人はすぐに他の四人と合流。土間へと向かっていった。




