もういっちょ伏線回収なんだが?
これではっきりした。なぜ天空城の傷が完治していたか。しかし、その答えとともに新たな疑問が浮かぶ。
「でも、なんで軌賀はそんなことをしたんだ?」
「そんなもの、罪滅ぼしか何かだとでも思ってるんだろう。もしくはあいつのことだ。ただの気まぐれでって可能性もある」
天空城に直接手を下したのは鉦蓄。同じ投資業界トップとしての尻拭いをしたという可能性。そして、彼の性格は天真爛漫で気まぐれ。時には狂気なる一面も見せる時もある。いわゆる、何を考えているか分からないタイプ。だからこそ、ただの気分、もしくはなんらかの理由があるのではないかとも捉えられる。
「僕自身、あいつのことはよく知らない。でも、僕にとっては天空城を助けてくれたと思えてしまう」
「それでいいと思うよ。それはあくまで君の主観だからね。ただ、僕からしてみればあいつら六人は全員敵だ」
上条のことをあの六人は狙っている。だからいくら僕が軌賀のことを命の恩人だと思ったとしても、上条からすれば敵。
こればかりは仕方のないことか。
「あれ?」
ずっと渋い顔で考えていたもどきが声を上げた。
「どうした?」
「いえ、上条さんってあの時、一千万が入っていること知ってたんじゃないんですか?」
確かにそうだ。修学旅行の帰り、上条はトランクケースを見てこう言った。
「あ、もしかして一千万円入ってるでしょ!」
「……なっ!? おま! どうしてそれを!?」
こいつには言ってないし、中身を見られた覚えもない。
「え? ただの勘だけど? もしかしてあたった?」
あの時の発言。
上条はトランクケースの中身を一千万だと言っていた。だが、さっきこいつは本気で驚いたかに見えた。
矛盾している。
「えっと、すごく言いづらいんだけどさ……」
「「……」」
上条は人差し指で頬をかく。
僕ともどきは沈黙。その先の言葉を待つ。
「あれ、本当に勘なんだけど〜」
ただの勘だった。僕ともどきは呆れて言葉が出ない。
ほんと、なんだこいつ。
そして話はその数日後の、蘭壽の一件に変わった。
「そのあとの蘭壽の一件は前に隆が言った内容で全て合ってるよ。君たちを守りたくて、ああいう手段をとった。それは本当だよ。でも怖い思いをさせてしまったのもまた事実。だから、ごめん、シャルロットちゃん!! 隆も!!」
上条は両手を前に突き、地につけるくらい頭を下げた。
全く、こいつは。
「上条さん! 頭を上げてください! 私は全く気にしていませんし、むしろ私たちのためを思ってくれてすごく嬉しかったんですよ!」
「そうだぞ、上条。お前、今日謝りすぎだ。僕はお前には何一つ怒ってないし、感謝することしかない。これからは正式な仲間だろ」
「隆……シャルロットちゃん……」
なぜか潤んだ瞳で顔を上げ、僕ともどきを交互に見つめる。こいつはそれでいいんだよ。硬っ苦しい顔より、普段からおちゃらけたような顔の方がこいつにはお似合いだ。
だからこそ、これからは共に困難に立ち向かわなくてはいけない。
こいつを含めた、みんなの笑顔を守るために。
「そういえばお前には言っていなかったが、あの後蘭壽を僕の家の地下室で監禁したんだ」
「蘭壽を!? そうか、あの縄で……」
インベスト製の縄。上条が倒れる前に蘭壽の体に巻きつけたもの。外部内部共に、能力を無効化させ、蘭壽のような怪力でも千切れないようになっている。だから数日間は隆の地下室で監禁することができていた。
「だが、その数日後に見たらいなくなっていた。本当なら意識が戻った後に、お前に渡すつもりだったんだがな」
「ああ、だから監禁を。手間をかけてしまったね。でも、どうやってやつは……」
顎に手を当て考える上条。
なぜ蘭壽は姿を消すことができたのか。そう、あの時室内は完全な密室。地下室を開けた形跡すらない状態だった。
「それが、僕にもわからないんだ。外部から逃げた様子もないし」
「考えられることとすれば、投資業界の誰かの能力。だが現状、能力が判明しているのは三人しかいない。極兒、龕您、そして、篆。この三人の中の誰かがなんらかの能力を使って蘭壽を奪還したか」
能力が判明しているのは三人。鉦蓄は炎を操る能力。軌賀は手品師のような能力。蘭壽は相手の嘘がわかる能力。
蘭壽自身は縛られているため、能力が使えない。そもそも、彼の能力は嘘がわかるかどうか。
「軌賀さんとかではないんですか? そういうのも得意そうですし」
「軌賀の能力なら十分にあり得るだろう。でもそのできごとって、蘭壽との戦闘から数日でしょ。なら多分、あいつは僕との戦闘で体が動かないはずなんだ」
蘭壽との戦闘前。上条は軌賀と死闘を繰り広げていた。軌賀はその最中、レーザーで全身を貫かれ、戦闘不能となった。その間、いくら軌賀のような能力者とはいえ、早い回復は困難なはず。
だから軌賀もありえない。
そして鉦蓄も同様に、あの縄に干渉できるような能力ではない。それどころか、彼はずっと牢獄にいる。彼もまた、不可能なのだ。
「ちょっと待て。能力っていっても、あの縄は能力自体を無効化するんだろ?」
「そうだね。でもそれは、あの縄で縛られているものと、縄自体ということに限られる。ようは、縄に触れなければいいわけさ」
つまり、能力を使った縄への直接的なダメージや、それを縛る対象物には能力は効かない。
ただひたすら謎が深まるばかり。
「……それに、極兒の能力ってすでに判明しているんじゃないのか?」
極兒の能力。
七不思議怪異の時に現れ、その場の全員を大穴に落とし、現世に戻させた。それだけではない。上条や隆の傷ついた体すらも治した。
隆はてっきり、これが極兒の能力なのではないかと思っていた。
「僕も最初そう思ったよ。でも、何か引っかかるんだ。極兒自身、投資業界トップの中では一番下の存在。そんなやつがあんな強力な能力が使えるとは思えない。なんなんだ、この感覚は……」
投資業界トップの能力は、上にいけばいくほど強力な能力を持っていることが多い。それなのに極兒があんな能力を使えたこと自体がおかしい。
そもそもの話、あそこに九人招いたり、七不思議怪異を召喚したり、現世から切り離したり、あの場ではおかしなことがありすぎた。
これら全てが誰かの力によるものだとしても、それら全ては果たして極兒なのだろうか。
「でも極兒さんってそういうそぶり見せていましたよね。はああああっ!!みたいなー」
「なんか、わからないことだらけだな」
頭を抱える三人。これ以上考えてても仕方ないと思い、次の話題へと進むことにした。




