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伏線回収なんだが?

「ご、ごほんっ……」


 隆は大きく咳払いをし、開いていた股を閉じ、一瞬目を(つむ)って上条を見る。


「悪い、少し取り乱したな」


 上条は目を丸くしたまま、固まっていた。まだ驚きが隠せていないようだ。


「でもな、僕にとってもどきも大切な存在だと思っている。あいつがどんな存在だとしても、僕の妹だ。そして、僕の大切な友達だ。それは絶対に変わらないさ」


 そんなことを口にしながら少し微笑む。それを見て上条も目を瞑り、口角を上げた。


「ふっ……そうかい。でも隆はやっぱり、そのままの方が隆らしいよ」


 上条はシャルロットについて教えられることは全て教えた。隆はそれを聞き、どんな形であれ受け入れられる部分は全て受け入れた。その判断を隆自身がしたのなら文句はなかった。


 ――その時だった。


 コンコンッ


 部屋の扉のノックが鳴る。


「ん? 誰だ?」


「また新月さんかな?」


 新月は、先程料理を運んだ後は一度も姿を表していない。隆たちが食べ終えた料理の食器は二つともまだこの部屋にある。だから取りに来たと二人は考えていた。


「私です、シャルロットです」


 しかし、扉の先にいたのはシャルロットだった。なぜここに来たのかはわからないが、何かの用事なのだろうか。


「噂をすればなんとやらってやつだね。どうぞー」


 上条の言葉に扉を開け、室内にシャルロットが入ってくる。

 そしてシャルロットも座り、三人で囲うように円を使った。


「何かあったのか?」


「いえ、用という用ではないのですが、隆さんと上条さんはこれまでのことについて話し合うんですよね?」


「まあね」


「それ、私も参加してもいいですか?」


 隆と上条は目を合わせる。


「どうする、隆。僕は構わないよ。なんなら僕も聞きたいことがいくつかあるわけだし」


「僕も問題ない。もどきは上条同様、この腕輪のことについても話していいことになっているし」


 そう二人が言うと、シャルロットは目を輝かせた。


「ありがとうございます!」


 こうして、三人による話し合いが始まるのであった。


「じゃあまずは時系列順に話していくよ。そうだね、僕が転校してきた四月の話からか」


 上条と隆の出会いは四月の終わり頃。その時から隆は上条に少し違和感を覚えていた。やたらと自分に詳しかったり、副業に協力的だったり。でも今となってはそれも納得ができることがほとんど。


「あの投資業界トップどもが隆に副業を与えていると知った僕は、インベストからこっちの世界に移り、隆たちの学校に潜入した。すぐ近くで隆を助けられるようにね」


「投資業界トップたちはなんで僕にそんなことを?」


「それは僕にはわからない。でもどういうわけか、副業の確認や副業を出すことはできる。それを見ながら僕は行動を重ねた。と言っても、天空城さんの件の時に高熱が出たのは予想外だったけどね」


 天空城の件というのは、隆が天空城の下着の匂いを嗅ぎにいくために保健室に行った時のこと。本来であれば最初から隆をサポートしたいところだったが、高熱が出てフラフラな状態となってしまった。

 それでも隆を助けるべく、自分の体に(むち)を打ち、意地で昇龍を抑え込んでいたのだ。


「そして投資業界トップ5の鉦蓄が起こした芳月学園火災事件」


「あっ……」


「ぐっ……!」


 シャルロットは少し思い出したのか、微かに声を上げ、隆は腹部を押さえた。


 芳月学園火災事件。投資業界トップ5の鉦蓄が起こした事件で、芳月学園の南館を一人で全焼させた。この事件で隆は一度腹部を焼かれ、シャルロットも軽傷を負う。しかし、一番酷かったのは天空城だった。

 隆を守り、天空城は鉦蓄と戦闘。鉦蓄は能力者でありながら天空城の合気道により、かなり押されていた。しかし、鉦蓄は砕かれた骨を炎で補い、一時的に再生させた。

 そして蓄えた炎をさらなる力に変え、天空城を炎で包み、天空城の体を全焼させた。その後も彼女は、数ヶ月間も目を覚さなかった。


「鉦蓄……あいつは狂ってる……! 僕を狙うならまだしも、君たち三人を……!」


 上条は歯を食いしばり、床を睨みつけていた。


「上条……」


 そんな時、シャルロットが思い出したかのように言った。


「そういえば、あの時鉦蓄さんの腹部を打ちついた青色の光って……」


「ああ、僕だよ」


「あれお前だったのか!?」


 気の狂った鉦蓄の腹部にはその後、一筋の青色の矢のようなものが貫通されていた。その攻撃により、鉦蓄は瀕死になり、攻撃が収まったのだ。


「遠距離で打ち抜いたんだ。あの時はまだ、隆たちの前に姿を表すわけにはいかなかったからああするしかなかった。僕がもう少し早くあいつを仕留めていれば……!」


 上条はさらに拳を固め、歯を食いしばる。


「お前は最善を尽くして僕達を助けてくれたんだろ。ありがとな」


「隆……」


 その言葉を聞き、上条自身も少し安堵(あんど)し、小さく息を吐いた。


「あれ? じゃあ、どうして天空城は無事なんだ?」


 天空城の傷はかなり深いもの。一生残り続けてもおかしくないような。でも何故か傷ひとつなく、姿を表した。あれは確か、七不思議怪異の時。そして今は何不自由なく、僕らと一緒に旅行に来ている。


「それは僕にも分からない。でも、可能性があるとすれば――」


 そして上条はその言葉を放った。


「副業の報酬。副業の報酬は死者を蘇らすことや死が近い病気など以外、欲しいものは全て与えられることができる。物やお金はもちろんのこと、その中には一生残るような傷を完治することだって」


「そういうことか……」


 隆はようやく、あの人物の言っている意味がわかった。投資業界トップ2、龕您。鉦蓄が倒れた後に現れた彼は、隆に投資をするように言った。

 あの時は半信半疑だったが、これで確信を得ることができた。


「その対象が大きければ大きいほど、投資に使うお金は莫大になる」


「莫大…………っ!? ま、まさか……!」


 確かにあの時、莫大な金額が隆の近くにあった。いや、厳密には手に入れたのだ。彼によって。


「どうしたの?」


「僕はあの修学旅行の時、一千万を手にしていた。副業によって」


「一千万!? どうして、そんな金額を……」


「投資業界トップ4、軌賀。僕はあいつのよくわからないゲームに巻き込まれた。もちろん最初は断った。だが、拒否権はないって」


「汚い野郎だ」


 上条は歯を食いしばり、鋭い目つきで床を睨む。

 投資業界トップ4、軌賀。戦闘力も高く、頭の回転の回る男。だからおおよその予想はついていた。きっと隆はその時、銃か何かで脅され、そしてやつが巻き込むゲームに勝算なんて与えさせない。

 隆な口から言わずとも、その先の結果は見えていた。


「結果として僕は奴に負けた。だが、それでニ千万が手に入った。そういうふうに最初から仕組まれていたのはわかるが、おかしいと思わないか?」


「隆の言いたいことはわかるよ。なぜその二千万を隆に渡すようにしたのかっていうことでしょ。それが詰まるところ、天空城ちゃんの完治ってことなんじゃない?」


「っ……!! そうか!!」


 投資をした場合、毎回金額に応じた利益、つまり、リターンが返ってくる。そして今回の場合、一千万。そのリターンとなったものが、天空城の完治だった。

 隆はそのリターンがないものだとばかり思っていたが、やはりあった。そしてそれは、かつて隆が望んだものだった。

 自分を救ってくれた恩人を何としても助けたい。その願いがこうして叶えられたと知った瞬間であった。

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