勝利よりも大切なものなんだが?
サーブの構えを取るダークネス隆。
「いくぜえ……!」
三人は再び立ち上がり、警戒する。現状この九人の中で一番やばいのは明らかに彼。
圧倒的な力と異能力でこの場を制している。
何とかしなければいけない……!
それは彼のチームにいるシャルロットも似たような思いだった。このままいけばもしかすれば勝つことができて副業は達成される。
でも隆さんは?
隆さんはこのままずっとあのような状態なのか?
副業達成よりもそっちの方がとにかく心配だった。
「シャドウ、ゼル、ショットッ!!」
左目を隠し、右手でボールを上にあげる。不気味に浮かべたその笑顔からは闇を感じられる。
次の瞬間、彼は大きく歯を見せた。
そして、降ってくるボールに向かって勢いよく右手をぶつけ、サーブを決める。
ボールは闇を纏い、チーム管理局のコートへ。
ボールの速度はその割には少し遅かった。しかし、ボールはコートの上にとどまり続ける。
三人は上を見上げる。
降ってくる様子はない。打ち返すか?
「なに、あれっ……!?」
そう思った瞬間、ボールは増殖し始め、一つ二つと同じようにあたりにとどまり続ける。
ボールを増やすのは明らかにおかしい。あの一瞬でどうやってボールを増やすことができたのか。
何かの手品? それは、増やした彼にしかわからない。
わずか数秒で地面が黒の影で埋め尽くされる。ボールの数は百個以上に増えていた。
「打ち上げろっ……!!」
「防ぐわよっ……!!」
「「了解っ!!」」
彼の合図でボールがものすごい速度で直進。
元のボールがどれかもわからない。
可憐たちも負けじと全てのボールを跳ね返す。
ボールは一度触れれば幻影のように淡い闇を煙に消えていく。
可憐は無数に繰り出される回し蹴りで上空にボールを吹き飛ばす。
加賀は一つ一つのボールを高速で攻撃し、ボールを消していく。ボールを空中で踏み、飛びながら。
赤城は二人が取りこぼしたボールを加速し、体当たりで上空に吹き飛ばし、一つ一つ消していった。
ダークネス隆も苦い顔をしている。彼も三人の実力は知っているが、ここまでとは思わなかった。
残りの全員は驚愕していた。
彼が放つ無数のボール、管理局のコンビネーション、そしてこの白熱の戦いに。
ボールの数は残り十個ほど。
その十個は誰も落ちてこない。加賀は踏み台にしていたボール達により、かなり上空まで飛び立っていた。
彼女は一人で残り十個の浮遊しているところまで辿り着こうとしていた。
――その時。
「なっ……!?」
ボールは突然動きを変えた。
先程まで加賀の方に飛んでいたボールは、直進距離で足場の地面を狙いつつ、加賀の足めがけて攻撃をしていたが、方向を変え、加賀の腹部に飛ばす。
「うらあっ……!!」
三つのボールが次々と加賀の腹部に襲いかかるが、インファイトで全て吹き飛ばす。このくらい加賀に取っては大したことではないが……
「う、うわあっ……!!」
その瞬間、加賀は勢いよく地面に落ちる。
「加賀っ……!!」
赤城は加速し、加賀を受け止めようとする。が、その瞬間、残りの七つのボールが七方向に向かって直進を始める。
方向は全てコートの隅。
「ふっ……!!」
可憐は勢いよく走り出し、コートを半周しながら落下と同時にそのうちの五つを蹴り飛ばした。
しかし、残り二つが間に合わない。
今加賀を守るのをやめ、打ち返せばコートを完全に塞いだことになる。
加賀を見捨てるか、勝利への襷を自ら千切るか。
そんなの、決まっている。
ガバッ……!!
赤城の手に触れたもの、それは加賀だった。
「あ、ありがとう、赤城……」
「バディですから」
顔を赤らめる加賀。小さく微笑む赤城。彼女は迷いは一切なく、加賀を助けた。
ドーーーンッ……!!
残りの二つも落下し、そのうちの片方は淡い闇と共に消えていく。残った一つは地面に。
「チェックメイト。我の勝ちだ……!!」
またしてもチーム隆が一点入る。これでチーム隆は二点、チーム管理局は五点となった。
「赤城、加賀、大丈夫っ!?」
走って可憐が二人の元へ駆け付ける。
「ええ……なんとか」
「ごめん、私のせいで」
「いいのよ、そんなこと! 私はあなた達が無事でいてくれるだけでそれでいいんだから」
可憐は二人を抱き寄せた。
可憐にとって二人は大切な可愛い部下であり、仲間。勝利よりも彼女達二人が無事であれば何よりだった。
可憐は立ち上がり、ダークネス隆を睨みつける。
「あなた、東條隆じゃないわね。東條隆にして東條隆にあらず。よくも私の可愛い部下を痛めつけてくれたわね……!」
「そうだ、我はダークネス隆。古に封印されし漆黒の力も戻り、こうして我は蘇った……! どこの誰だかわからぬが、我を蘇らせれくれて心より感謝の言葉を送ろうぞ……!!」
「また訳の分からないことを……!!」
ダークネス隆は上空に両手を挙げ、瞬き一つせず、曇る空を見上げる。その瞬間、偶然か必然か。
大きな雷鳴が鳴り響く。
「あなたたち、まだやれる?」
「もちろんです」
「当たり前……! あの厨二病オタク引きこもりを叩き潰すまでは倒れない……!」
「その息よ。きなさいダークネスなんとかさんっ……!!」
残りわずかだというのにその後もさらなる白熱の戦いが続いた。ダークネス隆はボールをまた増やしたり、莫大な闇を纏わせて攻撃をする。
対するチーム管理局も防ごうととにかく必死に戦った。
シャルロットはただ見守ることしかできない。
だからこそ、一人ただ、祈り続けていた。隆が戻ってくることを。
外野の四人も見守りつづける。
この場にいるほとんどは隆がふざけているだけと思っていた。ボールが闇を纏ったのも、増えたのも、実は何かしらの種がある手品のような類なのかと思っていた。
しかし、シャルロットや可憐、上条は違った。あれは明らかに隆ではない。体を乗っ取られているか、多重人格か。そのように見えた。
そうして試合は続いた。
その結果、まさかの得点となる。
チーム隆、五点。
チーム管理局、五点。
これが管理局の三人でなければ、この三倍の点数はいっていた。だがやはり、闇を纏った彼には敵わなかった。
残り時間もあとわずか。この戦いに隆が勝てば副業は達成される。しかし、チーム管理局の三人にもプライドがある。だから、どちらも引くとなんてできなかった。




