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ダークネス隆なんだが?

 彼の名はダークネス隆。

 遥か数千年前、右腕に封印されし竜、ガウェインを宿し、その力で世界を闇に閉ざした張本人。もともと彼は勇者として世界を守っていたが、あることをきっかけに闇落ちし、それからは世界を混沌に包むために歩き出した。

 そして彼は魔王となり、あるものとの戦いの末、数千年もの眠りにつくことになる。


 その正体は、隆が中学二年生の時に封印した黒歴史そのもの。

 その彼が再び現世に舞い降りたのだ……!


「ダークネス隆っ……!」


「いや、ネーミングセンスよ。ダークネスはいいとして、なんで自分の名前とくっつけたかねえ、この人は」


 相変わらず目を輝かせている赤城とそれを痛々しいと見続ける加賀。


「おや、初めて見る顔もいるな。小娘が三人。な、貴様ら、相当な力を宿しているなっ……! この我に勝てるかと問うならば、それはまた別の話になってくるが」


 目の前にいるチーム管理局の方向を向いて言うダークネス隆。

 可憐と加賀の目はやばいを通り越して呆れそのもの。

 こんな状況でも一人だけ目を輝かせている赤城が不思議で仕方がない。

 さらにダークネス隆はあることに気がつく。


「――ああ、貴様! あの時はよくも……! というか、お前も! お前も! 極め付けはこの我を再び封印したやつまで……!」


 美沙、シャルロット、天空城、最後に上条の順番で体だけを沿り、顔を一人一人見て言った。

 彼女たち四人とは面識があるダークネス隆。ダークネス隆にとって、シャルロットは世話係のようなもの。美沙と天空城は封印しようとしてきたもの。そして上条は自らを封印してきたものとして認識している。


「数百年越しの目覚めだ……! 貴様らこの現世ともども、焼き払ってくれ――」


「隆さん! そんなことよりもう制限時間が三分を切ってます! 早くなんとかしないと――」


 シャルロットが彼にズカズカと近づき、声をかける。

 意外にも彼は簡単に納得した。


「ああ、そうだったな。安心しろ。そのことは忘れてはいない。――ゆくぞっ……!!」


 手を出した右手から闇を放出し、ボールを包み込む。ボールの大きさは先ほどの三倍に膨れ上がり、莫大な力を宿し始める。


「何あいつ……!? ただの厨二病じゃないのっ……!?」


「東條隆、あなたはまだ何か力を隠しているのっ……!?」


「うわあ〜、か、カッコいいっ……!!」


 流石にこれをただの厨二病で片付けるのには無理があった。ボールを浮かせるなら加賀もやっていた。

 それならまだしも、彼は自らの右腕から闇を放出し始めた。それは目に見えるものとなり、紫色の炎のようななんともおぞましい見た目でボールをどんどん侵食させていく。

 目の前で見ているチーム管理局も赤城を除けば二人とも驚愕するばかり。


「ダークネスプロミネンス、ディ、インフェルノッ……!!」


 キュイイイインッ……!!


 謎の音を放ち、ボールを浮かせながら彼女たちにぶつけた。速度は普通の投げる速度くらいで打ちにくいわけではないが、浮いているため、不気味そのもの。

 紫色の線を描きながらボールはチーム管理局のコートへと進んでいった。


「あなたたちはさがってなさい。いくわよ……!!」


 ニヤリと笑い、可憐は助走をつけて走りながら飛ぶ。左手で拳を作り、ボールに突き出す。


 ゴゴゴゴゴッ……!!


 眩い闇の光がボールから放出され、直線距離にあちこち飛んでゆく。

 ダークネス隆もそうだが、可憐は人類最強の称号を持っている。人類最強とは、その名の通り、人類で一番強い生物のことを表している。

 それこそが可憐。十九歳ながら、日々の訓練により、武術はもちろん、この世の全ての武器を扱える。

 まさしく人類最強!


 人類最強の少女の拳VS自称魔王の力


 その結果は……!!



 バンッ……!!


 ボールが落ちた。そして、あの可憐も小さく飛ばされ、倒される。

 可憐は自らの拳一つで彼の強大な魔力を全て無効化し、闇を剥がした。


「可憐が……」


「ほおう、この我の魔力を無効化するとは……! 人間ながらよくぞ我の力を破ったっ……! 気に入ったぞ、人間っ……!!」


「え? ほん……と……?」


 可憐は尻餅をつきながら口に手を当てて、頬を染めながら目を()らす。


「照れんな、可憐! あいつの言ってるのはそういう意味じゃないからねっ!」


 ダークネス隆は可憐を褒め称えていた。あそこまで強力な人間には出会ったことがない。

 だからこそ、戦いがいのある人間だと見込んだ。

 でも可憐はどうやら別のことだと勘違いして勝手に照れている。加賀はツッコミを入れるが、全く耳に入っていない。


「可憐っ……! パスですっ……!!」


 いつのまにか赤城がボールを蹴り、近くにいた可憐にパスをする。可憐はその一瞬で顔つきを変え、地面を勢いよく蹴り、空へ飛び立つ。

 赤城が飛ばしたボールの高さは四メートル先。そこまでしっかりと飛び、左手の拳をボールに突き出す。


「くらいなさいっ……!!」


 拳がボールに当たり、ものすごい速度でチーム隆のコートに進む。


「くっくっくっ……! 我も少し本気を出すとしようか……!! ダークネス、ジ、ソリュートッ……!!」


 右手を出し、左手で目を隠す。右手の前には闇の淡い炎が丸を描き、現れる。

 その炎にボールが当たり、ボールはみるみるうちに速度を落としていく。


「さっきからなんなんだ、あれは……!! まさか、投資業界の誰かが隆に力を……!? いや、そんなことってあるのか……?」


 上条が一番困惑していた。隆が能力者ではないことは彼が一番よくわかってはいる。能力者は本来、インベストの人間しかなり得ないことだから。

 なのに隆がその能力を当たり前のように使っている。

 今まで隆が能力者であるなんて情報はどこにもなかった上、隆自身もそんなことは言っていなかった。


 仮にもしあれが本当に何かしらの能力だとすれば考えられるのは二つ。

 一つは隆が本当に能力者であるということ。そしてもう一つは、投資業界の誰かが彼に力を貸していること。

 じゃあなぜその人物は隆に力を貸したんだ……?


 何より、本人はダークネス隆と自称しているが、本当に隆ではないのか? 隆とは別人格なのか? 隆自身がああやって演技をしている可能性は?


(一体、君は何者なんだ……!)


 ボールはついに停止する。人類最強の飛ばすボールを片手で、しかも触れずに止める。

 彼はバレーを掴んだら負けということも知っている。


 ならば、触れずに止めるだけだ……!!


「バーストッ……!!」


 ボールは人が投げたかのように、「く」の字にコートを飛び越え、相手コートのところへ。

 あまりの速さに可憐は追いつけなかった。しかし、まだ赤城がいる。


「んあっ……!!」


 素早く加速し、ボールと地面の間に足を入れる。だが魔王の放つボールは速度だけではない。強力な力も宿しているため、赤城はその数秒後に吹き飛ばされることとなる。


「ああっ……!!」


 ボールは地面に転がり、ダークネス隆以外のその場の全員が動かなかった。


「くっくっくっくっくっ……!! くっははははははっ……!!」


 彼は両手を上げ、高々と笑いあげる。

 誰も彼を止めらことはできない。

 彼は隆であって、隆ではない。黒歴史によって生まれた存在。そんな彼が千年の時を経て復活し、力を宿し、絶望的な結果を黒く塗りつぶし、塗り替える。

 それが、ダークネス隆。


 ――しかし、この力にはある大きな代償があった……


 チーム隆、一点。

 チーム管理局、五点。

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