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闇が全てを覆うんだが?

 圧倒的すぎるほどに悪い状況。

 上条も嫌な予感はしていた。今からでも上条が入ることは可能だが、この怪我では試合には入れてもあまり役には立たないだろう。

 むしろ、今は僕が休んでいた方が二人にとっては動きやすくなれるはず。


 仮に今上条が入ってもただ邪魔になるだけなことは想定できていた。だから無理に出るより、隆たちを信じて待つ方がよっぽど賢明な判断だ。


 何より、上条にはそれと同じくらい警戒していることがある。


 投資業界トップの襲撃。

 極兒はお盆休みだと言っていたが、あんなもの嘘をつくことができる。それに、極兒以外の他の五人が攻めてきてもおかしくない。

 ここにいる人間全員が強い。しかし、投資業界トップの中にはそれを超える奴がいる可能性がある。

 特に、司令塔であり、投資業界トップ2、龕您。そして投資業界トップ1、篆。この二人がまだ未知数。

 投資業界の数字は上に行けばいくほど、投資家として優れているだけでなく、強力な魔力を宿している。


 そんな奴らに僕が敵うわけもない。もしかすれば、この中の九人全員が束になってもあいつらには勝てない可能性がある……!!


(何より、その時がもしきて、僕が動かないなんてことがあったら……!)


 頭を左手の手のひらで押さえ、苦い顔をする。

 今試合を休んでいるのは最悪、そういった事態に対抗するするためでもあった。



 試合の方は最悪の状況を迎えていた。

 残り制限時間、三分五秒。

 チーム隆、零点。チーム管理局、五点。


 この圧倒的さでなおかつ、相手が彼女たちであれば、勝ち目はほぼゼロに近い。


 シャルロットの足の具合はほとんど回復しているが、隆には前回の試合の疲労感がまだ取れていない。

 しかし、妙に湧き上がる謎の自信に踊らされて完全に回復しないまま、試合を始めた。

 結局、その自信も今となっては何だったのかわからない。むしろ、そんなものデメリットにしかならない。


 可憐がサーブを打つ。

 シャルロットが防ぎ、飛んだボールを隆がシャルロットにパス。そしてスパイクを決める……が、鉄壁の赤城に防がれ、その流れで加賀にボールが回る。


 こんなような流ればかりだ、さっきから……


 もう疲労感で頭もぼーっとしたきた。さっきの勝利は一体、なんだったんだ。全部台無しじゃないか。

 あんなよくわからない衝動に駆られたせいでこんな結果に……


「じゃあ、シュートいっきまーす! トリックショット!!」


 加賀の打つスパイクが空中を浮遊する。もどきはそれを必死で追いかけるが、もう止められないことは目に見えていた。

 落下地点がどこだろうが、あれは誰にも止められない。


 僕の足は疲労と現場の絶望的状況のせいで動かなくなっていた。


 さっきまで動いたいたが、この瞬間もうわかった。

 僕には無理だと。

 だって、残り三分で命が尽きるんだぞ……!

 それでどうやったらこんな状況を打破して動き出そうなんて考えに至れるんだ……!

 僕が動いたところで余計に事態は悪化するだけだし、状況は確実に何も変わらない。

 もどきももう頑張ってくれていることはすごい嬉しい。しかし、あのもどきですら加賀からボールを一度も取れたことはない。終わった……


「隆さん! しっかりしてください!」


 隆は(うつろ)の瞳で棒立ちをする。その目には絶望しかなかった。

 シャルロットは走りながらも隆に声をかけていた。


「おやおや、シャルロット。そんな気を抜いてていいのかにえ〜! 今だ、シュートッ!」


「くっ……!!」


 地面に落下するボール。それをシャルロットは必死で止めようとして滑り込みで手を伸ばす。


「と見せかけて、まだシュートはしませ〜ん!」


「きゃあっ……!!」


 地面スレスレでボールを止め、再び一メートルほど浮かせる。

 シャルロットはその弾みで転倒。


 もういいんだ、もどき。


 あんなの、どうやったって勝てるものじゃないんだ。


 投資業界トップの連中を憎む気持ちすら、今の僕にはない。もう疲れた。考えるのも動くのも。


「やりすぎよ、加賀! シュート打つならさっさと打ちなさい!」


「そうですよ」


「いやあ、そんなこと言っても隆があれじゃねえ〜。打つ気もなくすからさ〜。ということで、元気出せよ、東條隆いいいいいいいっ……!!」


 不気味な笑みを浮かべる加賀。人差し指を右側に動かす。その方向には隆が棒立ちで立っている。これから尽きる命に絶望した隆が。


 その時、隆の頭の中に走馬灯が見える。


 映し出されたのは病院。そこに男性と女性が一人の赤子を抱えている。あれは父さんと母さん。ここまで来れたのはこの二人のおかげでもある。だからその恩をいつか返したい。そう思っていた。


 次に映し出されたのは幼稚園。積み木を一人で積み上げている男の子が映し出される。あの時の僕は友達が欲しくていろんな子たちに声をかけてたな。でも結局はみんな、僕よりもクラスの人気者のところに集まった。まあ、当然か。


 そして小学三年生の頃の僕が映し出される。隣にいるのは美沙。この時くらいから美沙と仲良くなり始めたんだっけな。本当に時間かかりすぎなんだよ、お前は。


 そしてその美沙に一番世話になった時期。僕が美沙に救われた時期でもある中学生の頃。

 一人の男と美沙が歩いている。そしてその男。そこに映し出されているのはものすごい激太りし、包帯を右腕に腕に()き、左目に眼帯をした明らかに恥ずかしい――


「う、うをああああああっ……!!」


 隆は一瞬我に帰り、空に向かって叫び始める。

 その瞬間、僕は闇に包まれた。


 ボールが隆の顔に当たる直前、隆は謎のオーラを発した。紫色の闇。闇は隆を全て包み、加賀の投げたボールごと闇に(とら)われていく。


「な、何っ……!?」


「「ううっ……!!」」


 一同は顔を腕で防ぐ。隆を囲う闇は彼女たちを引き寄せていく。足でなんとか止まるのが精一杯。少しでも気を抜けば、あの中に吸い込まれる……!


「隆さん……!? 一体、何が起きて……!」


「なんなんだ、あれは……! 隆は能力者じゃないはず……!! なのに、それと同じ魔力を感じる……!」


 シャルロットにも遠くで見ている上条にもこの状況に頭が追いつかなかった。一体、何が起きているのか。

 隆はどうなってしまったのだろうか。


「闇……!?」


「これは、面白いことになりそうだ」


 ニヤニヤと笑う加賀。その笑みが何を意味しているのかは加賀以外、誰もわからない。

 しかし、明らかにこの状況を楽しんでいた。


 隆を囲う闇。それは過去のトラウマを放出し、それらを全て、力に変えるもの。

 その瞬間、闇の波動がビーチ一面を(おお)い隠す。そして、


 彼は姿を現した。


「くっくっく……! 現世に舞い降りたのもいつぶりだろうか。前回はやられたが、今回はそうはいかんぞ……!!」


 不気味な笑みを浮かべる男。その瞳に宿る赤き瞳。全身からわかる明らかに不気味なオーラ。彼は左手で左目を隠し、右手を前に出し、ボールを紫色の闇で浮遊させていた。


「うわっ……」


「いてえ〜……」


「え、何あれ厨二病?」


 しかし、一斉に冷め始める一同。隆がボールを浮かせているというより、隆がおかしくなってたと思い始めていた。なんのノリかはわからないが、とにかく見ていられない。


「カッコいい……!」


「え!? カッコいい!?」


 なぜかその中で一人だけ目を輝かせていたのは赤城。赤城はサブカル系が好きなため、隆のあの痛々しい姿はとても魅力的に感じとられていた。


「あ……あ……あ……あの姿、前に……!」


「隆さんがまた……」


 上条とシャルロットには見覚えがあった。前回の副業で見せた隆のこの姿。結局その正体はわからず、隆の頭にも記憶は残らなかった。

 それが今、目の前にまた現れた……!


「ん……みんな、おはよう……そういえば、試合はどうなって――げっ!! またお兄ちゃんが中学時代のあの姿に……!!」


 美沙も何事かと思って目を擦りながら目を開けると、そこには中学二年生の頃の隆を彷彿(ほうふつ)とさせるあの隆がいた。

 身体中に虫唾が走り、寒気がする。


「我が名はダークネス隆! 右腕に封印されし竜、ガウェインを宿し、世界を混沌へと導く偉大なるものよっ……!!」

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