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関係はないんだが?

 赤城は巨大な葉っぱで披露した四人、シャルロット、天空城、昇龍、美沙を涼ませていた。

 四人は気持ち良さそうにポカポカした顔で海を見る。赤城は加賀や可憐ほどではないが、管理局内でもそれなりに力がある方。だから大きく葉っぱを仰がせられるそうだ。


「赤城ちゃん、疲れねえ?」


「いえ、全然大丈夫です」


 そう言いながらビュンビュンと大きく葉っぱを鳴らしていく。これはまるで、古代の王を支える隣にいる女性。もしかすると赤城はそれを真似しているのだろうか。

 四人は運動したあとだから身体がだいぶ熱くなっている。運動後のこの風はとても気持ちがいいことだろう。


 美沙の顔は相変わらずの超絶スマイル。あのあともずっとこうで、外野の今いる場所に戻ってもまだこの顔。よほど隆に言われたことが嬉しかったのだろう。


「そういえば加賀さんは?」


「加賀? あれ? 本当です。どこに行ったのでしょう」


「さっきまでいましたよね、そこに」


 シャルロットが横を向く。加賀がいない。加賀はほんの数分前まで、四人に並んでシャルロットの横で赤城の風を受けていた。その加賀がいつの間にか消えていた。

 唐突にいつもいなくなる。それが加賀。


「あの子のことです。どうせすぐに戻ってくるでしょう」


 そう言ってまた仰ぎ始めた。三人も不思議そうにしつつ、「赤城がそう言うなら」と思い、目を瞑って赤城の風を涼しげに浴びることにした。



 その頃、上条は一人で木陰で休んでいた。本当に一人。

 周りを見ると、隆は可憐に世話を焼いてもらい、後の四人は赤城に巨大な葉っぱで仰いでもらっている。


「あの……誰か僕の心配は……」


 ボソッと呟く上条。

 本来なら隆もこっちで休みたがっていたが、あの紫可憐に連れて行かれた。他の五人とは別の場所に連れてってっ!!

 そしたらあっちで二人でイチャイチャイチャイチャ……!!


 ったく、僕の隆だぞ……!!


(まあ、いいんだけどねえ〜)


 そんなことを考えつつ、手で頭を支えて砂の床に寝転がって上を向く。


「ん?」


 すると、見覚えのある顔が上から覗き込む。満タンの海水の入ったペットボトルを持ち、水色の髪色をしたボブの少女。白色のスクール水着を着ている。目を大きく見開き、こちらを覗き込む。


 加賀ちゃん?

 加賀と上条には接点はない。というか、そもそも話したこともないかもしれない。

 そんな子が僕に何のよう――


 バシャバシャバシャバシャッ……!!


「痛い痛い痛い痛いっ……!! 何するんだよっ……!!」


 水を思いっきり逆さに向け、満面の笑顔で上条の顔にかける。上条はあまりの痛さで体を起こして彼女を見る。


「えー? だって可愛い女の子に水かけられて喜ばない男子いないでしょっ!!」


「あー、たしかにっ!!」


 上条は加賀の言葉にボケもせず、目をキラキラさせながら手を叩いて納得する。

 加賀は渋い顔をし、眉を(ひそ)める。


 ここをボケで返すのではなく、納得するとは……こいつ、やりよるっ……!!


「それで、僕に何か用?」


「用はないけどさ、あんた一人だったし、可哀想だから私が看病してあげようと思って。赤城、構ってくんないし」


 むすっとした顔で口を(とが)らせ、誰もいない海の方向を向く。


「とか言っちゃって、もしかして僕に気があったり?」


「……は? ぶち殺すぞ、てめえ……私は百合しか興味ねえんだよ……脳天かち割るぞ……」


 まるで妖怪のようなおぞましい顔をし、目を赤く光らせる。

 加賀は純度千パーセントの百合属性。男性には一切興味がない。これはもはや、加賀の踏み越えてはいけないラインそのもの。


 上条ももちろん本気じゃない。女子と話す時に使う、ジョークのようなもの。まさかこんな殺気まで出されるなんて思わなかった。


「じょ、冗談です、冗談……」


 その言葉を聞くと、三秒後にまた満面の笑みに戻る。


「なーんだ、冗談ね、冗談っ!」


「……」


 今度は上条が眉を(ひそ)める。返す言葉もない。

 上条が病院で入院している間にいつのまにか隆の関わるようになっていた一人が加賀。

 隆、とんでもないやつ友達にしやがったな……


「私、あんたに一度聞いてみたいことがあったんだよね」


「聞いてみたいこと?」


 その瞬間、さっきまでの表情からは考えられないほど鋭い目つきをする加賀。それはまるで、何かに気づいた、あるいは、今からそれを追求しようとする。そんな顔をしていた。


「上条樹。あんた何者なの? 前の七不思議怪異の時、私たちをいち早く守ってくれて敵ではないことはわかる。でも、あの件で何か関係しているのは間違いない。招かなざる客。それはあんたのこと」


「……」


「それにあの時見せた能力みたいなやつ。可憐たちは忘れてるのか目を瞑ってるのか知らないけど、あれは何? さっきのビーチバレーだって、いくら試合とはいえ、あなたは何かを背負って戦っているように見えた。そう、例えば……」


 そう言って加賀は目だけを動かす。体や顔に一切のブレはない。その目の矛先、そこにいたのは、隆だった。


「……っ!?」


 ゾッとした。たしかに今まで他の人たちに言われなかったのがおかしかった。だけど、ビーチバレーに関してはなぜそこまでわかる……!

 あの視線は明らかに隆を見ている。今、隆と一緒にいる可憐さんではない。なんなんだ、この子……!!


 すると、目をこちらに向け、真顔で見つめてくる。恐怖すら感じるほどに何かを感じ取ったような目。


「私とあんたは同じ匂いがする。普段は馬鹿なフリをしておいて、本当はかなり頭が回り、行動力のあるタイプ。そうでしょ?」


「さあね……! 答えはノーコメントだ……! 世の中、知らない方がいいこともあるんだよ……!」


「……」


 歯を食いしばりながら、表情を読まれないために必死に笑顔を作る上条。勘が鋭いだけの子ならまだいいが、下手な気を起こして隆に危害が加わるようなことがあれば、何が何でも僕はこいつを止める……!!


 仮に加賀が先程、隆に視線を向けるだけでなく、隆を守るなんて言えば、隆のバングルの激痛がはまた発動することになる。

 だからこそ、加賀にこれ以上好き勝手喋ってもらうわけにはいかない。


「……ふーん。そう。まあいいけどね」


 相変わらずの真顔を貫いている。一様、納得はしたように聞こえる返事だが、その意図がわからない。

 なんなんだ、こいつ。全然読み取れない……!


 上条は必死で感情を読み取られないよう、苦笑いを続けているが、そろそろキツくなった顔をしている。


「僕からも一ついいかな?」


「何?」


「君たち三人は投資業界とは関係ないんだよね?」


「投資業界って、七不思議怪異の時に最後に出てきたお爺さんのこと? それなら本当に関係ないよ。今でもぶん殴ってやりたいくらいだし。私はただ、推理でここまで辿(たど)り着いただけ」


「ふーん、どうだか……」


 その発言とともに、表情を戻す。実際、上条は加賀たちが関係ないことは知っている。そうでなくては、今までの言動に矛盾が多すぎるから。

 実際に極兒と目を合わせた時、三人はかなり警戒しているように見えた。あれを見る限り、初対面であろう。


 上条とて、元は投資業界トップたちの秘書。もし三人が投資業界トップたちにそのように(やと)われていたり、関係性があるならば、資料として目に通している。

 極秘ルートでそういった情報だって手に入ることも可能だが、そういった情報は一切耳にしていない。

 だとすれば本当にただの推理なのか。


 そして、なぜ彼女たちは隆に近づく?


 それは隆も思っていることだった。その目的がわからないことが上条にとっては一番大きな部分だった。


「私は答えたけど、あんたは答えないんだね」


「そうだね、答えないよ。でも、特別にいいことを教えてあげるよ。これは隆にも言ってないことだから二人だけの秘密ね」


「……」


「正義と悪。何が正義で何が悪かはわからないとかよく言うよね。でもそれって本当にそうだと思う? 君確か、正義執行管理局っていうところに勤めてるんだっけ。そんな君に聞きたい。君の思う、正義の行動って?」


「うーん、自分が正しいと思ったら……かな? 私、正義と悪を間違える自信がないからさ。その見分け方は何なのかとか聞かれたら答えづらいかも」


「なるほど。それもまた一つの意見だよ。僕も似たような意見さ。強いて言えば、それプラス最善を尽くすことかな。相手にとっても、自分にとっても最善な選択」


 難しい話をする上条に、流石の加賀も少し頭が痛くなってきそうではあった。

 唐突に質問してきたかと思えば、意味のわからないことばかり。何を言っているかは大体わかるが、何が言いたいかまではわからなかった。


「いや、それも違うのかもしれない」


「?」


 最後にものすごい小さい声でそう言った。

 これらの上条の発言が何を示しているのかは加賀にも理解ができない。ただの格好つけには見えない。きっと、何か重大なことを言っている。しかし、理解をするためには材料が足りない。


(これ以上考えても無駄ってことか)


「よおしっ! 第三ラウンドいくぞおっ! 上条、お前は休んどけっ!」


 その時、遠くにいる隆が大声で叫んだ。上条と加賀はその方向を向く。

 一同に声をかけているように聞こえるが……


「え、ええっ!? ちょっと待てよ、隆っ! 僕が休んだら君ら二人だよ!? 大丈夫なの!?」


 今回ばかりはそうも言ってられなかった。先程の対戦では、シャルロットと上条が最終的に離脱したが、それは相手も似たような状況でまだ余裕があったから。

 しかし、今回は違う。チーム管理局の体力は全員マックス。何より、戦場においてその腕は本物。

 盾でもいいから出るべきだと自分に言い聞かせていたくらいなのに……


「大丈夫だっ! なんかいける気がするっ! 僕を信じろっ!」


「ちょ、ちょっとおっ……!? ああ……」


 上条は遠くから手を伸ばすが、隆はコースへと走っていった。

 いくら奇跡を起こす力とはいえ、流石にこの状況でどんな奇跡が起きるというんだ。

 ましてや、先程江南ちゃんにしたような手は彼女たちには通用しない。


 なんなんだ、あの隆は……!


「隆がついに壊れた……」


 空いた口が塞がらなかった。


 そんな上条の顔を横目でじっと見る加賀。


 その間に可憐、赤城、シャルロットもコートに歩き出す。


「じゃあ私も行きますかにえ〜」


 それを見て素早く二回屈伸をしてから二回軽くジャンプし、加賀も走り出した。


「あ、そうそう……!!」


 何かを思い出したかのように上条の方を振り向いて足を止める。

 それに気づき、上条は目を合わせる。


「この前は私のことを助けてくれてありがとねっ!! 私、あんたのこと嫌いじゃないよ!!」


 満面の笑顔でウインク。右手を軽く振ってまた走っていった。


「あ、ああ……」


 上条も左手で手を小さく振るが、その頃にはもうこっちを向いていなかった。

 この前のこととは、七不思議怪異の際、自分の命を削ってでも自分以外の全員を助け出そうとしたこと。加賀はそのことに少なからず感謝していた。

 そのお礼を言いたかったため、上条と話をしたかったのだろう。

 上条にとっては罪滅ぼしのようなものだったが、感謝されて悪い気はしなかった。

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