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我慢してほしいんだが?

 僕はあのあと、可憐たちの手によって外野の六人が固まっていた場所に運ばれた。

 本当なら上条のところに行こうとしたが、よくわからないが強引にこっちに運ばれた。


 スマホも持ってきてもらったため、中を確認しようとしていた、というのが今の流れだ。

 早速確認してみるとそこには――


(ビーチバレーをして二回連続勝利する。ルールはオリジナルでも可。:一回目勝利)


 このようなメッセージが届いていた。一回目か。あともう一回勝たないとダメなんだよな。

 そうなると次はチーム管理局。誤差ではあるが、さっき僕らが戦った美沙たち率いる、チーム芳月ガールズよりを倒した相手。そんな奴らとまだ戦えというのか、あの投資業界のトップどもは。

 拳を握り、歯を食いしばる。

 僕自身も体力がかなり減っているのもそうだし、もどきもさっきの戦いの前半でかなり足を痛めている。上条に至ってはまともに動くことすらままならない。

 マジでやばいぞ、この状況。


「ねえ」


「うわあ!! って、なんだお前かよ」


 後ろから突然声をかけられ、転倒する。上を見上げると僕と目を合わさる可憐がいた。


「あなた、さっきの戦いでかなり怪我してるみたいだけど、大丈夫? よかったら……私が……その……治療してあげても……いいんだからね!」


「いいよ、大変だろ」


「なによ、あなた! 可愛くないわね! 私がしてあげるって言ってるんだから大人しくされなさい!」


「……はいはい」


 面倒くさくなりそうだからとりあえず頷く。すると可憐は倒れている隆の背中に手を回し、ゆっくりと起こす。


 紫可憐。隆たちの目の前に突如として現れた少女。正義執行管理局ナンバーワン兼、管理局局長を務めている。地上最強の人間や、地上最強の少女なんて異名を持っているが、こうして見ると普通の天然清楚な少女にしか見えない。

 しかし、その実力は本物。かつてはテロリストの船を一人で無力化させたとの噂もあるほどに。


 そんな可憐がなぜ隆に近づいているのかはいまだにわからない。


(悪いやつではないんだけどなあ……)


 隆も最初は本当に殺そうとしていると思っていたが、違った。悪い人間ではないことに変わりはないんだが、目的がわからないため、未だに謎が多い。


 隆は俯きながらも考えていた。その間、可憐はがちゃがちゃと医療キッドを触っている。


(やっぱり、人類最強っていうのが関係しているのだろうか。政府とも繋がってるって聞いたし、まさか、拙者の暗殺……!)


「ん? どうかしたの?」


 顔を上げると、至近距離で首を傾げながら純粋な瞳でこちらを見つめる可憐がいた。

 手にはピンセットで濡れたガーゼを(つま)んでいる。


「え? あ、いや、なんにもだよ……!」


(なわけないか。暗殺ならとっくに殺してるもんな)


 可憐には隆を殺すチャンスは何度もあった。しかし、殺さなかった。殺そうとした時もあるように見えたが、あれらも全て違った。

 何より、さっきの純粋な顔つき。あれは人類最強なんて顔というより、ただの十九歳の少女のような顔をしていた。

 そんな彼女を疑うのも申し訳ないと思い、これ以上考えるのをやめた。


「しみるわよ」


 可憐は隆の右腕の傷口のところにピンセットで摘んだガーゼを押し当てる。


「いってえっ!!」


「こら、動かない! 男の子でしょ! 我慢しなさい!」


「……」


 なんなんだこいつと思いながら痛みを我慢する。

 それよく、おばちゃん看護師がちっちゃい男の子に言うやつだぞ。

 治療しているところをふと見るとそこには――


「……っ!?」


 大きな胸が二つあった。隆と上条を除いた七人の中で一番の巨乳は可憐。肌は白く、谷間ができていてあの隆ですら少しドキドキしてしまった。

 何より可憐は十九歳で隆より二つ上。年齢的にもどうしても反応してしまうお年頃。


 悪いと思ったのか、隆は上を見上げた。


「はい、終わったわよ……って、あなた何してるの?」


「き、気にするなっ……! 僕は何も見ていない! ましてや、拙者はシャルロットたんにしか興味がないでござる! 現実という名のまやかしに浸るくらいならば、この東條隆、現世という檻から解き放たれ、我らが理想郷ロジカルファンタジーの世界に入ってみせようぞ……!」


「前にあなたの友達変わってるって言ったけど、訂正する。あなたが一番変わってるわね」


 可憐には隆がなんのことを言っているのかさっぱりわからなかった。

 ただ隆からしてみればこれは弁解している。また殴られるかもしれないから。


「それでこのあとだけど、私たちとの対戦は無しにしましょう」


「え? 何で?」


 唐突に言われ、顔を正面に向ける。その顔はどこか悲しそうに見えた。地面に両手をつき、どこかを見つめている。

 なぜこんな顔をするのか隆には分からなかったが、それが本心ではないということはわかった。


「だって、あなた怪我してるじゃない。上条樹もシャルロットさんも。そんな人たちを怪我させられない」


「はあ……何を言ってるんだよ。僕は最初から美沙たちとも、可憐たちとも戦うつもりだった。今でもワクワクしてる自分がいる。それを今更無しにしてくれなんてのは無しだぜ」


「え……でも……本当にいいの?」


「ああ、見せてくれよ。管理局の底力ってやつを」


「……うんっ!」


 可憐は頬を染めながらニコニコと笑った。

 隆は本当に可憐たちと戦いたいとずっと思ったいた。一体、どんな戦いが繰り広げられるのか。

 あの政府直属の組織、正義執行管理局の最高戦力であるナンバーワン、ツー、スリーの三人がタッグを組んだチームと戦えるんだ。ドキドキが止まらなかった。

 だからこそ、可憐との勝負を受けた。


 だが数秒後、多分この胸の高鳴りは別のものだと察する。


(これに負けたら僕、死ぬぅっ……!!)


 死への恐怖。今は生と死の境界線にいるようなもの。

 この勝負をもし途中で辞めた場合、副業に対抗したとみなされ、腕輪が爆発する可能性がある。


 そうだ。


(僕には引きたくても引けない事情があったんだったあああああああ……!!)



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