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赤色の疾風なんだが?

 現在の点数は、チーム隆二点、チーム芳月ガールズ一点。


 前回の点数はこちらが入れたことにより、ボールは再び上条に渡される。基本のルールとして、最初のサーブは打つ順番をローテーションしなければいけないが、僕の手首はこれだ。そもそも、この試合において僕は手首が使えない。手首だけではなく、手やそれに繋がる腕も。ぶつかるだけでかなり痛むから。

 それはつまり、実質的には縛りプレイをしているようなもの。


 だから最初のボールは上条に全て渡すことにした。

 他のメンバーも僕の手首に包帯が巻かれていることから察していることだし、特に何も言わなかった。


「ふっ!!」


 上条はここにきてみたことのないサーブを繰り出した。

 ジャンプフローターサーブ。ボールを上げ、片手の手のひらで打つというもの。


 ボールは相手コートへと飛んでいく。しかし、そこにはついに本気を出した昇龍の姿が。目は野獣のように赤く光り、獣のような姿勢で上条の打ったボールを一心に見ている。


 なんかもう、嫌な予感しかしな〜いっ!!



 シュッ!!


 爪で切り裂くかのような攻撃。案の定、ボールに向かって回し蹴りをしていた。しかし、さっきと何かが違う。ものすごい早く、鋭い回し蹴り。そして、蹴られたボールには赤色の疾風が……!!

 だが、こんなところで怯んでいられないっ……!!


 今もどこかで見守って応援してくれているシャルロットたんのためにも……!!


 ボールは運良く僕の身体へ目掛けて飛ばされる。これでまたさっきみたいに威力を弱めて、打ち返せれば……!!


「よっしゃ……!! 僕に任せ――うおおおおおお〜……!!」


 腹部に当てたまではよかったが、もはやそれはミキサーなんてものじゃない。威力といい、回転速度といい、高速ドリルそのもの。

 僕は数秒間に数十回以上も回された。


「隆っ!!」


「うわ〜っ!! いつ終わるんだよ、これ〜っ!!」


 しかも、さっきよりも長い。さっきは五秒程度だったが、もう十秒以上経っている。

 なんかもう、吐き気までしてきた……


 バンッ……!!


 ボールは上空に弾かれる。案の定、威力は弱まった。しかし、あの回転速度。あまりの吐き気に僕は地にへばりついた。


「任せろっ……!! はっ……!!」


 スパイクを繰り出す上条。距離はまあまあ遠い。昇龍とは反対側の美沙の方向へと飛んでいく。


「はいっ! 妃ちゃんっ!!」


 美沙は昇龍にトスをする。


「任せな」


 昇龍は一歩も動かなかった。美沙の的確なパスが、昇龍にとってベストアタックポイントだったから。

 飛んだ場所は昇龍の右少し前。美沙の的確なパスが、再び昇龍の野生の力を呼ぶっ……!!


「はあっ……!!」


 もはや、呼吸を吸うように当たり前に赤色の風を(まと)い、当たり前に回し蹴りをして、当たり前にゴールを決めようとしてくる。

 ネットを超え、再び僕らに襲いかかる。

 場所は中央あたり。距離はそこまで遠くない。しかし、体が気持ち悪すぎる。目眩(めまい)もする。


 だが、こんなところで負けるわけには……!!


「うおおおおおおおっ……!!」


 立ち上がり、走り出した。自らまた吐き気や目眩が襲いかかることを知っていても、僕は前へ進むしかないんだ……!!

 ボールの正面にたどり着き、フラフラしながら突撃してくるボールを見つめる。


「へっ……僕の方が……早かったみたいだな……おおおおおおおおっ……!!」


 腹部に直撃。大回転。


「隆いいいいいいいっ!!」


 ボールは威力を落として弾かれた。

 僕はまた地面にへばりつく。

 もう、頭がぐらぐらしてきた……

 吐き気もかなりきてる……


 自分が今、反転された場所にいるかのように世界がひっくり返って見える……


「くそっ……! 隆は何としてでも僕が……!!」


 小さな声で上条は呟いた。歯を食いしばり、上条は飛んでシュートを打つ。今度もスパイク。


 上条も必死だった。隆はこれで負ければ副業が失敗し、死ぬこととなる。それを助けることができるのは、シャルロットと上条しかいない。しかし、シャルロットはもういない。

 残ったのは上条のみ。隆を守れるのは上条しかいなかった。


(何より、隆の副業が発生したのは僕の責任でもある。償いにはならないかもしれないが、その分僕は全力で隆を生かすっ……!!)


 ボールは遠くに飛ぶ。あそこには美沙も昇龍もいない。


 しかし、またしても美沙の高速移動が始まった。砂の凸凹(でこぼこ)や、風の流れを一瞬で把握。距離は約五メートル半。アクセルを踏み、加速開始。


「はいっ! 妃ちゃんっ……!!」


 あっという間に目的場所に留まり、右足で蹴る。しかし、その蹴りは方向がもうおかしかった。カーブを決め、昇龍の元へ的確に渡される。

 美沙はサッカー未経験。しかし、頭の良さと運動神経の良さを兼ねそろえている美沙にとって、サッカー選手の動きをコピーすることなんて朝飯前。


「おい……そんなの……ありかよ……」


 唖然(あぜん)とする上条。

 隆を助けるために一瞬だけ能力を使おうか悩んだ。しかし、隆は試合前、上条にだけ言った。




「能力はなしでいこう。命がかかっていても、真剣に戦いたい」




 その言葉が頭によぎり、能力を使うのをやめた。

 能力を使えば、互角以上に戦うことはできる。でも、それをしなかった。

 そんなことをすれば、隆が失望する。そしてそれは、隆との約束だったから絶対に破らない。

 隆と上条は信頼関係があるからこそ、わかった。

 それが上条の意思だった。


 そんなことを考えたいるうちにボールが昇龍の足元に回ってくる。位置は先程美沙がパスをした時とほぼ変わらない位置。


「……」


 もはや無言で回し蹴りを繰り出す。


 ボールはまたしても中央に向けて飛ばされた。そんな時、隆が立ち上がろうとする。フラフラする脚や頭。尋常じゃないほどの吐き気。それに上条はすぐに気づいた。


「隆。そこで休んでて。僕が昇龍さんを道連れにしてでも、食い止めて見せるから」


 真剣な声で言う上条。それは隆にも届いていた。


「上……条……」


 立ち上がろうと手を伸ばす隆。だが、どうにも世界が反転していて起き上がれない。起きあがろうとすれば、逆に砂に埋もれる。

 さらに、力を入れれば入れるほど迫り来る吐き気。

 隆にはただ、砂を握ることしかできなかった。


 外野にいる五人も隆を見ていた。相手チームである天空城すらも、気にかけている。


「隆さんっ……」


 何より、シャルロットの目からは涙が溜まっていた。今にもこぼれ落ちそうなほどに。しかし、勝負をして勝たなければ副業達成には近づけない。

 中断なんてもってのほか。その瞬間、副業に抵抗したとみなされ、バングルは爆発。

 これも投資業界の仕組まれたものだとすれば、相当(ひね)くれている。


 隆にはもう、戦う以外生きる道はないのだ。

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