疾風の速球なんだが?
フィールド仕切り直し。
ボールは新しいものに取り替え。
センターはなしのダブル戦。
点数は現在、チーム隆一点。芳月ガールズ一点。
チーム隆。レフトに隆、ライトに上条。
チーム芳月ガールズ。レフトに美沙、ライトに昇龍。
「じゃあ、僕からだ。いくよ、レディたちっ!!」
先程、もどきがシュートを打ったことにより、最初のサーブはこちらからとなった。サーブ自体、手を使う。まだ手首の痛みが取れない僕がやるわけにもいかないため、上条に任せることにした。
何より、僕より上条の方が運動神経がいい。ここは的確に相手に決めることができるはず。
ドンッ!
手をぶつけ、左手でサーブをした。飛んだ方角は美沙の方。コートを超え、速球が美沙の近くに降る。
「はい、妃ちゃんっ!」
滑り込みでボールに追いつき、レシーブを使って昇龍にパス。手首に当たり、勢いよく左上に吹き飛ぶ。相変わらずの運動神経。だが、まだ美沙は本気を出していない。本気を出したときが一番危険だ、こいつは。
だが、昇龍も昇龍。三メートル近く跳び、右足で回し蹴り。顔つきがもう、シュートを決める気満々。
くる……! あの異様なほどの技が……!!
「くらいなっ……!!」
足がボールにヒット。緑色の謎の疾風を身に纏う。早い上に、威力も半端ないはず。
ボールはコートを超え、僕らの方へと足を踏み入れた。向かう先は僕と上条の間。だが、僕の方が少し近い。
この時を待っていた……!!
「うおおおおおおおっ……!!」
僕は走り込みで飛び込み、全身を伸ばしてボールにダイブした。
「うわあああああっ……!!」
ボールは僕の腹部にヒット。僕はその渦に飲み込まれ、ぐるぐるとものすごい速度で回る。
三百六十度。三百六十度。何回回ったかとか。
目が回る……! 目が回るでござるよお〜……!!
「うはっ……!」
「隆っ!!」
僕は一メートルほど吹き飛び、倒れ込んだ。上条は僕の方向を向いて心配をするが、今がチャンスだ。
「いけ、上条……! ボールの威力はかなり弱まったっ……!」
「……っ!! ああ、任せろっ……!!」
上条は手を握り、手の内側をボールにぶつけた。場外にならない程度のかなりの直線距離。場外に出れば、点数は相手チームに入る。場外スレスレではあるが、勝つためにはこのくらいのリスクは必要。
リスクはでかいが、ボールがもう地面スレスレ。
地面につけば、点数は僕らの方に入る。
ここで点数の差をつけれれば――
「……っ!?」
ボールは何故か真っ直ぐ上に高く浮き上がった。地面にバウンドした? いや、違う。あんな直進、いくら上条でも、真っ直ぐ上にバウンドさせることなんてできない。
「惜しかったね」
ニヤリ。美沙だった。美沙はさっきまでそれなりに離れた距離にいた。しかし、ボールが進む方向がわかった途端、高速移動を開始。極め付けはギリギリ間に合い、足のサイドで防いだ。サッカー選手かよ、マジ……
「ナイス、江南っ!!」
そこへ昇龍が走り出す。
「「ぎゃあああっ!!」」
高く空に打ち上げたことにより、時間ができた。その分を活かし、昇龍が駆けつけて上空へまた飛んだ。
流石にこれは決まったかと僕と上条は安心してからのこれだ。二人同時に発狂タイム。
「おっらあああああっ……!!」
またしても回し蹴り。天空城といい、昇龍といい、お前ら揃いも揃って回し蹴り大好きかよっ!
いや、そんなことを言っている場合ではないっ!
ボールはまた疾風を纏い、高速で接近。
向かう先は、お返しと言わんばかりに僕と上条の後ろに向かっている。
「任せろ――うおおおおおおっ……!!」
走り出し、ボールに追いつく。覚悟は決まった……! さあ、こいっ……!!
「ぐおおおおおおおっ……!!」
またしても腹部に当たり、僕は風車のように何回も回ります。
「僕が威力を弱めるっ……! 僕は運動神経も悪いし、お前らみたいに活躍はできないっ……! だが、威力を弱めることはでき――うわあああ〜!!」
僕にはこれしかできない。でも、これでチームが勝てるなら、喜んで引き受ける。味方を守る盾、ディフェンダーってやつになっ……!!
「隆……」
回転しながら言った。上条の声は珍しく感情がしっかりこもっている。いつもはふざけて返してくるが、珍しく小さい。
こいつ、まさか感動して――
「うはっ……!」
今度は二メートルほど吹き飛んだ。
「さっきから何なんだよ、あいつらっ……!!」
「まさかルールを作ったお兄ちゃんまでもが、このルールを活かすとはねっ……!!」
昇龍は驚き、美沙も渋い顔をしている。
「ぐっ……!!」
上条は歯を食いしばり、ボールに向かって飛び上がった。場所はネット付近。さらに、吹き飛んでいくボールに向かって拳を作った。でも、飛びながらサーブ? それも、下から上に上げようとしているように見える。あいつらみたいに脚を使うとかならわかるが、やりにくくないか?
「っ!?」
「どういうことだ!?」
困惑する二人。飛びながらサーブなんて見たことない。何より、あまりにも効率が悪い。
一体、何を考えたいるんだ、上条は。
「と見せかけて、スパイクだっ……!!」
その瞬間、上条は腕を上にあげ、手を開いた。
「何っ……!?」
「え……!? ちょっ……!?」
ボールを、相手コートのネットスレスレのところに地面に叩きつけ、地面にぶつける。
さっきのは上条のフェイク……! 本当の狙いは、ボールを叩きつけることだったのか……!!
ボールは地面にぶつかり、小さくバウンドした。
上条は寝転がっている僕に近づき、ドヤ顔で拳を突き出した。
僕もにっと笑い、寝転がりながら拳をぶつける。
これで二対一。こっちの方が優勢だ……!!
制限時間は残り、六分を切る。このまま相手に点数を入れさせなければ僕らの勝ち。だが、そううまくいくのか?
何より、僕の盾もいつまで続くかわからない。昇龍の一撃一撃が高速ミキサーのようなもの。腹部が痛み、目が回っていて少しフラフラする。
上条だって、さっきの天空城の攻撃がまだ癒えていない気もする。
それに比べ、昇龍は体力こそ消耗しているも、まだ全然動ける。
美沙なんて本気すら出していないようにも見える。
このままシュートばかりを意識していても、あの二人にその隙をつかれることは間違いない。
だから攻撃を受けるより、守りに徹する方がいい。
「上条。ここからは守りに徹するぞ。僕らの体力も徐々に削られている。それに比べてあいつらはまだやれるように見える」
「攻撃を意識しすぎれば隙をつかれる。僕も隆と同じ考えさ。そうだね、それでいこう。最悪、あと約六分凌ぐことができれば僕らの勝ちだ。あまりクールじゃないが、今はそうすべきだろうね」
やはりそうだ。二対二とはいえ、圧倒的に不利すぎる。だからこそ、狙うは時間切れ。今の僕らが勝つにはこれしかないっ……!!
「いくぞっ!!」
「ああっ……!!」
僕らは構えを取り、戦う姿勢を見せた。




