超次元ビーチバレーなんだが?
天空城の投げたボールと発言。そのどちらにも彼らは開いた口が塞がらなかった。
特に隆に関しては白目を剥いていて震えていた。隆に関して言えば、この中で唯一命がかかっているのだから。そんな悠長に「天空城さんすごいですね」、なんて褒め称えている場合ではない。
ましてや今のはサーブ。パスだのシュートだのの問題ではない。そして、可憐たちがボールを追いかけて打ち返せれなかったという話でもない。
ただ、天空城が強すぎた。
あんなありえないサーブ、見たことない……
「驚いたわ。あなた、すごいのね」
「ありがとうございます。まさか、格闘技が本当に役に立つなんて」
「じゃあ、私たちも本気を出させてもらうわ。それも、本番の戦場のようにね」
可憐は驚いてはいるものの、いたって落ち着いている。
しかし、あの可憐のこの余裕。この六人の中で実力を確認できたのはまだ天空城ただ一人。
誰がどんな実力を隠していたっておかしくはない。そしてそれを知れば知るほど、僕に待つのは絶望のみ……!!
「たしか勝った方からボールを打つんだよな。私ばかり打っていては申し訳なくなるからどちらか二人」
「じゃあ、あーしが」
天空城は昇龍にボールをパス。左手を前に出し、手のひらにボールを乗せた。それを少し浮かせ、右腕を伸ばす。拳を作り、腕を振り、ボールにぶつけた。
速度は天空城ほどではないが、それなりに出ていた。
というか、天空城に関しては次元が違うんだが。
ボールはチーム管理局側の方へ飛ぶ。
しかし、二人は動かなかった。その二人とは、可憐と加賀。一歩も動かない。
もちろん、ボールがこちらに向かっていることは二人ともわかっている。だから、その人物だけが動いていた。
バンッ!
力を込めて跳ね返したのは赤城。この三人の中で一番身軽で速い。瞬発力が桁違い。二人は赤城の足の速さを知っているからこそ、動かなかった。
特に打ち合わせとかはしていない。ただ二人は赤城が動くことは長年の付き合いでわかっていた。
先程の天空城のボールは力量が陣地を超えていたため、動くことができなかった。しかし、一度見ればもう動くことはできる。
昇龍の打つボールはそれに比べれば打ちやすいものだった。
ボールは相手のコートへと打ち返され、赤城たちから見て右側へと飛んでいく。
そこへ美沙が駆け寄り、パスを打つ。
「空ちゃん!」
ボールは名前の方向へと宙を舞い、天空城の元へ。しかし、方向が少し悪く、相手コートへはまだ投げられそうにない。
そのため、天空城が選んだ選択肢はパスだった。
「昇龍さん!」
「ああ! 決めさせてもらうぜ!」
ボールは昇龍の方へと飛んでいく。伸ばしたのは腕ではなく、脚。
一メートル高く跳び、足にボールをぶつける。何度も言うが、普通のビーチボールでは足は使えないが、今回隆が提示したルールは「ボールの当たり判定は手や手首以外でもOK」。判定自由なため、どこを使ってもパスやシュートは可能となる。
足はボールに綺麗に命中。謎の突風がボールを巻き込む。ものすごい速度で回転し、相手のコートへと突撃。
最初こそ、可憐は驚いた。
(この子も天空城さんも、すごい力。でも、私だって……!)
ボールは相手コートに入り、可憐のちょうど真下に落ちる。嵐を巻き込んだかのようなボール。触れただけでも怪我をしてかなりの反動を受けるであろうそれに対し、可憐は左手の拳を固め、下から殴り飛ばした。
まさかのアッパー。
可憐の手は怪我をしていなければ、反動を受けていない。一件、当たり前のように飛ばしたボールだが、これが普通の人間ならば、手は少し擦れ、風を纏ったボールの弾みで反動は大きい。
仮にボールを打ち返せたとしても、そんなすぐにできるものではなく、岩を動かすような重みが降りかかるはず。
しかし、可憐は何事もなかったかのように約九メートル先の上空へと弾き飛ばした。反動なんて微塵も感じず、ただニヤリと笑みを浮かべて。
そしてついにあいつが動き出す。加賀だ。上空を高く跳び、四メートル飛ぶ。ボールが加賀のいる高さの四メートル地点まで到達。右手を思いっきり開き、そのボールを打ち返す。
「必殺、トリックショット!」
これまた豪速球。ものすごい速さで宙を舞い、相手のコートにあっという間に入り込む。
しかし、そのボールは地面になかなか落ちない。
「え!? ええっ!?」
「なんなんだ、ありゃ!?」
言葉通り宙を舞っていた。何重も円を描いたり、ジグザグに動いたり。まるで、ボールが意思を持っているのではと疑うように暴れ回っていた。
いつまで経っても落ちてこない。ただ不気味に暴れ回る。
これこそが加賀の必殺技の一つ、トリックショット。
宙を舞い、あらゆる方向にボールを飛ばす。そして最後には強烈な一撃が相手へと突き刺さる……!
ズドオオオンッ……!!
コートに開いたのは大きな大穴。その穴はチーム芳月ガールズのコート全てを埋め尽くすかのように開けられた。ボールはその中心に砂に埋もれるようにはまっていた。
「玉の扱いには私、慣れてるんだよねえ〜」
いつの間にか地面に着地していた加賀が、腰に右手を当てながら胸を張って言った。加賀の武器はモーニングスター。あれも玉。ボールも玉。彼女にとって、どちらとも扱いは大差ないのだろう。
「な、なんてシュートのやり方だ……!」
「これが……正義執行管理局……」
これで結果は一対一。
そして隆はというと……
「すごいね、みんな。あれだと流石の僕らも――って、隆!?」
チーン。
「隆! 隆! たかあああああしっ……!!」
上条は隆を何度も強く揺さぶるが、完全に気を失っていた。次から次へと次元を超えたビーチバレーの数々。こんなものを見せつけられた上、命がかかっているともなれば、気絶するのは突然だろう。
(お、終わりだあ〜……)
隆の気絶している間も試合は続いた。十分間とは思えないほどの激しい攻防戦。地は揺れ、海水は吹き飛び、暴風すらも巻き起こる。上条やシャルロットにとってはもう、何か一つの映画を見ているかのような分厚すぎる激闘。
そして、その白熱の戦いは幕を終えた。
「隆〜。お〜い隆〜。生きてるか〜。終わったよ〜」
「ん……終わったのか……って、何をやったらこうなるんだよ……」
もう、どこがコートなのかわからないほどボコボコに開けられた穴。草が飛び散り、海の波の向きが逆方向に流れ出しておかしなことになっている。
空はさっきまで晴天だったのになんか黒く曇っているし。雷も鳴ってる。
「まさか、恐竜も乱入し、惑星まで降ってくるとはね」
「お前は何を言っているんだ。それでどっちが勝ったんだ?」
「三十一対三十二でチーム管理局の大勝利。こりゃあ、たまげたね」
やれやれとものを言う上条。
前を向くと、息を切らした六人の姿があった。
「はあ……はあ……負けてしまったか……」
「でも……あなたたち、相当すごいわよ……訓練された私たちと互角で張り合うなんて……」
激戦の末、語り合う両者。勝ったのはチーム管理局ではあったが、ほんの数秒残り時間がなければ引き分けだった戦い。
実際、どちらが勝ってもおかしくなかった。
「さて、次は僕らの番だね」
(勝てる気がしねえ〜……)
三対三でこの結果。隆は自分のことを当然の如く、戦力外だと認識している。そのため、実質二体三。
いくら上条やもどきが強いからと言って、この圧倒さに勝てるかどうかはわからない。
「大丈夫だって! 僕に任せとけって! 行こう、隆っ!!」
上条は立ち上がり、後ろを振り返って隆に手を伸ばした。
でも、上条のこの顔。自信に満ち溢れている。
仮にこれがまたおふざけの助長だとしても、僕はこいつを信じる。
こういう時の上条は本気だ。
「そうですよ! そのための私たちなんですから! 頑張りましょう!」
もどきも少し離れた場所でガッツポーズを取る。上条だけじゃない。あのもどきだっているんだ!
なんとかならないはずがない……!
そして僕だってやれるさ……!
僕だって……! 僕だって……!
ま、まあ……ボールを受け止める盾くらいにはなれるよな……
僕は上条の手を握り、二人に向けてにっと笑い、立ち上がった。
「さあ、やろうかっ……!!」




