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それぞれの実力なんだが?

 隆たちのチームが決まったが、その場にいる二人はどうしても納得がいかなかった。昇龍と可憐。

 選ばれなかったことではない。隆のその理由に関してだ。


「妹だから」。天空城や美沙のようなことが言いたいわけではない。この二人はシャルロットという存在がロジカルファンタジーにいるということを知っている。そして、ロジカルファンタジーの中にそのシャルロットが消えているということも。

 そして隆はシャルロットたんシャルロットたんと日頃から言っている。やはり、本当はただのシスコンなのか?

 ロジカルファンタジーの自身のアバターの名前がシャルロットなのは、妹のシャルロットが好きすぎてつけた名前なのではないのか。そんなふうに考えていた。


 しかし、何か引っかかる。隆やシャルロットが何かを隠しているように見えないからだ。


((この兄妹、絶対に何かある……!)


「残念だったね、可憐」


 可憐の後ろからやれやれとした表情で声をかける加賀。その横には赤城もいる。


「ええ、そうね。私も本当はあの子となりたかったなあ」


「んあっ!? 可憐、今なんて……!?」


 考え事をしているあまり、上の空で本音を漏らす可憐。加賀もその気持ちに気付いてはいたが、ツンデレの可憐がこんなところであっさりと本音を漏らすとは思わなかった。だから目を思いっきり丸くする。


「へえ!? な、なんにもよ、何にもっ!!」


「とりあえず可憐は私たちのチームでいいですよね。チーム管理局ということで」


「ええ、そうね。管理局の底力、見せてあげましょう!!」


「ういっす!」


「はい!」


 キリッとした顔つきで小さくガッツポーズをする可憐。加賀と赤城の二人も頷いた。

 鍛え上げられた力と瞬発力を兼ね揃える三人。この三人は管理局の中でも特に強い。

 赤城は小柄な身体を活かした瞬発力がある。

 加賀は四倍以上の鉄球を持つことができる怪力の持ち主でアタックなどには有利になるだろう。

 そして可憐は全てのバランスを兼ね揃えた最強の存在。

 この三人は、抜群のコンビネーションと現場の適応力で数々の任務を任されてきた実績がある。この三人が負けるはずがない!


 チーム名、チーム管理局!



 その頃、残りの三人は……


「運動神経は美沙さんと昇龍さん、かなりいい方だ。私は二人ほどいいわけではないが、それなりに動ける」


 美沙、昇龍、天空城。この三人で組もうという話になっていた。


「空ちゃんって格闘技が得意なんだよね?」


「まあ得意ではあるが、ビーチバレーではあまり関係なくないか?」


「いや、関係ないこともない。強力な一撃でものすごい球速をぶつけることができるんじゃねえのか?」


「なるほど」


 球の速さはぶつかる力に比例する。強力であれば強力であるほど、球速は速くなる。

 天空城自身、力はある。それこそ、拳や脚といったものばかりだが、もしかすればそれがバレーボールにも活かせることになるかもしれない。


「じゃあ、アタッカーは空ちゃんだね! 私と妃ちゃんはバックサイドに回る! チーム芳月ガールズ! いっくよー!!」


「おう!」


「ああ!」


 芳月学園は彼女たちが通う学校。彼女たちは運動神経がいい。特に美沙と昇龍に関しては別格。

 美沙はクラスでトップ、昇龍は同じクラスであるシャルロットの次にいい。

 天空城も二人ほどではないが、クラスで上から数えたほうが早いくらいにはいい。何より、天空城には強力な力がある。それが活かせるかもしれない。


 チーム名、チーム芳月ガールズ!



 そして問題の隆たち三人は……


「ということで、お前ら二人で頑張ってくれ」


「ええ!? 自分で誘っといてなんだよ、そりゃ!」


「だって僕、手首使えないんだよ。お前ら二人、運動神経いいしなんとかなるだろ」


「でもさっき隆さん、ボールの当たり判定は手や手首以外でもOKって言ってませんでしたっけ?」


「……ああ、そうだった。忘れていた」


「君、まじでノリであれ言ってたんだね」


「ボールの当たり判定は手や手首以外でもOK」。

 この隆が言ったオリジナルルール。普通、ボールのパスには手首、シュートは手を使うのがビーチバレーの基本。だが、今隆は手首が使えない。

 だからこういうルールを提示したのだ。


「とはいえ、引きこもりの僕にできることと言ったら限られる。ましてや、僕以外お前らも含めた全員がかなり運動神経がいい。足手まといもいいとこだろ」


「ビーチバレーやると言った人と同一人物とは思えない発言だよ、それ。まあでも、僕たち三人、お互い全力を尽くしましょうぜ」


「そうですね! 他のチームもなかなかに強敵揃いですが、私たちならいけます! 頑張りましょう!」


「ふっ。そうだな! 僕も足掻くだけ足掻いてやろうじゃないか! そして楽しむ! よし! チーム隆、いくぞ!!」


「おー!!」


「おー――って、だからダサいって、チーム隆」


 シャルロットは全ステータス9999(エンドレスナイン)。瞬発力や攻撃力がある。何より、前回のスポーツテストで、同じクラスメイトである運動神経抜群の昇龍を差し置いて一位だった。

 そして上条はもともと、投資業界トップの関係者で、地上の人間より身体能力が高い。前回のスポーツテストでは男子一位を取っている。負ける気がしない。

 そして引きこもりの隆。これまでネトゲ生活で打ち込んできたキーボードや、一日三食ポテチ生活が役に立つかもしれない。その(こころざし)を胸に、隆も戦場へと向かった。


 チーム名、チーム隆!


 九人全員で協力し、準備をした。可憐たちはビーチバレーをやることもあらかじめ想定し、支柱やネットなども持ち込んでいた。

 どれだけ気合い入っているんだ、管理局組は。

 その間に唯一、ルールを知らない隆は美沙からビーチボールのルール説明を聞き、多分納得した。

 準備はすぐに終わった。長さは八メートル×(かける)八メートル。

 枠を囲う線は枝で書かれている。つまり、その間がビーチバレーのフィールドというわけだ。



 最初に戦うのはチーム管理局VSチーム芳月ガールズ。


 隆にとって、最初にこの二組が戦うのは非常に好都合。この二組、六人の力量を見ることができるから。誰がどう動き、どうやってボールを回すか。それが見ることができるから。


 二組はフィールドの中に入り、ネットを挟んで三対三で分かれる。


 チーム管理局のセンターは可憐。そのサイドに赤城と加賀。

 チーム芳月ガールズのセンターは天空城。そのサイドに美沙と昇龍。


 それぞれのポジションはこんなところだろうか。


「おい、東條隆。最初のサーブはどうする?」


「最初のサーブは手だけにしよう。流石にここを脚だのヘディングだのに変えるとなると、ビーチボール間がねえ」


 本家ビーチボールでは、最初のサーブは手を使ってボールを飛ばすこととなっている。

 今回のオリジナルルールでは判定自由。だからサーブまでもそれが適応されれば、ビーチボールとして何か物足りなくなる。そう感じた隆はサーブは通常通りというルールにした。


「制限時間は十分。では、先行はチーム芳月ガールズから」


 シャルロットが審判役となり、宣言する。二組の代表である天空城と可憐はジャンケンを先程し、天空城が勝ったことから先行を取ることができた。

 これが有利に働くかどうかはわからない。なんせ相手はあの管理局なのだから。


(さあて、観察させてもらいますかね)


 隆も真剣な眼差しでボールを持つ天空城を見つめる。


 今回の試合は副業には関係ない。隆にとっては相手の力量を測るためのもの。そして、純粋に試合を楽しく観戦するというもの。

 どちらの理由にせよ、相手から目を離すわけにはいかない。


「では、試合開始!」


「それでは、参ります」


 そう言って天空城は左手を前に出し、手のひらにボールを乗せた。それを少し浮かせ、右腕を伸ばした。拳を作り、ものすごい速度で腕を振り、ボールにぶつけた。



 バキュンッ!!



「「……ッ!?」」


 ボールから鳴ったとは思えない音。まるで、鉛玉が飛ぶような。

 その場の誰もが反応できなかった。両コートを均等に見ている隆や上条でさえわからなかった。

 美沙や昇龍。そして、管理局の三人も。


 ボールがいつの間にか、チーム管理局のコート内の地面にバウンドしていたのだから。


「加減をするよう昇龍さんに言われたが、これでいいのか?」


 天空城から出た言葉はとんでもないものだった。

 あの速度でまだ本気ではなかった。もし本気を出していれば、ゴムでできたボールは跡形もなく粉砕していた。

 それをわかっていて、自分で力加減を調整し、ボールを飛ばした。

 そのボールはプロ野球選手もびっくりな、豪速球となり、風を切り、周囲の波さえも唸り、相手コートの地面にぶつかる。

 何より、ボールの落ちた場所はセンターにいる可憐の真横。同じセンターにいる天空城から距離を考えると、すぐ近くに落ちたということ。


 ――その時、隆は思った。


(あ、僕、死んだわ……)

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