ビーチバレーなんだが?
「お前らあ……!! ビーーーチバレー……やるぞおおおおおおおっ……!!」
その言葉を発し、沈黙が数秒。
それを破ったのは……沈黙を作った隆だった。
「可憐、ビーチボールはあるか?」
「いや、それはあるけど、貴方色々と大丈夫なの? 手首とか……頭とか……どこか打ったの?」
「いっつ……!! 流石に頭は大丈夫だわっ! 僕は今、無性にビーチバレーがやりたい!」
可憐が聞いたことにより、ペナルティが隆の手首にまた発動。あざだらけなのにその上からまた痛めつけられれば、溜まったものではない。
だが、これ以上心配をかけられればさらにペナルティが発生する。だから声はあげない。
「いいんじゃねえの、ビーチバレー」
「私も賛成であります!」
反対する者もいない。
「では、ビーチバレーのルール説明だ。ルールはビーチバレーの基本のルールプラス、ボールの当たり判定は手や手首以外でもOK。ルール説明に関しては以上だ」
「ルール説明のくせにビーチバレーの基本の説明しないんだね。それでお兄ちゃんはその基本のルールを知ってるの?」
「知らん。だから後で美沙、僕に教えてくれ」
「はあ……はいはい」
「チームはどうする?」
「チームは三人一組で三チームに分けよう。今ここには九人いるし、それがいい。メンバーは各々決めてくれて構わない。総当たり戦で各チーム一度は当たるようにする。以上だ」
(ビーチバレーをして二回連続勝利する。ルールはオリジナルでも可)
これが今回の副業達成の条件。まず、二回連続ということは二回は必ず試合を行わなければいけない。
もちろん、隆が決めるなら自分に有利にするようにもできる。例えば、この中だとダントツで運動が苦手な自分自身にハンデをつける、自分のチームのメンバーを強い人材にするよう誘導することだって可能。
しかし、隆はそれをしない。命懸けとはいえ、今この瞬間を楽しみたいのもまた事実だから。
「質問があるやつはいるか?」
「……」
「なさそうだな。じゃあ、チーム分けから始めよう」
「私は赤城と一緒がいい!」
「では、私も」
加賀と赤城が手を挙げる。
その二人を見て隆も考えていた。
自分は? 自分は誰となりたいんだ? この中の八人。この中から二人を選ぶとしたら。戦力どうこうではない。誰となりたいかだ。
「じゃあ、私も赤城と加賀と一緒でいい――」
「「可憐は、んっ!!」」
二人はむっとした顔で隆を指さす。指をさした方角は隆。もちろん、可憐のことが嫌いなわけではない。
二人をくっつけようとしている、若い子にありがちなあれだ。
「なっ……! 私はいいわよ、貴方たちで!」
「「またまた〜」」
手招きをしてニヤニヤと笑みを浮かべる二人。
「また貴方達変なこと考えてるでしょ! いいの、私は貴方たちとチームでえ!」
三人はわちゃわちゃと話し始めた。
他の人から見れば、もうすでに三人はチームになったのかというふうにも見えていた。
「じゃあ、僕は隆となろうかな。訳ありなんだろ」
何かを察し、険しい顔をする上条。
「まあな。よし! チーム隆の二人目はお前で決まりだ!」
「だせえ〜、チーム隆」
「うるせえ」
僕は上条をチームに入れることにした。上条の運動神経なら問題ないだろう。前回のスポーツテストで満点だったそうだし、何より投資業界トップの関係者だ。
人並み以上の力を発揮してくれることは間違いない。
「三人一組なんでしょ。後一人どうするの?」
「そうだなあ……」
ぶっちゃけ実力だけで言えば、誰でもいいことに変わりはない。僕を除けば全員が運動神経抜群。
でもそれは実力で見ればの話。
後一人。僕は誰となりたいんだ?
「お前ら二人か? なら後一人、あーしを混ぜるってのはどうだ?」
近づいてきたのは昇龍だった。
「いいよー――」
「待て。少し考えさせてくれ」
上条の口の前に腕を伸ばし、止める。上条はバカだから誰から構わずいいと言うだろう。
だからってここはもう少し慎重に選ばなければいけないのもまた事実。上条はいいとしても、後一人なんだ。この一人で勝敗が分かれるかもしれない。
「なんだよ、東條。つれねえなあ〜」
「わ、私なんかもいいぞ! どうだ? 東條隆?」
さらには天空城までもが僕に声をかける。なんでこいつら僕となりたがるんだ?
「いいよ――」
「だから待てって! ……」
考える。考え続ける。
ビーチバレーに勝利することも大切。ただの敗北なら構わない。しかし、僕にはこのバングルがある。
それと同時に、自分が誰となりたいかも大事だ。
実力だけで選べぶなんて、そんなのは僕らしくない。
「私も忘れてもらっちゃ困るよ! 私を選ぶよね! ね!」
「……」
美沙も僕に近づく。流石の上条もわかったようだ。この選択がどれだけ重大なことなのかが。実力と己の意思。それを天秤にかけるという意味が。
「私、隆さんと一緒がいいです!」
「……っ!?」
その言葉が何故か心の中に響き出す。わからない。なぜ響き出したのかが。胸が高鳴るこの感覚。
僕自身、他に何かを感じているわけではない。だが、僕のこの鼓動は……
「私は可憐を推薦します! めっちゃ強いし、隆と本当はなりたがっ――んんっ!」
加賀が口を開くが、それを左手で力強く押さえ込む可憐。加賀は暴れ出し、なんとしても可憐の気持ちを伝えてあげようとしていた。
「可憐さんたちはまだ決まってなかったんですか?」
「ええ。私と加賀は決まりましたが、可憐は東條隆と組みた――んんっ!」
赤城も口を開くが、それすらも右手で力強く押さえ込む可憐。赤城はなぜかよくわからないが、最近少し積極的になっている。
「わ、私たちはもう決まったからお気になさらず〜」
「おまけにおっぱいもでかい――んんっ……!!」
可憐の手から逃れた加賀は勢い余って余計なことまで漏らした。それをさらに強く抑え込む。
「あんたマジでいい加減にしなさいよ……!」
この中で選べるのは五人。この中から一人を選ぶのはなかなかに苦ではある。これが一人でなければ全員入れていたが、そういうわけにもいかない。
そのあたり、投資業界に腹を立てたくもなる。
しかし、ビーチバレーをやらないという選択肢はない。
だから僕は決める――!!
「決めた」
「「……っ!?」」
その場にいた全員が僕に注目する。
僕はその人物を手でチェックポーズを作り、その人物に向けた。
「来い、もどきっ!!」
「……っ!? はいっ……!!」
シャルロットの顔はだんだんと晴れやかになり、最後は笑顔で頷いた。シャルロット自身も驚いていた。選択肢は五人。五分の一の確率。
そんな確率の中、私を選んでくれた。それだけが嬉しかった。
シャルロットは隆と上条の近くへ歩いて行った。
「シャルロットちゃんか〜! 理由は?」
「理由……か。妹だから」
隆がシャルロットを選んだ理由は特にない。ただ、シャルロットが隆に声をかけた時、胸が高鳴った。
自分の中でこいつを選べと言っているような気がした。それに従った。ただそれだけではあるが、そうなったのはシャルロットだけだった。なぜなのか。
それは隆にも分からなかった。
「「……」」
「え、ちょ、なんだよ!? 妹だから選んで何が悪いんだよ!?」
「いや、別に、悪くはないと……思うぞ?」
「ま、まあ、世の中にはそういう人もいるもんね!」
若干引いていたのは天空城と美沙。常識人の二人にとってこの理由はそうなるだろう。
「おい、そういう人ってなんだよそういう人って! まともな理由だろ、これ!」
「「えー……」」
「お前らなんなんだ、さっきからその反応は! え!? もしかしておかしいのって僕の方!? 僕の方なのか!?」
「ふふっ」
その光景を見て笑うシャルロット。その笑いには二つの意味が込められていた。一つは今必死で言い訳を考えて焦っている隆がどことなく可愛いから。
そしてもう一つは、隆がシャルロットを選んでくれたという事実が嬉しかったから。
ありがとう、隆さん。




