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四人の力なんだが?

 上空で何か音が鳴る。さらにそこから下に落下する赤い塊。中には黒い何か見える。

 何が起きてるんだ? 頭上を見るとそこには……


「スイカが……飛んでる……いや、違う。誰かが投げてるんだ……! まさか……!」


 後ろを振り向く。そこには、一つのスイカを持ち、プロ野球選手のようなフォームでスイカを片手で投げる人物。その横には大量のスイカが入ったケースが……!


「もどきっ……!! あたたたたっ……」


 頭上で散らばったスイカが顔面目掛けて落下する。粉々になってその破片が当たるだけだが、数が多すぎる上、かなり痛い。

 運の悪い時は目に染みる。


「隆さんたち、ごめんなさーい! それと、スイカさんたちもごめんなさい」


 笑顔で大声で謝り、手を思いっきり振る。

スイカを手に持ち、小さく一礼。今は緊急事態。スイカを武器にすることをお許しあれ、ぷらねっと神……!


「ほらね、なんとかなるって言っただろ」


 ビーチチェアに寝転がり、黒色のサングラスを掛けて頭上のクジラをさっきから見ているのは上条。サングラスを掛けているため、スイカの汁が目に染みることはない。

 まさか、上条は最初からこうなることがわかっていたのか?

 だからあんな余裕をかましていたのか? だったらなぜそれを僕に言わない。僕の反応を面白がったのか。だとしたらほんと趣味の悪いやつだ。


「いや、なんとかなるって言ったって――痛い痛い痛い痛い……!」


 スイカの破片が落下する中、もどきの攻撃でクジラは吠え始めたあと、開いていた口を閉じる。相当痛いのだろう。そこから少し浮き、落下速度が落ちていく。

 しかし、落下してくることには変わりはない。このまま陸にやつが落ちれば、副業は失敗する。

 どうすれば――


 すると、今度はクジラが跳ね始めた。次から次へと何が起こっているんだ?

 空中を何度も舞っているように跳ね始めるクジラ。その間ももどきのスイカの猛攻は続くが、それとは関係がないように見える。


「……ん?」


 目を細めると、何かが当たっているように見える。水? ものすごく細く、ものすごく速い。それに当たるたびにクジラは跳ねている。

 しかし、あまりの速さにどこからか。そして誰が撃っているのかがわからない。僕は後ろを振り返り、その人物を探した。


「あれは……美沙あああっ……!?」


 そこにいたのは、スナイパーのようなものを持った美沙だった。美沙は堤防(ていぼう)のところで腰を少し低くし、片目を閉じ、銃口を上に向け、射撃している。

 立ち撃ち。よく、海外の映画とかで見るあれだ。


 でも確か美沙といえば、前回の遊園地の時のゲームでものすごい高得点を出していた。こいつ、もしかして射撃の才能があるのか?


 というか、あれ本物のスナイパーじゃないよな。

 まさかとは思うけど……水鉄砲?

 いや待て。あれが仮に水鉄砲だとして、全長三十三点三メートル、体重は約二百トンもあるシロナガスクジラを吹き飛ばすことができるのか?

 でも、実際に吹き飛んでいるし。まあいいか。


 五秒に一発、確実に当てている。すると、どんどん離れていき、西側の旅館とは反対側の東側の森林近くの崖付近に飛んでいく。

 いや、まだ安心するのはまだ早い……!


 あそこはまだ、ビーチ内。あのままでは陸に到達してしまう。それだけは何とか避けねば……!


「しまった……! あっちは射撃範囲外……! ここからじゃ届かない……! シャルロットちゃん、そっちは……!?」


「こっちもスイカを切らしてしまいましたっ……!!」


「マジかよ……」


 よくわからないが、あいつらの会話を聞く限り、かなりピンチのようだ。あいつらのピンチは僕のピンチ。僕のピンチとは、僕の死。

 だからって僕が何かできるわけでもない。


「うわあああっ……! もう終わりだあああっ……!!」


 頭を抱え、叫び始める。

 すると、上条は妙な笑みを浮かべた。


「いいや、まだだよ。隆! あれをみろ!」


「あれって何だよ、もう! 変な気休めなら後にしてくれ――ん? ト、トランポリン?」


 上条の向いている方向にはトランポリンが運ばれていた。いろんな人たちが逃げる際に置いていった無数のトランポリン。それが、三メートル間隔で誰かが運んでいくつか置かれている。


「昇龍? あいつ何してるんだ?」


 息を切らしながらも必死でトランポリンを運ぶ。運ばれた数は全部で六個。一つ一つが食卓に並ぶテーブルのような大きさと重さでかなり重いため、息を切らしている。でも、あんなことをして何になるんだ?


「今だ、天空城!! 一発、派手に決めてこい……!!」


 昇龍の掛け声により、一人の人物が助走をつけて走り出す。トランポリンに飛び込み、それを踏み台に次のトランポリンに。それを何度も繰り返す。


「あれはひょっとして、天空城……!?」


 リズム良く飛び、次の場所へ移る。それを繰り返しているうちに、高さも異常なほど高くなる。最初は二メートルほどだったが、今ではもう、十メートル以上飛んでいる。

 そしてついに最後のトランポリン。

 力一杯両足で踏み込み、上空を舞う。

 その高さ、なんと約二十メートル。

 そして、右足に力を込める。

 全ての力を右足に込め、神経を研ぎ澄まし、クジラの腹部一点を狙う。

 クジラもその間に落下する。天空城はその時を待っていた。クジラと天空城を交差する交点。


「はあああああああっ……!!」


 そして、思いっきり右脚を振りかざしたっ……!!


 ドオオオオオオオンッ……!!!!


 ものすごい音がビーチ内……いや、この町中に響き渡る。それはただ、天空城の脚がクジラの腹部に当たっただけの音。ただそれだけのはずなのに、ものすごい音が鳴り響いた。空気中の大気も一瞬にしてクジラの腹部に集まる。

 そして――


 ボオオオオオオオンッ……!!


 クジラは海の彼方へと吹き飛ばされ、消えていった。その距離は軽く、百メートルは超えている。クジラが軽いのではない。天空城の脚が強力すぎたのだ。


 天空城はそのまま下に落下する。下はトランポリンでもなければ、海でもない。ただの砂。約二十メートルもの高さを落ちれば、ただじゃ済まない。

 そこへ、天空城の一番近くにいた昇龍が走り出した。


「よっとっ……!!」


 ガバッ……!!


 両腕で落下する天空城を受け止めた。あれはまさしく、お姫様抱っこ。天空城は敵を討ち取った強気姫。昇龍は姫を助けたナイト。天空城は少し、顔を赤らめる。


「ナイスファイトだったぜ、姫様……!」


「あ、ありがとう……!」



「「うおおおおおおっ……!!」


「やったああああ!」


「やりましたね!!」


 堤防へと避難した人々は笑顔で歓声をあげる。

 美沙はもどきのところへ走り出し、強く抱き合う。昇龍は天空城を降ろすと、天空城の方から昇龍に抱きついた。

 上条は僕のところへさわやかな笑顔で駆けつけ、抱きつ――


「くんな、お前はっ!」


「ぐはっ……」


 溝落ちにダイレクトパンチ。その場で上条は倒れた。こいつのせいでヒヤヒヤした。

 このくらいはしても文句ないよな、上条。


 にしても、あいつら四人すごいな。

 もどきはあの弾速。美沙は射撃能力。昇龍は体力。そして、天空城の脚の力。僕の友達は四人全員、すごいやつなんだなと改めて感心するのであった。

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