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友達なのかわからないんだが?

 しばらく母は固まっていた。何度も瞬きをしては、可憐の顔を見る。奥には白色のワゴンカー。挨拶をしてきたってことは、この子が運転手?

 いや、そんなことより今は――


「それでお母様、息子さんと娘さんは?」


「え? ……あ、ああ! まだ準備かかりそうで……! ご、ごめんなさいね……!」


 全くの(うわ)の空。驚きが隠さなかった。理解が追いつかなかった。


「いえいえ! そんな、気にしないでください! 朝ってなにかとバタバタしちゃいますものね。私自身、よくそういう時もありますので」


(大人だ……! あと、誰……!?)


 可憐の対応は非常に大人な対応。焦らせる様子もなく、落ち着いている。

 実際、可憐は管理局局長であるため、しっかりしている。そのため、バタバタすることなんて滅多にない。


 見た感じ、隆たちと同い年の十七歳には見えない。少し大人びていて免許を取っていてもおかしくはない。

 そこは問題ない。


(そして、誰……!? 私としてはそこが一番気になるのよ……!!)


 めちゃくちゃ美人だし、スタイルも若い頃の私といい勝負くらいにいいわ……! 言葉遣いも丁寧だし、礼儀正しい! だからこそ、尚更(なおさら)気になるのよ! この子が隆たちとどういう関係なのかが……!!


 とはいえ、隆たちはまだ降りてくる様子はない。ここは、母として何かしら対応を取らねば……!

 そう思い、母は可憐と会話をすることにした。


「えっと……紫さん? 失礼かもしれないけど、隆たちとはどういう関係かしら? お友達?」


 可憐は顎に手を当て、少し下を向いて考え始める。


(東條隆と東條シャルロットとの関係? 私たちって友達なのかしら?)


 数秒間考えた後、顔を上げて答えた。


「……はいっ! 友達です!」


(ぜってえ嘘だあ〜……!!)


 母はそれが可憐の嘘だと見抜いていた。友達なら友達でいいのだが、今の間は三秒ほどあった。本当の友達なら普通、わざわざ間を開ける必要などない。素直になぜ友達と言わなかったか。それはとても単純。

 可憐が隆たちの友達ではないからだ。


「ちょ、ちょっと待ってて〜。あはははは……」


「はい!」


 そう言い、勢いよく扉を閉める母。ドカドカと大きな足音を立てて歩いた先はリビング。母は椅子に座り、鋭い目つきで新聞を読む一人の男に声をかけた。


「武、大変よ」


「ああ、話は聞かせてもらったぜよ……」


 男は立ち上がり、母と一緒に扉へと向かった。そして、母は再び玄関の取手に手をかけ、玄関の扉を開ける。


「どうも! お母さん、お父さん! 加賀です!」


「赤城です」


((ふ、増えてる……!!))


 さっきまでいたのは可憐一人。それに加え、サングラスを頭にかけ、ヘソだしのTシャツを着て、その上には青色のジャケットを羽織り、ミニスカートを履いた加賀、白色の服の上に青色のオーバーオールを着た赤城が来た。

 二人は可憐がなかなか戻らないため、様子を見に来たのだ。加賀は敬礼をしてにっこり。赤城は少し恥ずかしそうに真顔を保っている。


 当然、可憐同様、東條夫妻とは面識なんてない。

 しかも、今度は隆たちより年下だと思われる人物。それも二人。これを驚きと言わずしてなんというのだろうか。


 そんな中、可憐たち三人は何か話していた。


「あなたたち、何で来たのよ」


「だって可憐が東條隆といちゃついてないか心配で〜」


「そんなわけないでしょ! ていうか、何よいちゃつくって!!」


「可憐、加賀」


「ご、ごほんっ! 失礼しました〜」


 わざとらしく咳払いをし、笑顔を作る。そのやりとりを聞き流すはずもなく、東條夫妻は聞いていた。


(え? 何、今のやりとり? いちゃつく? まさか……万に等しく、天文学的な確立の話ではあるけど、この可憐っていう子……隆の彼女っ!?)


 母は武に視線を送り、アイコンタクトをとる。


(いや、その可能性はないとは言い切れんぜよ……! 最近の隆、父親のわしから見てもかっこよく見える! 隆に彼女の一人や二人、三人や四人いてもおかしくなかろうに……!)


(そんときゃ、説教よ!)


 先程、話を切り出したのは加賀。だから加賀が何か知っている可能性、そして何か情報を漏らしてくれる可能性が高いと思い、ターゲットを可憐から加賀と赤城に変更した。


「えっと、君たち二人も……その……隆たちの友達?」


 赤城と加賀はお互いに顔を見合わせてから答えた。赤城は昇龍とはズッ友ではあるが、隆はというと友達というより、どちらかというとターゲットという認識ではあった。


「友達なのでしょうか、私たち」


「友達……友達か〜……ん〜……敵対はしてはいたけど……まあなんやかんやで色々あって……今は友達でいいのかな……いや、でもこういうのって友達って言っておいた方が丸く収まるって聞いたことあるし〜……う〜ん……はいっ! 友達です!!」


((あからさますぎるんだけどおおおおおおおっ……!!))


 心で言うならまだしも、明らかに口に出していた加賀。それも東條夫妻に聞こえる声で。今の瞬間、東條夫妻にわかったことが大きく分けて二つある。


 一つはあの二人、隆とシャルロットが何か隠していること。しかし、シャルロットは東條夫妻から日々手伝いなどを進んでしているため、信頼を得ている。何より素直だ。

 隆はというと、隠し事も多ければ、いつもだらだらしている。そのため、隆がまた何かやらかしてそれを隠していると思っていた。

 そしてもう一つは……


「ちょ、ちょ〜っと待っててね〜」


「はーい!」


 そう言い、母は再び玄関の扉を閉めた。


「あの子たちが隆の友達じゃないことはわかったわ。だとすると可能性として考えられるのは……!!」


 密かに話す東條夫妻。二人の考えていることは一致していた。


「あの三人全員が彼女か!!」


「セフレかよ!!」


 母の声はでかいものだった。玄関が厳重なため、外には聞こえはしなかったのが幸い。

 その瞬間、階段を降りてくる二つの足音。


「よかった〜。まさか、ベッドの隙間に落ちていたなんて」


「もう、隆さんったら。気をつけてくださいね」


 その声を聞いた瞬間、震え上がる母。母の背後には炎のようなものが出ているように見える。隆にはまだ見えていないが、母のその顔はまさしく般若(はんにゃ)。数々の人々を震え上がらせた顔が今、(よみがえ)る。


「ん? どうしたの、母さん?」


「とうううあかあああああしいいいいいいいっ!! てめえっ!! 女は一人にしろってガキの頃あんなに教えただろうがあああああああっ!!」


「え? な、何!? 何で怒ってるの!? た、助けてえええええええっ!!!!」


 隆には訳がわからなかった。なぜ母がこんなにも激昂しているのかが。ドシドシと階段を登り、隆の襟を掴んで引きずられながらそのままリビングへと連行された。勢いよくリビングの扉が閉まり、隆にとっての地獄の時間が始まる。


「隆もあんな男になるとはのお……ああ、さっきの子たちには隆は後で行くと伝えておいてくれ」


「?」


 それだけをシャルロットに言うと、そのまま、武もリビングへと入っていった。シャルロットにも訳がわからなかった。

 よくわからないまま、指示通りに荷物を持ち、外へ出る。荷物は自分の分と隆の分の二人分を持つ。


「皆さん、おはようございます。遅れてすみません」


「あ、おはよう」


「おはよう!」


「おはようございます」


 扉を開けた先にいた三人は挨拶をきっちりし、お互い爽快な朝を迎える。


「えっと……東條隆は?」


「隆さんは後で来るそうです。もうしばらく待てそうですか?」


「そうなの? ええ、大丈夫よ。さあ、乗ってちょうだい」


 そう言って可憐たちはシャルロットをワゴンカーへと案内した。ワゴンカーの大きさはかなり大きい。市バス並みとまではいかないが、それに匹敵するほどの大きさ。

 中に入ると席が十席。そこにはすでに何人かが集まっていた。


「おはよう、東條さん」


「皆さん!」


 ワゴンカーにはすでに昇龍、美沙、天空城が座っていた。

 昇龍の服装は白色の服。自分のスタイルよりも一段階大きいものを着て、それをファッションとして活かしている。ちなみに、下はジーパンだ。

 美沙は黄色のギンガムチェックのワンピース。これはシゲ爺の太鼓判も貰えた服でもある。

 天空城は黒色のネイビーワンピース。全身濃紺色ではあるが、スカートの長さやシンプルな服のデザインから清楚さを感じられる。彼女は風紀委員ということもあり、制服で来ようかとも悩んでいたが、今日は力を込めてこの服にしたそうだ。



「シャルロットちゃん! 私の隣来てー!」


 笑顔でブンブンと手を振る美沙。美沙の隣は今は空席。そこへシャルロットを呼び、隣同士座ることにした。


 現在のバスの座席は最前列の運転席、助手席と二つ。運転席には可憐が座り、隣の助手席は空席。

 二列目の席は二つ。この二つはすでに赤城と加賀が座っている。バスは管理局から出たため、自然的に後ろの二人はこの二人になるであろう。

 三列目の席も同じく二つ。この席には昇龍と天空城。この二人に関しては迎いに行った順である。

 そして四列目の席は四つ。一番右端に美沙が座り、たった今、その隣にシャルロットが座ることとなった。


 言わずともわかるが、あとは隆と上条だけ。


「東條はまだかよ」


「私もよくわかりませんが、お母様に引っ張られてリビングに連れていかれました。何事でしょうか」


「ほんと、何事だよそれ」


 こうして一同は隆が出てくるまで待つのであった。

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