目を覚ましたんだが?
肌色のカーテンがかかっており、どこか消毒液のような匂いが漂っていた。
僕は目をそっと開き、体を起こす。
「病……院……?」
この光景には前にも見覚えがあった。鉦蓄にやられた時も病院に運ばれ、今と同じ光景が写っている。本当に病院とは縁があるな。
「隆さん! よかった! 目を覚まして!」
すると、横にはもどきが椅子に座っていた。もどきは目を輝かしていた。その途端、こちらに飛びかかってくる。
「うわ! ちょ! うわあああ!!」
もどきは顔をすりすりして、僕の背後に手を回す。その目の輝きの正体は涙だった。
え!? もどきってこんないい匂いしたの!? それに柔らかいものが当たって……じゃ、じゃなくて!
「よかった……! 本当によかった……!」
「わかった! わかったから落ち着けって!」
するともどきはそっと離れ、再び椅子に座る。涙を拭、深呼吸をしだす。
「すみません……状況が状況でしたのでつい……」
「状況?」
「隆さん、服の中を見てください」
「服?」
服はいつのまにか病院服に着替えさせられていた。服をそっと脱ぐと、十二センチほどの大きなあざがあった。紫色になるほどひどく腫れており、前回の火傷の傷は小さくなったが、それが隠れるほどだった。
「な、なんだこれ……いっつ!」
手で軽く触れただけで物凄い痛みが走った。
「あ! 触らないでください! しばらくは痛みますが、安静にしていれば徐々に回復していくそうです」
「……そうか。それで、誰がここまで運んでくれたんだ?」
目を覚ましたらここにいた。僕が気絶していた間、何があったか聞くことにしよう。
「一昨日の金曜日の夜中、お母様が車で待っていていても隆さんたちがずっと来なかったため、様子を見に行ったところ、隆さんと上条さんが倒れているのを発見されたそうです」
一昨日の金曜日ということは、僕は2日もの間寝ていたということ。そういえば母さんはあの間、ずっと車で待っていたのか。悪いことをしてしまったな。それで僕と上条がその場で見つかったと。いや、そんなことよりも問題は上条だ。
「その上条はどこにいるんだよ」
「上条さんは……現在、特別施設で隔離されています」
「……は?」
隔離ってなんだよ……
あまりにも予想外の言葉がもどきの口から出たため、しばらく言葉の意味がわからなかった。
「お母様によりますと、傷はかなり酷かったのと、栄養不足というのもあったそうですが、なにより体内に摂取された謎の薬が原因だと言っていました。あの日から毎日のように奇声を発し、痛い痛いと悲鳴をあげています」
「謎の薬ってなんだよ――っ!? まさか、それもインベストのものだってのか!?」
「おそらくは。私もその薬はわかりません」
「くそっ……!」
僕は部屋の壁を思いっきり叩き、怒りをぶつける。ここで考えられるのは二つ。
一つは連中が上条に対して薬を摂取させたこと。あいつらなら後先のことを考えて十分に考えられることだろう。
もう一つは上条自ら摂取したこと。摂取せざる終えないくらい、状況が追い込まれていたのかもしれない。
どちらにせよ、起きてしまったことはどうしようもない。
「っ……!? そういえば、あの場に蘭壽はいなかったか?」
「蘭壽さんなら縛られて見つかりました。今は事情を聞くためにうちの地下室にいます」
蘭壽はあの晩、気絶し、上条に青色の縄のようなもので縛られていた。うちの地下室なんかに連れ出して大丈夫なのかよ。
「おい、それまずくないか」
「それが、あの縄自体が切ることもできずにいます。その上、あの縄自体に魔力を封じ込める力があります。ただ、蘭壽さんにそれが通じるかはわかりませんが」
「……」
上条のあの技は縄自体を切ることもできず、相手の魔力を封じさせることもできるのか。というかもう、普通に魔力という言葉が出てきてびっくりしている。
まるでこれではファンタジーだ。
蘭壽の能力は心を読む何かしらの能力。他の投資業界のトップとは違い、攻撃的な能力ではない。
だから蘭壽にその効果が発揮されるかはわからないというわけか。
僕らはアニメやゲームに出てきそうなくらいのものを見てしまったのだ。
「教えてください。あの晩、隆さんたちに何があったのですか?」
僕はその後、もどきに全て打ち明けた。上条が僕らをわざと遠ざけようとしたこと、蘭壽との戦闘。上条の想い。全てを話した。
「やはりですか。そうだとお母様も思っていらしたみたいなので、蘭壽さんをボコボコにしていました。まあ、そのあとはちゃんと治療してるみたいですが」
「サンドバッグかよ」
そりゃ、母さんの気持ちもわかる。息子とその友人がボコボコにされれば、殴りたくもなる。そのあと治療してる点、母さんは本当に性格が悪いな。
「でも誤解しないでくださいね。お母様は情報を聞き出すためにやってるだけで、ストレス発散のためにやってるわけではありませんから」
「お、おう……」
くれぐれも、蘭壽が上条にしてきたようにはならないでほしいが。だが今回ばかりは、上条のことも気になるし、その辺の情報を聞きたい。
――その時だった。病室の扉がガラリと開き、一人の腰まであるロングヘアーの紫髪リアル女が現れる。
そのリアル女はなぜかメイド服を着ていた。
目つきが悪い。だが、顔立ち、スタイルはいい方だった。
その女はこちらに向かって歩いてくる。すると、僕の足元付近でとまった。
「あなたが東條隆さんですね。あなたに聞きたいことがあります」
僕の名前を知っている? その上、聞きたいことってなんだよ。警察? いや、こんなメイド服の警察がどこにいる?




