それは許されないんだが?
翌日、僕は教室に入り、学校でいつも通り授業を行った。だが、そこには上条の姿はなかった。
1日も休まず、無遅刻無欠席だったあいつが休むなんて、やはり昨日のことが関係しているのだろうか。
そしてもう一つ。僕は机の中に入っている二つのものを手にした。僕が学校に来たときにこの二つ入っていた。この白くて丸いものとひび割れたスマホ。丸いのはわからないが、このスマホは明らかに上条のものだ。
チャイムが鳴る。授業が終わり、授業中不思議そうにしていた僕を見かねてか、もどきがこちらに近づいてきた。
「なあ、これなんだと思う? 朝来たら入ってたんだけど」
「それ、上条さんのですよね。昨日の帰る時までは机の中になかったということは、その間に入れたということでしょうか?」
その間ということは、夜間になる。夜中にわざわざ学校に入って僕の机に入れたのか?
「上条が? 自分の机間違えたんじゃないのか?」
「わざわざ夜中に忍び込んで自分の机に入れるようなことをしますか? きっと、隆さんに何かを伝えたくて入れたんだと思います」
「ガラクタやら壊れたスマホを入れるなんて悪戯なんじゃないの? 昨日、僕らをあんな目に合わせたんだから」
よくあるあれだ。友達と喧嘩をしたら、そのあとどうしていいかわからず、とりあえず悪戯をするアレだ。上条の性格ならあり得そうな話だ。
とはいえ、昨日のあいつはまるで別人だった。あれが本当のやつの顔なのかもしれん。
「それも含めて、今は隆さんが預かっていた方がいいと思います。これも何か意味があると思いますので」
「修理するのは?」
「それも、一様は上条さんの私物ですし……」
「それもそうだなあ〜」
スマホを修理すれば何かわかるかもしれないと思ったが、人のものを勝手に触るのも気がひけるしな。
あいつ、何がしたいんだよ。急にいなくなったと思えば、変なものが机の中に入ってるし。あーあ。ほんっと、わけわっかんねえよ。
そのあとは上条のことで頭が埋め尽くされ、ろくに授業を受けれず、全て聞き流した。そして気がついたら帰り道を歩いていて、気がついたら帰ってきていて、タカシアイランドにいて、天井を見て寝転がっていた。
「その玄橆って一体何やらかしたんだ?」
もどきなら何かを知っていると思い、勉強をしているもどきに声をかける。すると、もどきはシャープペンの動きを止め、こちら側を見る。
「そろそろ、隆さんにも話した方が良さそうですね。今なら落ち着いて話せます」
今は副業も来てないし、昨日みたいに布団にくるまってないからな。
「インベストには投資議会が行われる、リインタワーというものがあります。会議室はもちろんのこと、インベスト内全ての情報がデータ化されている、大きなシステムがあるんです」
「す、全て!?」
僕は驚きのあまり咄嗟に起き上がり、顔を上げた。つまり、リインタワーというところがそこがやつらの本拠地というわけか。そして、そこにはインベスト内全ての情報がデータ化されている。
それと似たようなやつで、噂には聞いたことがあるが、この世界にも世界のすべての情報が記憶されているものがあるとかないとか……
「はい。800台近くのサーバーにそのデータが残っているのです。そして、それを守るセキュリティや警備もかなり頑丈なものになっています」
「それと玄橆がなんの関係があるんだよ」
「壊したんです」
「へ?」
一瞬、驚きのあまり聞き流してしまった。こいつ、今なんて言ったんだ?こ、こ、こ……
「壊したんですよ。セキュリティや警備を掻い潜って800台近くあるサーバー全てを」
「いやいやいや! そりゃ、あいつが悪いよ! 何してんだよ、あの馬鹿!」
僕は立ち上がり、声を上げて驚いた。そんな、この世の全てみたいなものを壊せば、投資議会のやつらも怒るに決まってるだろ。
まさか、そこまで能無しだったのは。
「でも私は、無作為に壊したとも思えないんです。何か事情があって壊したんじゃないのかなと」
「だったらそれを投資業界トップのやつらに説明すればいいだろ」
「それが説明できないから壊したのかなと思います。それも言えなくて壊すしか……」
もどきは少し悲しそうに俯いて言った。予め投資議会に話し、撤去させる事情があれば言えばできる。だけど、それができないとなると、壊すしかなかった。そこら辺はなんとなくだが掴めてきた。
「ここまで来れば、私たちのすべきことが見えてきたんじゃないですか?」
「そうか!上条を探すこととスマホを修理すること!」
上条を探して全て吐いてもらう。なぜそんなことをしたのかを。
そして、スマホにはおそらくなんらかの手がかりが残っている。勝手に上条の私物を触るのは悪いと思っていたが、ここまで聞いてしまったら色んな意味で引き下がれない!
「はい! その意気ですよ、隆さん!」
もどきはガッツポーズをして、笑顔で励ましてくれた。やっと今、すべきことが見えてきた気がする。ありがとう、もどき。
「それで、なんでお前はそんなに詳しいんだ?」
こいつ孤児院育ちなのに、なぜか別次元のインベストのことについて詳しい。もしや、こいつも実はインベストからの刺客なのでは……
「私にもわからないのですが、こちらの世界に転送される時にインベストの記憶の一部をインプットされたみたいで、ある程度の事情は把握しているんです」
あー、ダメだ。頭がパンクしそう。
「一様聞くが、転送って?」
「隆さんも見ていたじゃないですか。ここの部屋に来ていた時ですよ」
「スー……」
僕は呆れた顔でわざとらしく息を吸い、物理的にもどきと距離を置いた。あれは違うだろ。どうせ、強力なフラッシュを僕に浴びさせ、その隙になんらかの方法で窓から侵入したに違いないのだから!
「あ! その顔は信じてませんね! むー!」
もどきは頬を膨らませ、ムッとした顔でこちらを見る。なんだよ、ほんと。
「ふんっ! これだからリアルはっ!」
「……」
もどきは腕を組み、そっぽを向いた。なんか、リアルとか言い出したぞ、こいつ。なんの真似だよ。
「って言ったら隆さんに似ているかな〜、と思ったのですが……って、あれ?」
無表情、又の名を真顔を貫く。
「僕、そんなこと言わないぞ」
「ええっ!? 言ってなかったですか!?」
「言ってない! 僕に対しての偏見が酷すぎる!」
「ええ!? じゃあこれはどうですか!? シャルロットたん好きすぎる! もう結婚したい! ちゅっちゅっちゅ!」
ものすごいジェスチャーをする。なんか、妙に手の動きや体の動きがリアルなんだが。
「まあそれは言わなくもな――って、最後のは絶対言わない! 拙者はそんな汚らしい男ではないでござるよ!」
「ええーっ!? じゃあじゃあ、これはどうですか!? シャルロットたん、ラブユーフォーエ――」
「もういい! なんか恥ずかしくなってきたからもうやめてえええええ!」
その後も僕の物真似……ではなく、しそうでしない行動ばかりを連呼し続けた。にしてもなんか元気だな。
もしかして、上条のことで頭がいっぱいな僕を、こいつはこいつなりに励まそうとしているのかもしれない。




