仕留めたと思ったんだが?
マジックジョーカーの攻撃は止むことはない。何度も杖で押して穴を開けては、引いて狙いを定めて再び穴を開ける。
いつのまにか、南館校舎一階は穴だらけになっていた。
「そうやって逃げても時間の問題だ――って、あれ? 消えた……」
斬賀には階段を上るところまでは見えていた。だが、そこからは中央階段に窓がないということもあり、見失っていた。
「くそっ……! ステルス機能か……! ジョーカー! あの階段を上からぶち壊せ!」
斬賀は中央階段を指差し、マジックジョーカーに指示を出した。
「ケッケッケッケ!」
ジョーカーは杖を上に上げ、思いっきり振り下ろした。五階まである校舎の中央階段を全て破壊し、登らさないようにするためでもあった。
そして、体力が減っている玄橆は今の攻撃で確実にやれると思っていた。
「いない……!」
そう、このとき玄橆は間一髪、三階の中央階段の左側に飛び込んでいた。
とはいえ、勢いをつけたあまり、全身に痛みが走っていた。
「はあ……あまりこの手は視力が悪くなるから使いたくなかったけど……」
斬賀は目を細め、視力を上げた。だが、目を細めることにより視力が下がることは明確。だからこそ、視力13.0ある目を下げる真似はあまりしたくなかった。だが、これで斬賀の視力は実質20.0になった。
「見えた……! ジョーカー! 三階の中央階段より左側、約四メートル先だ!」
「ケッケッケッケ!」
「なにっ……!?」
その瞬間、再び横から穴を開けた。その杖の先端が玄橆に直撃し、反対側の壁を貫いく。杖の先端からずり落ち、三階から地面に落下。大量の吐血をし、肺が少し潰れたような感覚が走った。
「っはっ!! たとえ、どれだけステルス機能が有能であろうが、僕の視力の前では全て無力だ!」
あのとき視力を上げたため、玄橆の後ろの壁がステルス機能により、少し揺らいでいたのを確認し、そこを狙ったというわけだ。
「げほっ……! げほっ……! げほっ……」
玄橆は動かずにいた。肺は少し潰れ、呼吸もまともにできず、内蔵はどこかが切れていた。
レーダーに表示されている数字は六十八パーセント。その希望のため、玄橆はポケットから注射のようなものを取り出した。
「降参すれば命だけは助けてあげるよ。だから早くこっち来なよ。このままだと君、ま〜じで死んじゃうよ〜」
注射の先端についているゴムを取り、輝く針を出す。中にはピンク色の液体が入っていた。それを腕に向かって思いっきり刺し、液体を体に注入した。
(これで十分間は動ける。だが、その後の代償は覚悟を決めるしか……)
そして、玄橆は立ち上がった。まるで、何事もなかったかのように傷も癒えていき、全身に力が漲る。
ポケットから銃を取り出し、ボタンを押した。すると、一瞬にして形が変形する。
「ま〜だ戦える気力あんのかよ。潰せ、ジョーカー!」
マジックジョーカーは思いっきり杖を持ち上げ、再び振りかざそうとしたそのときだった。
銃口がマジックジョーカーに向き、青色の光線と黄色の稲妻が混ざった弾が放たれた。
「ケッケッケ……」
「おい、ジョーカー! どうした! これでは僕まで動けないじゃないか! くそっ……!」
マジックジョーカーはバインドを受け、身動きが取れずにいた。
斬賀の出すマジックジョーカーは、非常に強力な化身ではある。だが、五感を全て共有しているという代償があり、その分、マジックジョーカーがダメージを受ければ、斬賀自身もダメージを受けるのだ。
(今だ! 行くなら今しかない!)
玄橆は再びボタンを押し、形を変形させる。そして、四階のいつもの教室目掛けて打ち放つ。
すると、青色の紐のようなものが教室の窓につき、玄橆は引き上げられるかのように登っていった。
教室に入ると、隆の机の中に玄橆自身のスマホを入れ、教室を出て走っていった。
(頼む。お前だけが頼りなんだ……)
その瞬間、マジックジョーカーの身動きが取れるようになり、思いっきり振りかざし、教室が真っ二つになった。隆の机には大きな瓦礫が降り注ぎ、机は潰れてしまった。
(く……! やっぱり、ダメだったか…… だが、ここで諦めるわけにはいかない……!)
「さあ、フィナーレといこうか! やれ!」
マジックジョーカーは帽子を取る。すると、その帽子から全長五メートルもある、四匹ものハトのような見た目をした鳥が現れ、玄橆目掛けて急降下していった。
「ポッポッポッポッ……!」
校舎を食い散らかして玄橆を探し出す。そしてその一匹が玄橆を見つけ、思いっきり口を開け、顔を近づけた。玄橆は身動きを取ろうとはしない。
――そのときだった。今度は大きな太長い機械を取り出し、それを鳥に向けた。ドンと青色の閃光が放たれ、鳥の体を貫通し、地面に落ちていった。
さらに残り三体を殲滅し、落ちていく。
「あの野郎……!! ジョーカー! 肉塊一つ、骨一本、血一滴残さず粉々にしろおおおおおお!!」
斬賀は激怒し、再びマジックジョーカーに指示を出す。マジックジョーカーは本気を出し、ついに三階に棒を刺し、スライドさせていった。
玄橆は太長い機械を消すと、走り出して北側へと移動する。移動のための廊下は見渡せる状態になっているため、そこから抜け出し、四階へ移動。その間も攻撃は止むことはなかったが、玄橆の足の速さには追い付かずにいた。さらにそこから体育館の屋根に登る。
そして、何かを察したのかその場で止まった。
「今度こそ終わりだ――」
「終わるのはてめえだよ、斬賀!!」
その瞬間、玄橆は股を広げ、右手を上に上げた。そして、それを斬賀を指すかのように下す。レーダーのパーセントゲージは百パーセントになっていたのだ。
「打ち抜け! サテライトレーザー!」
すると、遥か上空から青いものが輝き、それがだんだんと大きくなる。青色の直径八メートルほどの太い光。
しかもそれは明らかに斬賀を目掛けていた。
実は玄橆はもしものためを考え、予め人工衛星をハッキング。そして、数分前からレーダーにより、人工衛星に攻撃の指示を出していたというわけだ。
「な、なんだよ……そりゃ……う、うわあああああ!!」
バコオオオオオンと大きな音が響き渡る。斬賀は光に飲み込まれ、レーザーの放たれた場所には大きなヒビが入った。
マジックジョーカーと斬賀自信は大きく損傷した。斬賀はマジックジョーカーの痛覚も感じるため、かなりのダメージとなる。
そして、限界が来たのかマジックジョーカーは消えていった。
光が止むと、玄橆は下に降り、斬賀の近くにいた。そして、銃口を向ける。
「さすがは投資業界トップの一人。普通の人間なら骨すら残らないのに、ただ伸びてるなんてよっぽどタフじゃん」
「はっ……殺すならさっさと殺せよ……ただ、僕を殺せば他の投資業界トップが黙ってないぞ……」
「上等だ。これ以上僕の邪魔をする気なら、お前を殺すまで――」
グサッ。そんな音が聞こえると同時に、自分の腹部から物凄い痛みを感じ、下を見る。
腹部はナイフが突き出て、血に染まっていた。
「な……に……」
「いつまで経っても帰ってこないと思えば、何をしているんだ斬賀」
玄橆の後ろから声が聞こえた。
「全く……来るのが遅いんだよ…… 蘭壽……」
そこには、投資業界トップ3の男、蘭壽がいた。ナイフで後ろから玄橆を刺し、そのナイフを思いっきり引き抜いた。
「貴様……」
玄橆は膝をつき、その場で倒れた。息はあるが、今の彼には立ち上がることはできない。それは、刺されたのもそうだが、先程打った注射の反動もあり、身体中が激しい麻痺を起こしていた。
「さあて、帰りますか」
空間は元の世界に戻り、枯れた草木も元に戻った。先ほどの戦闘での崩れた瓦礫も一つもなくなり、普通の建物へと戻っていく。
そして蘭壽は不気味に笑い、瀕死の玄橆と斬賀を抱え、紫色の亜空間の中へと消えていった。




