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結婚ではありません

最近出番が少なめだったので、フェルミナさんとの日常回です。

 休日2日目の昼下がり。


 俺はフェルミナさんとエルシュタニアの街中を歩いていた。


 明日の旅立ちに備えて、必要なものを買い揃えるのだ。


 といっても衣類やランプなんかは持ってるので、今日買うものはノワールさんが大好きな『あれ』だけだ。


「アッシュくんがいないと寂しくなるね。何日くらいで帰ってくるの?」

「2週間はかかるかな」

「そっかぁ。おじいちゃんとゆっくりお話できるといいねっ!」


 魔王のことを話すと怖がらせてしまうかもしれないので、フェルミナさんには『じいちゃんに会いに行く』と説明したのだ。


「ノワちゃんも一緒に行くんだよね?」

「ノワールさんが一緒じゃないと、出かける意味がないからな」

「ふぅん。……ところで、ノワちゃんってアッシュくんのおじいちゃんと接点とかあるのかな?」

「接点っていうか……まあ、ちょっとノワールさんを紹介したいと思ってね」

「アッシュくん結婚するの!?」


 フェルミナさんはびっくりしているが、俺のほうがびっくりだ。


 あいかわらず話を飛躍させるのが上手いなぁ。


「深読みしすぎだよ。ほんとにただ紹介するだけだから」

「そ、そっかぁ。最近よくノワちゃんとイチャイチャしてるから、結婚するのかもって思っちゃったよ」


 いちゃついているつもりはなかったけど……傍目にはそういうふうに見られてたのか。


 さておき、フェルミナさんは結婚疑惑を解いてくれた。


 けど、ほかにも誤解しているひとたちがいる。



「アッシュさんが結婚!?」

「これは大ニュースだ!」

「街をあげてお祝いしないとな!」



 街のひとたちである。


 入学当初ならこんな騒ぎにはならなかっただろうけど、いまの俺は銅像が建つくらいの有名人だ。


 そんな俺が結婚すると知り、街は一瞬で祝福ムードに包まれた。


「な、なんかあたしのせいですごいことになっちゃったね……」


 瞬く間に噂が広まっていくのを見て、フェルミナさんがあわあわしている。


 確かにすごいことになってるな……。


 このまま噂が学院まで届けば、ノワールさんは間違いなくびっくりするだろう。


 けど、打つ手はある!


 俺は50メートルほどジャンプして、



「俺に結婚の予定はありませんから!!!!」



 叫んだ。


 もちろん街が壊れないように声の大きさはコントロールしている。


 原始的な方法だけど、魔法を使えない俺にはこんなやり方しかできないからな。



「アッシュさんは結婚しないって!」

「そっかぁ。まあ、いずれは結婚するだろう!」

「アッシュさんの結婚は時間の問題だな!」



 着地して耳を澄ますと……街のひとたちはひとまず誤解を解いてくれたようだった。


「す、すごい大声だね……」


 フェルミナさんは頭をふらふらさせていた。


「どこかで休む?」

「ちょっと耳鳴りがするくらいだし、平気だよっ。せっかくアッシュくんとお買い物ができるんだもん、休むなんてもったいないよっ!」

「そっか。なら、このまま買い物を続行だなっ」

「うんっ! それで、なにを買うの? ……というかいまさらだけど、ノワちゃんは一緒じゃなくてよかったのかな?」


 俺はうなずく。


「ノワールさんは地図を見るので忙しいって」


 フェルミナさんはくすっと笑う。


「ノワちゃんって意外と慎重なんだね。まあでも、確かに道に迷ったら困るもんね」


 実のところノワールさんが見ているのは道筋ではなく、地図上を動きまわる赤点だ。


 魔力を流してみたところ、強者の居場所を示す地図に20以上の赤点が表示されたのだ。


 つまり、この世界にはノワールさんより強い生物が20以上存在しているということになる。


『俺』『モーリスじいちゃん』『フィリップ学院長』『コロンさん』『キュールさん』『シャルムさん』『魔王×2』はわかるけど、残る赤点の正体は謎に包まれている。


 なかには魔物もいるだろうけど……赤点の魔法使いと話をすれば、ためになるアドバイスが聞けるかもしれないな。


「それで、なにを買うの?」


 フェルミナさんがあらためてたずねてきた。


「日持ちする携帯食料を買うよ。メロンパン味のね」


 もちろん、これはノワールさんのリクエストだ。


 メロンパン味の携帯食料なんてメロンパンしか思いつかなかったけど、フェルミナさんなら知っているかもしれない。


 そう思って、フェルミナさんを買い物に誘ったのである。


「フェルミナさんは、メロンパン味の携帯食料を扱ってる店とか知ってる?」

「もちろん知ってるよっ!」

「ほんとに!? 助かるよ!」


 ダメ元で聞いてみたんだけど、さすがフェルミナさんだ。


 そうしてフェルミナさんがおすすめする店でメロンパン味の食料を大量に買いこんだ俺は、明日の旅立ちに備えて早めに寝ることにしたのであった。

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