第90話「謎解き」
ナナとスー、そして少年は連れ立って部屋に戻って来た。
「他のみんなには会わないの?」
「後でいいでしょう。先にお話を聞かせてもらいます」
「分かった」
スーは少年に椅子に座るように勧め、ナナたちはをそれと向き合うようにベッドに腰掛ける。
「では、改めて自己紹介をしよう。俺は雷組のリーダー、バチバだ」
そう名乗る少年には、冒険者の風格があった。やはりその正体は間違いないのだろう。
「改めて、よろしく」
ナナは言った。
「よろしくね、バチバ」
スーも反応する。
「あ、ああ。――なあ、聞きたいんだが、俺が殺人を犯したことを咎めないのか?」
「私たちは冒険者組合の職員として、冒険者を支援する、それだけです。今回の場合は問題に見舞われたあなたを保護する、それだけに注力いたします」
スーは答える。
「そうか。そういうものか。では、ことの経緯を話そう」
バチバは一呼吸置くと、語り始める。
「俺は、組む相手が見つからず途方に暮れている少年を見つけた。まあ、歳が若いと侮られがちだ。だが、手合わせしてみると実力があるのが分かった。俺は可哀想に思って、そいつを臨時の仲間に加えた。実績を積めば、仲間も見つかるだろうと思ってな」
バチバは苦悩の表情を見せる。
「それが、間違いだった。俺は厄を招き入れた。奴の魔術によって雷組は壊滅させられた」
バチバは結末を端折るように手短に述べた。
「すみません、もう少し詳しくお願いします」
スーが言った。
「何について?」
「魔術によって、何が起こったのか、です」
「……分かった。俺はまず、予兆を感じた。死ぬと思った。そして俺は光に包まれ、一瞬後に吹き飛ばされるような感覚を味わった。あるいは遠くへ放り投げられるような。上手くいえないな。外側から見たら消滅だが、実際に体験するとごく単純に吹き飛ばされているんだ」
「あなたと少年が漠都で姿を消すのに使った魔術はどうでしたか?」
「同じような感覚だったな。吹き飛ばされていつの間にか元とは遠く離れた場所にいるんだ」
空間を飛ぶ。それも1つ、魔術の理想だろう。それが出来れば、ナナたちは長い旅をすることなど無かった。そんな理想をかの少年は実現していた、と見ることが出来るのではないだろうか。薄々勘づいてはいたことだが。
だが、まだ考えねばならないことがある。魔術の副作用、何故、若年化したのか。
「そっか。少し話は変わるけれどバチバは、この町に何日滞在している?」
「えっ?」
バチバは戸惑いつつも答える。その答えに今度はナナが戸惑うことになる。1日多い。バチバの移動時間を0としてもナナたちが古都から大都まで移動してきた日数と加えてここ数日の滞在期間を超過するのはおかしい。
「ナナ、分かったよ」
スーが言った。
「何が?」
「時空間だよ。時間と空間、その両方に干渉する魔術だ」




