表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナナの世界  作者: 桜田咲
第1章「天路歴程」
86/331

第86話「暇なし」

「……大都に真意を問う、ですか」


 副議長が呟いた。ナナたちは副議長の部屋に訪れ、ことの経緯を説明していた。


「悩ましいですね。私にはそれが正しい選択であるのかは分かりません。その選択の先に光があるのか見えてこないのです」


 副議長の返事はどうも煮え切らない。


「それでは静観でしょうか?」


 バンカが尋ねる。


「いえ、追及いたしましょう。互いの意思を明確にしてこそ、同盟は意味のあるものになるのです」

 

「かしこまりました」


「まあ、しかし今とるべき選択は休息でしょう。心身共に休めることが重要です」


 それが予知能力によるものなのか、それとも単に一般的な助言なのかは分からなかった。しかし、副議長の言葉に従いナナたちはそれぞれ、自身の部屋に戻った。


「さて、やることがないね」


 ナナは言った。何も解決していないのに暇を持て余している。どうにももどかしい。


「ナナ、焦っちゃ駄目だよ。落ち着いて」


「……うん」


 ナナはベッドに腰掛ける。スーはその正面に立ってナナの頭をポンポンと叩いた。今は精一杯、気を抜こう。矛盾しているようだけれどそれが大事だ。


「長かった任務ももう、折り返し地点に差し掛かっているんだよ」


 その通りだ。目的地まで到着したのだから、後は用を終えて引き返すだけだ。その用が素直に終わるとも思えないけれども。


「アラカ、ダン、そしてバンカとも浅からぬ縁を築いてこれた」


「うん」


 ナナは頷く。


「実は私、この旅を結構楽しんでる」


「ボクも」


 ポツリ、ポツリと会話を交わしながら、ゆっくりと時間は過ぎていく。しかし、いつだってそうした時間は永遠には続かない。


 けたたましい音が流れた。何かの警告音、大都の防衛装置であろうか。ナナとスーは扉を飛び出すと、音の発生源へ向かう。その音は城壁の方から聞こえてきていた。


 ナナたちが駆けつけると人々が集まっていた。


「何が起こっているんですか?」


 ナナは側の人に尋ねる。


「何かが壁を登って来ているんやと。それで、防衛装置が作動した。警告音は聞いたやろう」


 何かに向けて警告がなされている。


「これは不法な侵入です。今すぐ壁から離れて下さい。繰り返します。これは――」


 ナナは違和感を覚える。


「指示に従わない場合は強制的に排除いたします」


「人なんですか?」


 言葉が通じる相手でなければ呼びかけなんて意味がない。しかし、人が壁を登っているという状況も想像出来ない。


「分からん。そういう規則やから警告しとるだけや。ほんま何が起こっておるんや」


 ――本当、何が起こっていりるんだ。





 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ