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ナナの世界  作者: 桜田咲
第1章「天路歴程」
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第81話「交流」

「お久しぶりです。とは言え、そんなに日数は経っていませんが」


 司書官が現れた。


「ええ、お久しぶりです。お早い到着ですね」


 副議長が言う。


「そうですね。途中で追い越してしまったようです」


「揃ったみたいやなあ。皆さん、集まってくれて、おおきに。これから議長の所へ案内したいと思います」


「ようやくお会いできるのですか。議長は大分、ご多忙のようですね」


 司書官が言った。


「すんません」


「いえ、別に構いませんが」


 ヨドゥヤに案内されて、建物の2階に向かった。そして、廊下の突き当たりの部屋に向かうと扉をノックする。


 扉が開かれる。目に隈の出来た男が出てきた。だが、体格は良く、不思議と健康そうに見えた。


「お初お目にかかります。議長のハシバです。よろしくお願いしますわ」


 快活な声だった。


「ええ、よろしくお願いします」


 まず、副議長が握手を交わす。続いて、司書官、そして最後にサガミが握手を交わした。


 そして、ハシバは早々に部屋に戻っていった。余程、忙しいのだろう。


「さて、そろそろ昼時やな」


 ナナたちは再び、1階に戻ると別の部屋に案内される。そして促されるままに席に座った。そして、食事が運ばれてくる。少し忙しなさを感じる。


「お口に合うか分かりませんけど」


 ヨドゥヤが言った。ナナたちは食事を始める。ナナには少し薄味に感じたが、風味が豊かで手の込んだ料理であることが分かる。


 ナナは食べ物を口に運びながら密かに周囲を見渡す。細長いテーブルの向かい側には大都陣営が、斜め向かいには新都陣営が座っている。横は古都陣営だった。


 ナナは斜め向かいに座るサガミの方を見て、視線が一瞬止まる。サガミは先程まで身につけていた羽織を脱いで、椅子に掛けていた。その為、下に身につけていた衣服の紋様が露わになっている。

 

 胸元の小さな刺繍であった。しかし、見逃す訳にはいかない。ナナはつい最近、その紋様を見たことがある。英雄、あの少年の衣服にも似たような紋様があった。棘と渦巻きを組み合わせたパターンである。ナナはスーに目線を向ける。スーも気が付いたようだ。更に、バンカも。


 食事を終えて、ヨドゥヤが二言、三言述べて去って行った。そして各々が解散していく。ナナは迷う。このままサガミを行かせてしまってもいいものだろうか。護衛である自分がサガミに気軽に話しかけるのは少々問題がある。しかし、サガミは1つの手掛かりになるかもしれない。


「足止めをお願いします」


 その時、バンカがナナに耳打ちをする。バンカは先程気が付いたことを副議長に報告しているようだ。ナナは意を決してサガミに話しかける。


「執権補佐様、少しお伺いしたいことがあるのですが」

 

「貴様、軽々しくサガミ様に話しかけるとは無礼だぞ」


 お付きの者が素早く反応する。


「他所の町の者に対してそう居丈高に接するものじゃありません」


「しかし……」


「何をお聞きになりたいのでしょう?」


 ナナはサガミを観察する。悪い人間には見えない。また、実直そうな振る舞いが偽りであったとしてもこの場で騒ぎは起こせないだろう。ならば、ここでなるべく情報を引き出すのが得策。

 

「単刀直入にお伺い致します。衣服の紋様についてです」


 ナナは敢えて踏み込んで質問する。それからサガミの表情を見る。動揺は見られない。平然としている。


「ああ、成程。食事中にご覧になったのですか。南方で見るようなデザインじゃありませんから疑問に思うのは当然です」


「このような者の質問に答える必要はありません」


「いえ、どのみち同盟締結の交渉段階で説明せねばならなかったことでしょう」


 サガミは羽織を捲ると紋様を見せる。


「これは()()デザインです」


 

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