第79話「副議長と副議長」
歓迎の言葉を述べたのは、恐らくその場で1番偉い人物である筈だ。しかし、言葉遣いは気さく、粗雑と言っても良かった。それを傲慢と読み取ればいいのか、親密さの表現と読み取ればいいのかナナには分からない。
「すまん、自己紹介が先やったな」
歓迎の言葉を述べた人物は呟く。
「うちは、副議長のヨドゥヤと申します」
副議長、つまり大都の都議会の副議長ということだろう。南都の副議長とは全く異なる雰囲気を感じる。まず若い。壮年の女性で、精力的な印象を受ける。しかし、糸のような目からは何を考えているかは分からず、底が読めないという点では南都の副議長と共通している。
「私は、南都都議会の副議長フヒトと申します」
副議長は答えると、ヨドゥヤに近づき、手を差し伸べた。
「よろしくお願い致します」
「ええ、よろしゅうお願いします」
2人の副議長は固く握手を交わした。
「しかし、思ったより遅い到着でしたなあ」
「どういうことでしょう?」
「既にラクヨウさんとカバネクラさんは到着されとります」
「そうですか」
古都ラクヨウの司書官は、ナナたちを見送った後に出立した筈だ。それで、もう大都コーサカに到着しているとは、随分早い。自分たちが遅かったとは思わない。早すぎるのだ。
「まあ、立ち話はほどほどに、中に案内しましょう。馬車は馬小屋に運ばせときます」
ナナ達は虹色の建物の中に案内される。ナナは、その時、嫌な感覚を覚える。
「中はピカピカしとらんから安心しといてやー」
ヨドゥヤは言う。その言葉の通り、中は至って普通の建物のようだった。天井は高く、立派ない建物であったが何か異質さを感じさせるものはなかった。
「ラクヨウさんとカバネクラさんは今、何しとう?」
ヨドゥヤは、建物内で待機していた人物に話しかける。
「古都ラクヨウの皆様は、町中を視察したいとのことでしたので案内しております。新都カバネクラの皆様は、兵士たちと交流試合中です」
「どっちが勝ってるん?」
「新都カバネクラの皆様が圧倒しています。兵士たちと一騎討ちをしているのですが、100人抜きも近いです。あ、今、100人抜きを達成いたしました。汗1つかいていません」
まるで、目の前で見えているように話す。ナナは身につけているものに注意を払った。受信機や発信機と思われるものは無かった。どうやって情報伝達しているんだ?
「おおきに。後ほど、全員で顔合わせしたいから呼んできて」
ヨドゥヤは命令すると、ナナたちの方に振り返った。
「もしかしたら、奇妙に思われとります?」
ヨドゥヤはナナの心を読んだように言った。
「簡単に言えば、ネットワーク生物の活用です」
それはさり気ない発言だった。ナナは一瞬それが重大発言だと気付けない。そして、ようやく脳が理解する。虹色の建物、その色合いは以前、見たことがある。キノコ、ネットワーク生物。災害である。そんなものを利用したということだろうか。大都、その驚異をナナはまざまざと感じ取っていた。
※繰り返しますが、方言は現実とは異なります




