第66話「御伽の国の殺人事件3」
「探偵旅団は謎の収集を目的とする、『旅人』と事件の解決を目的とする『英雄』2人によって率いられる団体だ。他にもメンバーはいるが重要ではないので2人だけ呼んだ」
スーは考えを巡らせる。何から聞けばいい。取り敢えず、英雄の方は敵対する気は無さそうである。
「少年、何をやっている」
アラカが戸惑っているように尋ねる。
「今の僕は、英雄の相棒、探偵旅団の仲間だよ」
「何で、こんな茶番をやっているんだ」
アラカは尚も尋ねる。
「茶番では無い。先代によって書かれた命の宿った脚本だ」
「少年、何を考えているんだ。悩み事があるのなら話してくれ。俺が全力で応える」
アラカは心中を素直に吐露した。
「……この子に仲間になってくれって頼まれたから、それに応えることにしたんだ。僕はずっと仲間を探していたからさ」
「ああ、そうか、少年は旅の仲間を探していたな」
アラカはそれ以上、何も言わなかった。
「また、お会いしましたね」
続いて、バンカが口を開く。
「ああ、漠都で会ったね」
英雄は平然と返事をする。英雄、魔術師バンカと同格にやり合ったことを思えばその役割は決して大それたものではないだろう。
「気が合うね。僕たちが同類だからかな。僕と力が拮抗する人なんて初めて見たよ」
「拮抗? 今、ここで続きを致しましょうか」
バンカは好戦的に対応する。
「いや、いい。今は正しい仲間が見つけられた気がするから。彼が突然、尋ねて来てビビッと来たんだ。昔出会ったことがあるような懐かしさを感じる程の親しみ。これは運命だと思ったね」
「そうですか」
バンカはそれ以上、何も述べなかった。漠都で事件を引き起こした少年を敵と断ずること無く、少なくともこの場では受け入れている。
「それで、犯人の心当たりはあるんですか?」
「さっぱりだ。そこの脚本家に説明されて、脚本に巻き込まれたことを知ったくらいだし」
「では、脚本なんて関係ないのではないですか」
「少なくとも、犯人は意図している。旅人と英雄が邂逅したのを見て、事件を起こしたと考えられる」
脚本家が言った。
「一体、何を根拠にそんなことを――」
「脚本に命が宿ったからだ」
スーは脚本家見習いが大事そうに本を抱え込んでいるの気付く。脚本家がその本を受け取る。
「『探偵旅団』を呼んである。その、シリーズの脚本を」
脚本家がページを開いた。その瞬間、そこに人が現れた。ボサっとした髪型の猫背の男だ。
「紹介しよう。彼が『探偵旅団』だ」
スーは驚きを隠せない。
「さて、謎解きをしてもらうとしよう」




