表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナナの世界  作者: 桜田咲
第1章「天路歴程」
64/331

第64話「御伽の国の殺人事件1」

 食事会を終えて、ナナたちは宿に戻ってきた。皆、それぞれの部屋に戻っていく。或いは戻っていく振りを。


 ナナが窓から、外を見ていると、まず、少年がどこかへ行くのを見かけた。少し、遅れてアラカがその後をつけて行くのが見える。ナナとスーがいる2階の部屋からは挙動不審な動きがよく見えた。


「……スー、やっぱり動きがあったよ」


 漠都でも少年はどこかへ行っていた。今回も何らかの行動を起こす可能性があるとナナは推測していた。


「行ってくる」


 スーが靴を差し出した。ナナはそれを受け取る。


「気をつけてね」


「うん」


 ナナは窓から身を乗り出すと、身軽に飛び降りた。スーは待機だ。わざわざ2人で追跡する必要はない。ナナは背後に気を配る。これで更に自分も追跡されていたら洒落にならない。


 ナナはアラカと十分、距離をとると追跡する。その先にいる少年は、何か、匂いを嗅ぎ分けているような足取りで、歩いて行く。時々、迷う様子はあるものの、何か明確な目的地があるようだった。


 仄かに明るい食堂や酒場がある通りを折れて、少年は路地裏へと入って行く。これでは、今の距離感だと追跡がし辛くなる。ナナは意を決すると、アラカに近づいた。


「アラカ、何をしているの?」


「うわっ。ナナこそこんなところで何をしているんだ」


 アラカは少年が入って行った路地裏をチラチラ見ている。


「冗談だよ。早く追おう」


 アラカは瞬時に状況を把握したようで、頷くと路地裏へとそろそろと近づいて行く。ナナは自身とアラカに対して〈シズカ〉の魔術を行使する。後を追って行くと、少年は一軒の建物へと入っていった。


「出て来るのを待つしかないな」


「そうだね」


 ナナは、建物へと近づいて行く。


「おい、どういうつもりだ?」


「他の出入り口がないか確認しないと」


 ナナは素早く、建物の周囲を確認する。扉は正面の一箇所だけだった。追跡に勘付かれない限り、素直に扉から出てくるだろう。ナナとアラカは扉が見える位置に隠れて待つ。


「アラカは何で少年の後を追っていたの?」


「ああ、何だか様子がおかしかったからなぁ。心配だったんだ」


「優しいんだね」


「……人々を守ることが俺の使命だからだ。ナナの方こそ、何で後をつけて来た?」


「偶然、アラカがどこかへ行こうとしているのを見かけたから気になって」


「そうか」


 囁き声で会話しながら、ナナとアラカは建物に気を配る。その時、どこからか口笛が聞こえて来た。ナナは周囲に気を配る。音の発生源は見つからない。それなのに、いつの間にか、正面に人影が現れていた。


「……バンカ?」


 人影は棍棒のようなものを振り上げた。そしてナナ目がけて振り下ろされる。ナナは一瞬、回避が遅れる。ナナは頭を強かに殴打された。そしてそのまま横転する。


「ナナ!」


 動揺するアラカに人影が追撃するのが見えた。そしてナナは気を失った。



 



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ