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ナナの世界  作者: 桜田咲
第3章「ラーマーヤナ」
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第318話「星に願いを、空に光を」

 スプリングフィールドが立ち去ってすぐ、ナナ達も操縦室へと向かった。サキマも顔はまだ青ざめているが、大人しく付いて来ている。操縦室に到着する。部屋の中を覗くと、てんやわんやな様子が見て取れる。ギリギリの判断が続いているようだ。


「大丈夫なのでしょうか?」


 サキマは不安そうに呟く。


「ええ、信じましょう。邪魔をしても悪いですし、部屋の外でスプリングフィールドを待っていましょう」


 シックスは答えると近くの席に腰掛ける。サキマは尚も不安が残っているようだが口を噤み、着席する。言葉にならなかったというより、敢えて沈黙したようだ。冷静さを取り戻そうとしているのが見て取れた。目下のところ事態は安定しているようだ。決して、良くは無かったが。


 ナナも一息つく。何だか、疲れた。自分でどうにか出来ない状況というのは疲れるものだ。力があれば。例えば、最強の魔術師バンカのように。……どうやら、本格的に疲れているようだ。何という発想をしているのだろう。バンカのように、だなんて思うなんて。勿論、ここでいうバンカのように、というのは単に力があればということなのだけれども。でも、仲間を、スーを殺した人のように、力を欲するなんて間違っている。それならば、門番のように、と願う方が健全だ。


「ナナ?」


 シックスが心配するように見てくる。


「ああ、大丈夫――」


 ナナは舌を噛みそうになる。機体が大きく傾いた。そして、一瞬、黒い影が窓を通り過ぎていく。そして、そのすぐ後に、水に巨大な物体が打ち付けられる音がした。ナナは慌てて、海面を見る。予想通りである。危機は排除された。黒々とした影は、墜落した飛行機械の破片などを巻き込み、徐々に海中へと飲み込まれていった。


 スプリングフィールドと貨物室の乗員達が駆け寄ってくる。


「大丈夫でしたか?」


「はい、私達は無事です」


 シックスは外を眺めながら答える。


「そうか。我らの祈りが通じたようで何よりだ」


 スプリングフィールドは、操縦室へと入っていき、会話をする。現状の確認と指示を行っているようだった。そして、機体の高度は徐々に上昇していく。疎らだった編隊が段々と形を取り戻していく。編隊には幾つもの穴が開いていた。しかし、彼らは誰1人前進することを辞めていないようだった。光に導かれるように彼らは進み続けていく。


 ナナは先程の風景を思い返す。沈んでいく黒影、そして側に浮かぶ人影。よく見えた訳では無かった。だが、ナナは人影を見た気がしていた。もっと言うと、門番がいたような気がしていた。容姿なんて認識できていない。だが、ただ何となくそう思っていた。

 編隊を荒らした、あの巨大な捻じれ、あれを門番が()()()()のか。驚きは無い。その程度の力はあるだろうと思っていた。まあ、全部、想像なのだけれども。だが、出鱈目であるとも思っていない。


 澄み渡った空を機械の鳥たちは飛んでいく。


 

 

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