第305話「これまでのあらすじ」
物語はいつ始まるのでしょうか。██が生まれた時でしょうか。それとも、████で[データ削除済み]が起こり、████が眠りについた時でしょうか。それとも███が████にて、ペガサスと██を持ち帰った時でしょうか。或いは、神聖狼馬帝国で[データ削除済み]計画が生まれた時であるかもしれません。又は、冒険者組合が[データ削除済み]。若しくは大都コーサカで[データ削除済み]が発見された時でしょうか。
人類の歴史はきっと楽園の”追放”から始まりました。ならば、私もこの物語の端緒を”追放”から語ろうと思います。それは、取るに足らないことであったかもしれません。しかし、確かに物語はここから始まりました。
――冒険者組合エージェント、ナナは謂われなく仲間から追放される新米冒険者の話を聞いた。仲間を何よりも大事にするナナは静かに怒りを覚えた。そして、真実を詳らかにすべく、調査を開始する。ナナが17歳になって間もなくのことであった。そして、ナナは自己中心的な冒険者達と対峙、仲間を大事に出来ない者共を始末し任務を終える。
続いて、ナナはスーと共に、愛の園に纏わる事件に挑む。その背後に潜むネットワーク生物を退治し、事件は解決する。しかし、騒動を大きくしてしまった失態により、冒険者組合は都議会からの依頼を受けざるを得なくなる。
こうしてナナとスーは軍のダン、アラカと共に、六都同盟締結の為に、大都コーサカへと赴く副議長の護衛の任務に従事することになった。だが、副議長には南都最強の魔術師バンカが帯同していたのだった。
記憶喪失の少年や人工生物兵器の”空”、漠都トトッリの”核”発掘などの問題にぶつかりながらもナナ達は大都を目指し、旅を続けていく。しかし、その裏には怪しげな少年の姿があった。そして古都ラクヨウにて、ナナは襲撃され、一時は昏睡状態に陥ってしまう。幸い、ナナは恢復するものの、保護していた記憶喪失の少年を件の怪しげな少年”英雄”に連れ去られてしまう。
それでもナナ達は大都を目指した。しかし、大都で待ち受けていたのは大いなる陰謀だった。町の平和を守りたいヨドゥヤと天下統一を望むハシバ、大都の内部分裂は”天使”と呼ばれる外患を呼び込む。そして、紆余曲折の末に大都は”北”の手に落ちた。旅の目的であった六都同盟は頓挫する。
しかし、その裏では漠都の王を主導するとする五都同盟が締結されていた。世界は確実に移ろっていく。何とか南都に帰還したナナとスーは、英雄と和解を果たし、”北”を支配する神聖狼馬帝国へと交渉に向かう。そして、ナナ達は第二皇女との接触を果たした。しかし、戦争は既に始まっていた。五都同盟による攻撃は、確実に帝国に被害を与えていく。ナナ達はそれでも、皇女の口添えにより、帝国の意思決定を担う委員会の委員長との面会をこぎつけた。
そして、ナナ達は和平交渉の機会を得る。交渉の場は新都カバネクラ。ナナ達は新都を目指す。しかし、ナナ達の望みは無下にされる。新都は”天使”に襲撃された。更に悲劇は極まる。何の前触れもなく、スーが落馬により死亡する。ナナは絶望する。深い絶望は、ナナの周辺の時間を停止させる。それは、自身の意思でも操ることのできないナナの秘められた能力だった。
――ナナは、何もかも捨てて航海に出る。そこで、ナナは新たな出会いをする。冒険者組合エージェントのシックス、火桜の民、境界監視団。目まぐるしく変化する状況の中で、ナナはシックスとの交友を深めていく。
導かれるままに、東の大陸に辿り着いたナナを襲ったのは、新たな陰謀と災害だった。魔女狩りの思惑、町を破壊しながら成長していく巨大樹、”門番”の少年。ナナは、門番の能力によって、異世界へと送られる。そこで、ナナは”神”に出会い、シックスがかつて為したことを知る。シックスはかつて、スーを蘇生するために、世界を再構築したのだった。それが、ナナが生きる世界であり、門番に送られた世界はシックスに再構築される前の世界であった。
しかし、”この”世界においてもスーは死んだ。ナナは罪悪感を抱きながらも、シックスを始めとする人々と共に旅を続けていく。辿り着いた町、ブラックガウンでもやはり騒動に巻き込まれるが、無事問題は解決し、遂にナナはシックスと共に南都に帰還する機会を得たのだった。
だが、その裏で人が、歴史が大きく動き始めていた。西の大陸より、北の大地を目指す、カラザ朝の船団。東の大陸より進行する軍と魔女狩りの共同部隊。今なお燻る六都市の人々の意思。現状も不明な神聖狼帝国の思惑。更には人知を超えた神の存在。
……既に、多くの物語が語られてきました。或いは、多くの物語が語られずに来ました。ふと思うのです。きっと、「誰か」の「何か」の物語は「今ここ」から始まっていくのだと。だから、私はまだ見ぬ物語を模索し続けるのです。




