第22話「平穏無事」
ナナたち一行は順調に進行していた。何事もなく、ということではない。いろいろあったが皆の活躍によって滞りなく進めているという意味で順調であった。
まず、鳥が襲ってきた。スーが〈火矢〉で射落とした。次に馬鹿でかい化け物が襲ってきた。ダンが投げ飛ばした。そして意外に厄介なネズミの大群は音で追い払う。ナナの魔術〈ミミナリ〉、音を出して小動物追い払う時などに使う。不意落ちで襲われた時もアラカがスラリと剣を構えて、対応する。
「はは、やはり優秀だな、スー、ナナ」
「ダンさんとアラカさんも流石、強いですね」
スーが返答する。
「皆さん、格好いいです」
少年が言った。
「さて、そろそろ日が暮れるな」
ダンは、声を張り上げると御者に止まるように伝えた。
「さて、夕飯だ。ナナ、火を起こしてくれ」
「分かりました」
ナナは〈ヒダネ〉を用いると素早く火を起こす。
「おお、随分早いな」
「ええ、熱源を一極集中させ、高温にしているんです」
曖昧な範囲を温めるより、一点を高温にすることで効率を良くしていた。ナナの精密なコントロールの賜物である。
「へー、そんなことが出来るのか」
そんなことを話しているとアラカがスパイスや干し肉を持って来て料理を作っていく。やがていい匂いが立ち込めてくるとスープが完成していた。
「……美味しそうですね」
いつの間にか馬車から降りてきていたのか、副議長が言った。そばでは御者が控えている。
「あ、ありがとうございます」
アラカは驚きながらも礼を述べる。
「頂きましょうか」
「ああ、そうですね」
ダンは副議長の命令を受けるとすぐさま碗にスープを持って行った。アラカも慌ててそれに追従する。
「私は見張りをしているね」
スーが言った。
「ああ、そうだな。――今後、そういう当番も決めていくとしよう」
「ボクがスーの分をとっておくね」
「ナナ、ありがとう」
スーは、返事をしながら周囲に気を配っている。
そして、食事を終えると今度はナナが見張りについた。次にダン、そのまた次にアラカという順番で一定時間ごとに交代で見張りをすることに決まった。
ナナは辺りを見渡す。小高い丘で周囲には丈の高い草原が広がっている。その先には生い茂る森林の輪郭が見えた。実に混沌とした世界である。馬車が通行出来ないところも多いからそれらを迂回しながら進むとかなりの遠路になる。ナナは空を見た。星空、しかし、感傷に浸る暇は無かった。
「何だ、あれは?」
ナナはもう一度見る。実に奇妙な光景だった。空が落ちてきている。
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