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ナナの世界  作者: 桜田咲
第1章「天路歴程」
198/331

第198話「直交」

「取り敢えず、南都ナーラに戻ろう。ここからは転移が出来るんだよね?」


 朽ち果てた町で沈黙を破るようにスーが言った。


「うん。でもちょっと数が多い。単純に吹き飛ばすなら可能だけれど、狙った所へ飛ばすとなると数が多いと難しい」


 エイユーがスーの提案に追従するように答える。


「そう。――皇女様はこれから、どうなされますか? ご助力には感謝しております。安全な場所までお送りいたしましょう」


「ああ、そうですわね。私はもう用無しでした。私はどうしたらよろしいのでしょう」


「そのような意で申し上げたのではございません。皇女様は私たちに期待してくださったでしょう。その期待には応えたいと思っております」


「そうね。お2人なら、何か現状を変えられるのではないかと思いました」


「ええ。ですから皇女様の希望を仰ってください」


「私は、行く末を最後まで見届けることとするわ」


「分かりました。それでは私とエイユーだけ南都ナーラに戻ることにしましょう。ナナ達は新都カバネクラを目指して。――ことはなるべく迅速に進めなければいけない」


「分かった」


 ナナは端的にそう答える。


「よろしく」


 スーとエイユーは姿を消した。


「では、ボク達は新都カバネクラに向かいましょう」


「そうね」


 ナナ達は馬車に戻る。馬車を引くペガサスは飛び上がり、進んでいく。


「あれは、何かしら?」


 皇女が窓の外を指さした。


「いや、知っているかもしれないわ。直接見たことは無かったけれども。あれもお遣いね。人型ではないようだけれど。随分と平べったくて、そして大きい」


 ナナはそれまでに2度、それに遭遇している。1度目は脅威として、2度目はドゥーの使役する生き物として。ナナ達が空と呼んだ人工生物だった。そして、それは馬車の進行方向と直行するように接近してくる。それを回避するように馬車は急旋回する。


 空は、尚、馬車に接近してくる。


「ドゥー、そこにいるの」


 ナナは叫んだ。返事は返ってこない。――直接には。耳飾りから、声が聞こえる。


「まさか、馬車の中か?」


「ドゥー、ボクは馬車の中にいる。これ以上接近してこないで」


 ナナは、また叫んだ。


「厄介なことになったな。まさか、事実だったとは」


 一体、何の話をしているのだろうか。


「悪いが、馬車はここで堕とさなければならない」


 空が、馬車の側面に衝突した。馬車が崩壊する。ナナ達は真っ逆さまに落下する。刹那に思考が駆け巡る。さて、どうしようか。どうしようもない。


 ナナは地面に落下した。




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