第19話「追放2」
「お前は追放だ」
「何故、何故、僕が追放されなければならない?」
「ふざけるな、お前のせいで仲間全員が危険に晒された。お前は後衛だった筈だ。それなのに前に突出してきて仲間を攻撃に巻き込んだ」
「間違えは誰にでもあるだろう。頑張っているんだから許してくれよ」
「お前は何を言っている? 間違い? お前が助言を聞かず独善的な行動を取ったのだろう」
男は激昂する。
「酷い、酷い。こんなのあんまりだ。努力する者が虐げられるなんてあんまりだ」
男は怒りを越して、恐怖を覚える。話が全く通じない。
「……お前は誰かと組んで行動するのは向いていないんだろう。能力は高いんだからソロでやっていけばいい。物資は分けてやるから出て行ってくれ。幸い町もそう遠くない」
男は宥めるように行った。
「ああ、理不尽だ。僕は強いのに。それを理解できない無能に追放されるなんて」
「いや、お前の強さは理解している。だから勧誘したんだ。だが集団行動には向いていないのだろうから、出ていってくれと言っているんだ」
男は少しムッとしながらも尚も宥めるように言った。こいつはヤバい。男は後方で待機する仲間たちを見る。仲間の命を守る為にもこいつは穏便に追放しなければならない。
出来れば、こんな選択はとりたくなかった。追放がどれだけ残酷な行為かは理解している。けれどもリーダーとして皆を守る為には仕方なかった。
これまで何とか帰還するまで堪えようと思っていたがついにこいつのせいで怪我人が出た。幸い軽傷で済んだが、今後もそうとは限らない。
「なあ、お願いだ。取り分もこの場で渡す。だから、出ていってくれ」
「ああ、この世界は間違っている。この僕を認めないなんて」
男は不意に汗がどっと流れる。今すぐだ。今すぐ逃げないと死ぬ。
「逃げろ」
男は声を張り上げる。その瞬間、眩い光が発生した。男もそしてそばにいた仲間たちも光に飲まれる。そして跡形もなく消滅した。ただ、1人を除いて。
「ああ、良かった。僕を追放するなんて間違った奴は最初からいなかったんだね」
「何処かに正しい仲間がいないかな?」
声の主はあてもなく歩き始める。
「まあ、歩いていれば誰かに会えるかな」
声の主は鼻歌を歌い始めた。いい天気だった。
――冒険者組合連絡。『雷組』のメンバーが帰還予定日を大幅に超過しても帰還しなかった為、死亡扱いとして対処します。遺族への報告をお願いします。『雷組』のメンバーは組合に遺書を委託していましたので必ず遺族に直接渡して下さい。
尚、最近、冒険者の一団の全滅が増加していますのでリスク管理を徹底するように周知してください。




