表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナナの世界  作者: 桜田咲
第1章「天路歴程」
18/331

第18話「はじまり」

 冒険者組合に戻ってくるや否や、ナナはスーを抱きしめた。


「無事で良かった」


「ナナは心配しすぎるだよ」


 ナナはスーを殊更に強く抱きしめる。


「ちょっと、ナナ?」


「やっぱり、いい匂い」


 スーは少し顔を赤らめたが何も言わず、ナナの頭を撫でた。ナナは束の間の安息を堪能する。


「……心配させてごめんね」


 スーはポツリと呟いた。


「ボクの方こそ守れなくてごめん」


 スーがふふっと笑い声を漏らした。ナナもつられて笑い出してしまう。ナナはなんだか愉快な気持ちになった。


「組合長のところに行かなくちゃ」


「そうだね」


 ナナとスーは組合長の部屋に向かった。


「まずは労いの言葉を述べさせてもらう。ご苦労だった」


 ナナとスーが部屋に入ると、組合長は開口一番にそう言った。


「お前たちのはたらきによって南都ナーラの平穏は保たれた。しかし、些か目立ち過ぎたな」


「申し訳ございません」


「いえ、ナナは悪くありません。私の注意不足のせいです」


「まあ、過ぎたことは仕方ない。……お前たちには長期任務を与える」


「長期任務ですか?」


 ナナは尋ねる。


「ある要人の護衛任務、都議会からの依頼だ。奴ら冒険者組合から人員を差し出せと言ってきた。タイミングを図ったようにな。つい先程、手紙で依頼が来たばかりだ」


「何故?」


 都議会は軍隊を有する筈だ。わざわざ、冒険者組合に護衛を依頼する理由がない。


「牽制だろうな。冒険者組合を従わせたという実績が欲しいだけだろう。本来はこんな依頼、断るのだが、今回の失態がある。――ナナ、おそらく誘導されたな。どこからかは分からないが、全て都議会の筋書き通りだったという訳だ」


 ナナは俯く。


「とは言え、こうした事情を抜きにすれば、重要な任務であることには変わりはない。スーとナナには引き続きペアで任務に当たってもらいたい」


「分かりました」


 ナナは答える。


「任務の詳細を教えて下さい」


 スーが言った。


「ああ、今回の任務では、()()()()、その締結のために大都コーサカまで赴く使者を護衛してもらう。この任務は都議会軍との合同任務になる」


「つまり、ボクたちは壁役ってことですか?」


「ああ、こちらが強く出れないことをいいことに体よく万が一のセーフティーネットとして活用しようとしているのだろう。だからこそお前たちを派遣する。――お前たちは、冒険者組合エージェントだ。そのことを忘れるな」


「分かりました」


「具体的な出発日時はまた、連絡があるそうだ。それまで英気を養ってくれ」


 ナナとスーは部屋を後にした。


「少しは休めるといいね。なかなか、休む暇がないから」


 スーが笑った。


「本当」


 ナナは相槌を打つ。


「私日差しに弱いんだけど、どうしよう。今回も少し日焼けしているんだよ。まあ、ネットワーク生物はその辺、案外、結構気をつかってくれていたみたいだけど。ナナ、守ってくれる?」


「……それは無理かも」


「ふふ、冗談。帽子被って肌をなるべく出さないようにすれば平気だから」


「良かった」


 ナナは胸を撫で下ろす。


「でも、それ以外からは守ってね。私もナナを守るから」


「もちろん」

 

 ナナは返事をした。いつだって不安を消すことは出来ない。それでも新たな旅のはじまりが上手くいくことをナナは願った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ