第160話「許し」
「馬鹿にしないでよ。仲間を殺した奴を許せる訳ないでしょう」
「ええ、私もそう思います」
スーはライラの言葉に同意する。スーは何を考えているのだろうか。発言に一貫性が無いように思われる。
「仲間を殺されて、許せるものなどいない、そうですね」
「え、ええ」
虚を疲れたようにライラは頷く。
「俺は生涯、こいつを許せないだろう」
バチバが呟いた。
「……実の所、私個人は復讐に協力をしてもいいと思っているのです」
「はあ?」
「でも、今は手段がない。だからこれは義理です。バチバさん。少年はこうして生きている、この事をお伝えしなければと思いました」
「今は、か。ありがとう、スー。だが、何故許せなんて言ったんだ」
「……手続き上、必要な事です」
「よく分からないが、まあいい。帰らせてくれないか。手出しも出来ないのに敵の側にいたく無い」
バチバとライラは、目隠しをされると、冒険者組合の職員の1人に連れて行かれた。
「どうやら、あなたは許されないようですね」
スーは少年に語り掛ける。小年は俯いていて、表情がよく読み取れない。だが、スーの語り口からして今の会話が重要だったことは分かる。
「そうみたいだね。何であんなに怒っていたのだろう。僕は神のお遣いなのに。でも、それならば罪を償わないといけないのかな」
僕は、悪く無いとは言わない。少年もきっと成長しているのだ。作られた生命であっても。まあ、少年の人となりを知っている訳では無いけれども。
「もう1度聞きます。私達に協力してくれませんか」
「分かった。協力する。仲間になる」
「スー、どう言うこと?」
ナナは耳打ちする。
「少年は許されない事を望んでいるみたいだったから」
許されるよりも許されないことの方がいい。そう言うことは確かにあるかもしれない。
「復讐に協力したいのは本当?」
「分からない。バチバに共感するように言っただけだから」
分からないか。確かに心の内は自分のものであっても分かり難い。それでいて他者の心がスッと理解できることがある。
「仲間か。利用出来るものは使用するべきか」
組合長が呟く。
「スーがここまで破天荒だとは思わなかったが」
同感である。そしてスーにはナナの知らない一面がまだまだあることだろう。ナナは何だか、寂しくなる。
「スー」
「何、ナナ?」
「何でもない」
ナナはそう答えるとスーはナナの頭を撫でた。
「ところで、1つ言いたいのだけれども」
少年が口を開く。
「僕、人を殺したことなんて無いよ」
「は?」




