第155話「答え合わせ」
「どう言うことですか。説明して下さい」
ナナ達は南都ナーラに帰って来た。久しぶりの帰還だが、安堵感は全然無かった。副議長が拐われた。護衛を掻い潜って誘拐とは手練れの仕業だ。と言うより、身内のしでかしたことであった。
そして、バンカ、ダン、アラカも続いて、捕らえられた。護衛対象を人質にされている為、大人しく従うより無い。一方、同じく護衛を努めて来たナナとスーは特に拘束も無い。
ナナ達は馬車に乗って南都へと戻って来た。これまで乗って来た馬車だ。わざわざ取り戻すとは大した労力である。それでサカイ村の村人達はどうなったのか聞きたい所だったけれど、答えてくれなかった。イチチ、ナナよりも若い少年はきっと組合長からの命令がが無ければ答えることもない。
「何を説明すればよい?」
ナナは組合長の言葉に萎縮しそうになる。
「一体、何が起こっているのかをです」
スーが言った。
「そうだな。では、まず町の現状を。現在、町は冒険者組合が統治している。冒険者組合は民衆の支持を受けている為、政権交代は速やかに行われた」
組合長は淡々と語る。
「……冒険者組合が民衆の代弁者となったのですか?」
スーは尋ねる。
「それは危うい考えだな。そうだな、代弁者を気取らぬように気を付けよう」
「戦争の選択をとったのは誰ですか?」
スーは尚も尋ねる。
「民衆だ。いや、これは狡い言い方だな。五都同盟を受け入れたのは冒険者組合だ」
ナナは溜息をつく。何とも裏で色々、起こっているものだ。
「何で、誰も彼も戦争をしたがるんですか。馬鹿みたいじゃ無いですか。戦争なんて、ただ滅びへと向かっていくだけですよ」
思わず溢れ出てしまった言葉なのだろう。スーはハッとしたような表情を浮かべて口を押さえる。
「そうだな。誰が本当に戦争をしたいなんて思ったのだろうな。だが犯人探しをしても仕方のないことだ。大した慰めにはならないかもしれないが計画は上手く進んでいる」
ウマとトレシュとドゥーが北の拠点を破壊していっているらしい。姉妹は分からないが、ドゥーは北へ南へと大概大忙しなものだ。
「とは言え、北が何を考えているのか、その像を掴むことも大事だ。敵を知り、己を知ることが大事だからな」
面白みのある言葉では無いが、やはり金言だろう。ナナは小さく頷く。
「来い」
ナナとスーは地下牢へと案内される。
「お遣いを捕まえてある。話を聞いてみるといい」
組合長は言った。確かに、北の意志を知るためにはこの上無い手段である。




