第149話「ラッキーアイテム」
村人達が円形になって座っていた。夜空の下、皆が沈黙して円の中心を見つめている。人間の頭部ほどの巨大な宝玉が光り輝いている。波打つようにその色は常に揺れ動いている。ナナ達は座っている村人を横切って中央へと連行されていく。
「……すみません」
誰かが囁いた。村人の誰か。それは自分達に向けたものだろうか。ナナは思う。以前、村に訪れようとした時に援助してくれた村人、或いはその仲間、彼らの内の誰かが発した言葉だろうか。或いは全然、面識の無い人物で、現状に違和感を覚えている者が憐れんで述べた言葉かもしれない。
現状、村をまとめ上げているのだろう。昼間、ナナ達を捕らえた時にも副議長の問いに答えていた人物が宝玉の側に立っている。側にもう1人、いや2人携えている。
「これが我々の未来だ」
側にいる1人は赤子を抱いていた。宝玉の揺らめく光は赤子を照らす。赤子は緑色の肌をしていた。森林の色だ。そして、笹の葉のような耳を持っている。
瞳は大きく、どのような生物の赤子もそうであるように可愛らしかった。
「この姿を見るのだ。森の寵愛を受けているのが分かるだろう」
村ではある日、突然緑色の肌の子供が生まれたのだろう。村社会における異物。それが排除されなかったのは何人か同じような姿の赤子が生まれたからだろうか。そして、その赤子達は村人達が信じるものと結び付けられた。ナナは脳裏でそんな想像図を描く。
「さて、ダイシンリン様のお力をお借りしよう」
ナナは耳元に耳障りな音が響き、顔を顰める。一体、何をしたというのだろうか。だが、推測を立てる余裕は無かった。副議長、アラカ、ダン、バチバ、4人が力を失ったようになる。未だ、蔓に拘束されているので倒れはしないが気を失っているようだった。
「ダイシンリン様に感謝を――」
村人は言いかけてやめる。
「何故、平気でいられる」
ナナとスーは未だ、顔を顰めていた。耳障りな音が聞こえ続けている、耳飾りから。
ナナもスーも質問には答えられなかった。こちらだって答えは分からない。耳飾りがダイシンリン様とやらの力を防いでいるのかもしれないと予想を立てるくらいだった。力を耳飾りが仲介する事で、ナナとスーは直接攻撃を受けずに済んでいるという所だろうか。攻撃と言っていいのかは分からないけれども。
「更なるお力をお引き出しするしかないか」
雑音が更に酷くなる。だが、所詮は音だ。段々と慣れてくる。円で囲っている皆も動揺しているようだった。事態は膠着していた。




