表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナナの世界  作者: 桜田咲
第1章「天路歴程」
142/331

第142話「ふるさと」

「一体、何を話し合っているんだろうな」


 ダンが言った。


 翌朝、食事を済ますと副議長とハッサクは2人だけで話し合いを始めた。護衛も部屋から締め出して完全に2人きりでの話し合いである。ナナたちは部屋から離れ、待機していた。勿論、山都の者たちも部屋から離れている。


 盗聴することも出来るが、副議長もハッサクも勘が鋭い。ここで危険を冒すべきでは無いとナナは判断した。


「今後の動きについてだろうな。なるべく早く行動する必要がある」


 アラカが答える。


 ヨドゥヤはおそらく暫くは均衡状態が続くと読んでいたと思う。使者を解放して、北と大都の繋がりを各都市に伝えさせることで、それぞれの都市の動きを抑圧する意図があったのだろう。


 だから、既に五都市が共同関係にあるのは予想外なことであるだろう。ならばその利点を活かして速攻で攻めるしか無い。とは言え、すぐに動けるのは山都陣営だけだ。こちらは南都まで戻る必要がある。いや、もしかしたら南都も既に動いているのか。情報の隔絶があるのがもどかしい。


「詮索しても詮

 バンカが言った。


「まあ、そうだろうが」


 ダンは答える。そして場が静かになってしまった。副議長とハッサクの話し合いはまだ続いているようだ。皆、押し黙ったまま時間が経過していく。


 それなりに時間が経った後に、スダチがやって来た。隣りにはバチバを連れている。バチバは、スダチに山都を案内してもらっていた。


「どうだった?」


 アラカが尋ねた。


「みかん畑がいい眺めでした。斜面に木々が連なっていて。のどかで戦いが――。いえ、失言でした」


 ナナは何となく続きの言葉が何か分かった。戦いが差し迫っているようには思えない。そんな所だろう。


「ユキノコの卵も見ました。交代で四六時中監視していて孵化しそうになったら()を呼ぶそうです。刷り込みをするんですね」


 バチバは一見、楽しそうに語っている。本当に楽しんでいればいいなとナナは思った。


「そう言えば、ユキノコは卵も雪のように白いんです。単に白いのではなく青みがかった透き通るような白なんです」


「楽しんでくれて良かった。俺の自慢の故郷なんだ」


 スダチが嬉しそうに言った。


「あんたらも来ればよかったのに」


「すまない。そう言う気分にはなれなくてな」


 ダンが答えた。


「そうか、仕方が無いな。また機会があればその時は俺が案内してやる。う、あ、じいちゃん」


 スダチの言葉に反応して部屋の方を見てみると、副議長とハッサクが部屋から出てきていた。


「さて、帰りましょう」


 副議長は言った。


「おお、またの」


 ハッサクが言う。


「今すぐでしょうか?」


 バンカが尋ねた。


「ええ、早急に帰還いたしましょう」


 



 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ