表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナナの世界  作者: 桜田咲
第1章「天路歴程」
120/331

第120話「君がいない朝」

 目を覚ました。立ち上がると伸びをする。そして、視線を感じて牢屋の外を見やると、沢山の目がじっとこちらを見ていた。相変わらず、ナナたちは監視されている。


「おはよう、ナナ」


 ナナが床を見下ろすとスーと目があった。スーは毛布に包まり床に寝そべっている。


「おはよう、スー」


 ナナは挨拶を返した。


「おはようございます」


 バンカだ。バンカは壁際に立って直立している。いつからそうしているのだろうか。もしかしたら寝ていないのかもしれない。昨晩も毛布こそ受け取っていたが、ナナたちが寝る段階になっても姿勢良く壁にもたれ掛かっていた。


「……おはようございます」


 ナナは挨拶を返す。スーも同様にバンカと挨拶を交わした。


 ハッサクは、ユキタに背中を預けて座ったまま寝ている。ユキタも寝ていたが、熟睡している訳ではないようだった。鼻をひくつかせて周囲に注意をやっているのが分かる。主人に付き添って一緒に寝ている様は微笑ましかった。ハッサクとユキタは強い絆で結ばれているのだろうと思う。


 誰かの足音が近づいて来た。その途端、ハッサクが目を覚ます。ユキタも同様だ。それはヨドゥヤだった。ヨドゥヤは憔悴し切っていた。


「……解放いたします」


 ヨドゥヤは一言そう言った。


「そうか、そうかそれは何より」


 ハッサクが言った。


「あんたら、いつまでも閉じ込めてもしゃーないしな。お遣いが連れ去られて、北との交渉も出来へんようになったし」


 ヨドゥヤは力無く語る。お遣い1人の有無で大きく状況が変わるものだ。


「諸々、水に流して、これでしまいにせーへん? うちも水に流す」


「それがよろしいでしょう。同盟を今後、存続させていきます為にも今回の1件は全て、精算すべきでしょう」


 バンカが言う。やや強い語気だ。確かに攻め時ではあるかもしれない。多少、整合性が取れていなくてもここでひと段落つけられれば、今後取れる選択肢を増やすことが出来るだろう。


「せやな。今回はほんますんまへん」


「こちらこそ、意に添えず申し訳ありません」


 ハッサクはヨドゥヤとバンカの会話を黙って聞いていた。何か口出しをするかと思っていたが、口を開く気配は無かった。


「イヨさんも巻き込んでしもうて、申し訳ありまへん」


「……儂がこの場で言うべきことは何も無い」


 ハッサクは一言、そう言った。


「そうですか。いや、そら、そうですね。巻き込まれただけなんやから」


 どちらかと言うと、積極的に巻き込まれにきていたがそれは言わなくてもいいだろう。この場がまとまるならそれでいい。どうせ、この先は荒れることになるのだから。

読んでくれてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ