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ナナの世界  作者: 桜田咲
第1章「天路歴程」
115/331

第115話「天網恢々」

「ヤバいってどういうことでしょうか?」


 バンカが尋ねた。


「うん、ジタバタしてもしゃーないな。一から説明するわ」


 ヨドゥヤは焦った表情から一転、冷静な面持ちになると言った。


「まず、ネットワーク生物は、様々な光を発することが出来る。見える光に、()()()()光。それらの光を発することで他と同調して繋がることが出来るんや。光っていない時は、周囲との繋がりが弱いか、孤立している時や。ネットワークを張り巡らしている最中に目立ったらあかんからな」


 ナナたちは黙って聞いている。


「ネットワーク生物は、ネットワークを張り巡すという生存戦略をとっている。ネットワーク、己を拡大して、分離して、光による複雑な網を作る。この張り巡らされた光こそがネットワーク生物の本質言うてもいい。分かるか? うちは正直よう分からん。正確な原理は学者に聞いてや」


「――重要なんは、光を制御することでネットワーク生物を操れるっていうことや。そんでもって光、見えない光っていうのはようはうちらの脳みそ働かせているもんや」


「つまり、どういうことだ?」


 ハッサクが無遠慮に聞く。


「つまり大都において、ネットワーク生物とはハシバのことなんや。ハシバの脳とネットワークは同期しとる。そしてハシバは中継となるネットワーク生物の本体、虹色の建物あるやろ、あれを通じて()()を支配しとる。端末っていうのはつまり都民全員と、本体から分離した、()()ネットワーク生物や」


「こんがらがるな。それがどうヤバいっていう話に繋がるんだ?」


「ハシバとネットワーク生物の繋がりが切れてしまったんやないかと思ってな。いや、敢えて切ったのかもしれん」


「つまり、暴走ということでしょうか?」


 バンカが尋ねる。


「半分はな」


「半分、ですか?」


「勿体ぶって、ほんとすまんな。でも、結論だけ言うても伝わらんと思ったんや。ネットワーク生物は今や第二のハシバや。完全に暴走することはない。せやけど、ハシバのオリジナルからも独立しとる。この状態を何て言うたらいいんかな? あー、自動防衛システムが作動しとるって言えばいいんかな?」


 ヨドゥヤは少し言い淀んだ。


「うちが結局言いたいんは軍師が襲われたんは雑談のせいやないかってことだ。――漠都が大都に勝つって言ったんやろ。それで漠都には敵対意志があると判断されたんやと思う。だから、ネットワーク生物は軍師を排除しようとした」


「雑談でか?」


 ハッサクが突っ込む。


「第二のハシバいうても人やない。そういうところは融通が利かん。律儀に杓子定規に判断する」


「だから半分、暴走ですか」


「せや、本当にヤバいことになった」


 ただの推測だと思いたかった。だがその時、扉がノックされた。ノックは激しくなる。


「……逃げましょう」


 バンカが言った。

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