プロローグ〔1〕
※題名のイメージと違って、決してラブコメじゃありませんのでご注意を。
シリアス、でもほのぼの。作風はそんな感じです。
冷静に、冷静に。冷静になって考えてみよう。
かれこれ一分間くらい、僕はそう自分に言い聞かせながらも、固まった状態で動けずにいた。
いつも通りの朝なはずだった。
いつも通りの僕の部屋で、いつも通りに目を覚ました。そこまではよかったはずだ。
どうして僕がここまで狼狽して固まらないといけなかったのか。
それは今、この状況。
隣で寝息を立てる、いつの間に僕のベットにはいったのか――あどけない寝顔の彼女。
上半身だけ起こした状態の僕の腰に、両腕でしがみついたような恰好で、彼女はすやすやと眠っている。
思わず僕が身じろぎすると、彼女はわずかに意識を取り戻したようだった。
「ん……お兄ちゃん……?」
彼女は眠たそうに薄く目を開け、片手で目をこする。
彼女は僕をお兄ちゃんなんて呼んだけれど、本来、僕に妹なんかいない。それどころか、僕は一人っ子なのだ。
新しい家族が来るとは聞いていた。昨日、ちらっと会って挨拶だってした。
だけどその時、中学一年生になったばかりだと、聞いたのに。
「おはよぉ」
すこし掠れたハスキーボイス。
気だるげな動作で体を起こした彼女は、この前までランドセルをからっていただなんて信じられないほどに、大人びていて。
夏だからといっても露出の多すぎるキャミソール一枚の無防備な姿に、目のやり場に困ってしまう。
最近の子は、こんなに発育がいいのか。なんてまるで変態じみたことを考えている自分を信じたくない。
僕ももう大学二年。僕は今まで普通に生きてきたわけで、断じてロリコンじゃないし、変態でもない。
だけど彼女との同居生活――前途多難だ。




