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幽世のリリン  作者: R09(あるク)
第三章 蝿の王編

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第192話 “濃霧”の正体

第192話


「あいつ……やりやがった──!!」

 この光景にさすがのロキも驚きを見せた。


 無敵と信じていた“666の獣”に一矢報いっしむくいたのだ。

 蠅の王……ロキが単なるルシファーの腰巾着と思っていたベールゼバブに……。


 ロキのすぐ傍で、ふっと、濃霧が8の字形に渦を巻き、それが『ふしぎの国のアリス』のアリスを形どっていく。


「あら。ロキさまにしては珍しく、アテが外れたのね。アタシもびっくり」


 その左側からも同じような渦が起こり、白雪姫が具現化する。


「獣といえど、意識の破片だけでは、その力は相当に劣化するのかもしれないわね」


 その後も次々と、シンデレラ、いばらのねむり姫、人魚姫らが具現化されていく。


 青い肌をしたロキの周囲に現れた、おとぎ話のヒロインたち。

 これを見てバラキエルは「今、濃霧が人の形へと具現化したように見えたが……」と思わず声を漏らした。ラミエルが答える。


「バカね。具現化したように“見えた”んじゃなく、ロキは()()()()()()のよ」

「この濃霧から……そんなバカな……」

「いいえ。私はベールゼバブさまから、こんな話を聞いたことがあるわ」

「なんだ」

「──この霧に見えるものは、実は“生命のスープ”だと……」

「い、“生命のスープ”……!?」

「そうよ」


 ここまで巨大な力を持つ者たちが相手だと、さすがの200の堕天使の二体であるラミエルやバラキエルも手をこまねいているしかない。小学生のような幼い少女の姿をしたラミエルは歯ぎしりして悔しがりながら、バラキエルへと続ける。


「なぜ、我々、幽世かくりよの者が現世うつしよに姿を表すのに、この濃霧が必要なのか。それは、この霧そのものが“生命いのち”を生み出す神秘を帯びているからにすぎない」

「つまりは、生命いのちの母、そのもの……」

「そう。だから、平行世界の人間ども……『ゴースト』も、この生命のスープに包まれている間は、体を保っていられるのだわ」

「『ゴースト』が濃霧の中でしか活動できない理由はそれか……」


 ラミエルは「あくまで、ベールゼバブさまから聞いた話だけどね!」と付け加える。


「ロキは何らかの方法で、その“生命のスープ”を操れるのだわ。それで、あんなふざけた幻獣げんじゅうの生命を作って従えた」

幻獣げんじゅう……」

「あの、人間の()()()()()()()()のことよ!」


 バラキエルはラミエルから、ロキとアリスたちへと視線を移した。


「はっ! いたずら好きとは聞いていたけど、本当、ロキらしいわ。あんな姿のやつらに襲わせて、人間たちを惑わしてるのよ」

「なるほど。可憐かれんな女性の姿ではあるが、その正体は幻獣げんじゅうたぐいか……。人間程度では、心乱されるのも当たり前というわけだ」

「あの姿で、人間たちを騙して殺害して回ってるのね。ああ見えて、おそらくあの一体一体が、私たちと同等の力を持つ……そう考えて間違いないわね。まったく忌々しいったら、ありゃしない」

水城市みずきし……『受胎』の地……。その『受胎』の地に“生命のスープ”……」

「つまりは、“濃霧”とは羊水のごときもの」

「要はロキのやつがやりたいのは……」

「破壊の受胎!」


 ラミエルは言い切った。


「あの“666の獣”を産み落とすこと……つまりは今、ここで、ロキは獣を覚醒させたがっているに決まってるわ! あなたも知ってるでしょ。北欧神話で世界終末を招く戦いを起こす鍵となる神、それがロキ」

「つまり、敵対する者……。獣を覚醒前に倒す……その意志を持った我々やサタンさま、ルシファーさま、そしてベールゼバブさまへの宣戦布告と認定して良いだろうな」

「そして、ベールゼバブさまは、有言実行で、獣のあの意識の断片の右腕を壊した」


 北藤翔太ほくとうしょうたの影の姿をしたソレは、ゆらゆらしながら、まだ失った右腕の肘から先を見つめている。


「そのお力には、さすがのロキも面食らったはずよ」


 ※   ※    ※


 ベールゼバブは一旦、宙空へと場所を移した。

 そして自身を覆い尽くす蝿の群れを一度、頭上へと返す。

 攻撃に成功したからといって、油断はできない。

 きっと何らかの反撃が……?


(濃霧がさらに濃さを増してきたな……)


 ベールゼバブは周囲を素早く見渡した。


(そしてそれは、あの獣がこの生命のスープを取り込んで覚醒する、危険度が増すことを意味する)


 急がなければ……気づけばベールゼババブの心に焦燥感のようなものが浮かび始めていた。


(この濃霧の《受胎》の地への定着……ロキの仕業と見て間違いない……まったく、面倒なことをしてくれたものだ……!!)


 ※   ※    ※


 そこでバラキエルはハッとしてラミエルを見た。


「ちょっと待て……もしかしてこの“生命のスープ”ってやつは……?」


 その言葉にラミエルは眉間にしわを寄せる。


「……私もその可能性は考えていた……」

「つまり、この“生命のスープ”っていうのは……」

 突如そこに、バラキエルのものでもラミエルのものでもない声が割り込んできた。

()()()()()()()()()


 ――アリスだ! 『ふしぎの国のアリス』のアリスがバラキエルの鼻先数センチのところまで顔を近づけていたのだ。


「ヒトも、動物も、鳥も、魚も、微生物も……! この“生命のスープ”から生まれたんだって♡」


 そして手にした身の丈より大きな鎌を豪快に、バラキエルとラミエルに振り下ろす。

 これをすんでのところでかわしたと、思った。

 だが。

 アリスのスピードはバラキエルの想像を遥かに超えていた。

 この時にはすでに、バラキエルの左脚は……、














 斬り落とされていた……。















 ※   ※   ※


 ベールゼバブは焦っていた。

 突然の、部下への、ロキ陣営からの攻撃!

 だが今、自分の目の前には、宿敵である“666の獣”の意識の断片の影が揺れている。

 北藤翔太ほくとうしょうたの姿をしたその影は、失った右腕から先を見つめながら、そして額の666の紋様の光を強めている。


(──やはりこちらが先か……!?)


 そう思い直し、天すべてを覆う膨大な蝿の群れの一部を……、触れたものすべてを“腐敗”させるその“領域”めいたその魔術を、再び666の獣へと向けて、解き放った!


 蝿どもが羽音を轟かせながら666の獣に襲いかかる……!


 だが。


「なっ……!」


 ベールゼバブは我が目を疑った。


 獣に向けて放った蝿……“腐敗”の大群が。


 そのすべてが。


 獣に近づくとともに。


 次々と。
















 黒い羽に赤と青の紋がある“蝶”に姿を変えられていたからである──!



挿絵(By みてみん)

【アグリアス=クラウディナ】

“666の獣”がベールゼバブの蝿の群れを変化させた蝶

(https://www.nature-shop.jp/item/details/id/273/?utm_source=chatgpt.com)より拝借

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