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改史 大戦  作者: BT/H
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第5章 第1次世界戦争編 G-0005 マンザラ湖畔の戦い-2

 ついに始まってしまいましたねロシアの侵攻。まあ、ロシアは止まりません。後ろに中国がいます。資源は中国に売ってしまえば経済制裁は回避可能なので拳で止めるしかないのに…どうするのでしょうか?

 ドゥミヤート 協商側司令部

「装甲巡洋艦『ディフェンス』撃沈の模様!!」

 衝撃の事実を知った直後の訃報。その場を騒然とさせるには十分だ。

「アレクサンドリアの艦隊は壊滅したと判断します。1隻も帰ってこなくても不思議ではありません。」

「英国の飛行機を出せんのか!!日本機に稼働機はもういない!!状況判断が全くできん。」

「それ以上に問題なのはオスマン戦艦部隊の動き。報告を聞く限り、迎撃に出ているのは元独巡洋戦艦1とエルトゥールル級2隻。英国陣地を後退させるに足る砲撃を行っているのがたった1隻のド級戦艦であること」

「ではこれ以上の砲撃が今後防衛陣地に⁉」

「来るに決まっているだろ。その後方からはオスマン陸軍が来る。」

 議論百出。話はまとまらない。

「浅野大将。救援部隊の編成を!!」

 英国人将校が議長的な立場にあり、沈黙を保つ浅田信興大将。

 英国人の発言からゆっくりと騒然とした空気は沈静化してくる。

「臨時で私の指揮下にある常備第1師団は武装の充足率が低すぎる。救援は無理だ。」

「浅田総司令!!」

「だが後退支援ならできる。非武装の兵士には負傷者を担がせろ。北側戦線はオスマン艦の艦砲『有効射程外』である北部最終防衛線まで後退。南部の近衛師団からも連隊規模で予備兵力を引き抜け。市街地戦の恐れもあるから市民へ避難命令。少なくとも川を渡れば安全だ。渡し舟を総動員せよ。」


 オスマン艦隊旗艦 旧独巡洋戦艦 ゲーペン 現ヤウズ・スルタン・セリム

「英艦隊は全滅いたしました。」

 結果はわかりきっていた。

「損傷は?」

「戦艦部隊は皆無ですが、護衛は壊滅的です。生き残りも修繕なしでの戦闘継続は困難、且つ、遭難者救助に投入しなければなりません。継戦可能な戦力は戦艦4隻、防護巡洋艦1隻程度です。しかし…」

「アレクサンドリアの全艦が喪失した現時点では襲撃はあり得ない。ということか。」

「沿岸のオスマン陸軍部隊への支援砲撃を行わなければならないです。」

「フン、まともな連中なら艦隊の有効射程外おそらくドゥミヤート付近まで後退している。」

「最大射程内ですが、航行状態では正確な射撃は困難です。」

「陸軍部隊の進出は?」

「最前線を西進する部隊はもちろん、ド級戦艦ハイレディン・バルバロッサの護衛の下ポートサイドを出港した部隊が物資の揚陸、補給中です。」

「通信兵、砲兵隊所属の前線観測員の進出を急がせるように伝えろ。小型巡洋艦(防護巡洋艦のこと) には水深を調べさせ、ギリギリまで接近させろ。」

「地形により、行動に制限がかかりますが…」

「敵艦隊は存在しない以上、問題はない。ドゥミヤートの確保は最優先課題だ。確実に脅威を与え、降伏させ、スエズ運河の確保を確実にしなければならないのだ!!」


 ドゥミヤート 総司令部

「浅田総司令。第1常備師団の予備兵員の中で手の器用な人間を貸してください。」

 若い空軍士官が聞きに来る。

「中島空軍中佐」

「民間船をありったけ投入しても東岸からの住民の避難は時間がかかります。何せほとんどの船には動力がありません。人力での渡河を強いられております。空軍機を解体し、それを使用して動力化します。」

 その発言に周りは驚きに包まれる。

「いいのか中佐。飛行機乗りにとって機体は!!」

「愛馬と同じですね。しかし、騎兵でも食糧不足になった場合、愛馬を屠殺し食すことすらあると聞きます。われらは軍人。民間人を守るために犠牲を強いられることは覚悟しております。」

 周りが静まり返る。

「まあ、馬と違い、飛行機は解体しても修理ができる。一時的な別れになるだけです。」

「兵は出せない。民間人から志願者を至急募れ。造船、木工所を当たり、支援を要請。その間は兵を貸す。」

「了解。」


 ラス・エル・バー (ドゥミヤート中心部を流れるナイル川の支流の河口部の都市)

「おい見ろ!!オスマン艦隊だ!!」

 住民が沖合を見ている

「砲撃をする気なのか!!」

「白旗だ!!白旗を探せ!!」

「旗なんてないよ!!」

「白い布と長い棒を探せそれを掲げるんだ!!」

 

 ドゥミヤート 総司令部

「ナイル川河口部の都市ラス・エル・バーに艦隊を確認。」

「何のために⁉」

「町は砲撃を恐れ降伏するとのことです。既に状況を探るために斥候の騎兵を向かわせております。」

「工兵と通信兵も出せ。既存の通信線は封鎖、傍受の恐れが高い。馬車を動員して騎兵に随伴させろ。」

「ラス・エル・バー沖では本司令部は有効射程外ですが、最大射程内ではあります。」

「民間人を射撃してしまえば戦後どうするかが問題だ。奴らはここを占領する気なのだ。住民感情を考慮すれば砲撃は現実的ではない。だが、退避壕の敷設は必要だな。住民にスコップを渡して掘らせろ。砲撃が来たら逃げ込めるようにな。」


 ラス・エル・バー 港湾 PM0300

「陸軍部隊が海図の接収に成功。水深が判明。接近限界まで接近できます。十分射程内を確保できます。ただし、停船射撃砲撃以外無理です。」

「停船射撃ですので命中精度向上を図れます。」

「追加で報告です。15㎝副砲でも一部領域ならば射程内です。」

「接近に時間を使っても構わない。できるだけよせろ。」

「民間人砲撃の恐れがありますが…」

「戦時国際法上民間人は保護の義務があるか…しかし、それは守備側にも当てはまる。連中が民間人避難区画の指定をしていない以上、彼らも民間人保護義務違反だ。」

「それでは!!こちらも義務違反になるのでは⁉」

「…ならば警告を与える。砲撃が可能な向きに直ちに変針。片舷全砲門を使用する。」

「それでは!!」

「砲弾から信管を抜け。砲撃ののち、あらゆる方法での降伏勧告を行う。そして砲撃再開時間と次は信管ありでの砲撃である旨もな。」

「了解。」


 ドゥミヤート 総司令部

「着弾は全て不発弾。11インチ砲弾8発、6インチも8発。住民の被害は物的被害にとどまっております。」

「信管を抜いた砲撃だ。降伏勧告を見た。住民の避難を急げ。砲撃での被害を防がなければならん。それよりもラス・エル・バーの状況はどうだ?通信は完全に握られたのか?」

「はい。偵察機も無理です。騎兵斥候の報告もまだです。」

「糞。英国機が出せれば!!」

 第1次世界大戦は航空偵察の有用性が広く周知された戦いである。騎兵による偵察は犠牲が大きい上に時間もかかる

「拠点すらないのです。偵察した騎兵たちが帰還するまでわかりません。」


 ポートサイド マンザラ湖畔 オーストリア=ハンガリー帝国航空隊基地

「準備完了です。」

 オーストリア=ハンガリー帝国の水上機部隊が展開している。この時点では同盟国陣営でほぼ唯一の水上機部隊である。使用機種はオーストリア=ハンガリー製のローナーE。

 あまり知られていない機体である。しかし、その系譜の機体は映像作品に出てきている。ローナ―Eの発展機ローナーLの鹵獲機をイタリアがコピーした機体マッキL.1の独自発展機マッキM.5が紅の豚主人公ポルコ・ロッソのWW1時代の乗機である。

 ローナーEにとって隠し子 (鹵獲機のコピー機) の息子 (発展機) がちょっとだけ有名という微妙な関係に近いのかもしれない。

 初飛行1913年11月10日 製造機数40機程度。史実においてセルビア戦線への偵察行動へ投入されていたが、改史ではこの役目には戦前からの軍の近代化により大量配備されていたダウべにより、果たされた。その結果ローナーEが余った。その機体が回ってきたともいえる。

 それ以上にマンザラ湖という水上機が運用しやすい状況…があったために派遣軍による物資、人員輸送はもちろん、独軍飛行船による人員、物資輸送と機体自体のフェリー飛行でマンザラ湖に進出してきたのだ。

 なお、通常の陸上機は砂の多い砂漠気候により、エンジン不調がひどくなることが予想され、水上機が回航されたという意味もある。

「日本にはあまり被害が出てほしくはない。」

 オーストリア=ハンガリー帝国のハンガリー系住民以外の思いだ。

 元々オーストリア=ハンガリー帝国は日露戦争の戦勝やフランツ・フェルディナント大公夫妻の日本訪問時の歓待などが原因で、日本人であることがわかると胴上げされるぐらいには親日的だった。

 改史では日本がロシアの味方になったことから大きく関係は悪化した。しかし、改史は違った。 

『亡きフランツ・フェルディナント大公夫妻の霊に安寧と祝福あれ。死の前後のオーストリア=ハンガリー帝国の行動からその死に不信あり。正義をただすため宣戦布告する』

 上記が改史での日本の宣戦布告の意訳である。フランツ・フェルディナント皇太子がオーストリア=ハンガリー帝国の謀略に近い理由で暗殺されたのではないか? その死をセルビアに対する宣戦布告の口実とするために意図的に厳しい条件をセルビアに突き付けたのではないか? その行為はフランツ・フェルディナント大公夫妻を冒涜する行為であるから宣戦布告するということだ。

 そのために史実よりも両国間の関係は悪化していない。正しくは国の首脳レベルでは大いに対立中。民間はむしろ好意を覚える人種も多い。

 そのために双方ともに戦いたくないという思いの人間も多く、実際に日本のロシア派遣軍はオーストリア=ハンガリー戦線に投入しないことが条件になっている。

 そして、こんな熱い僻地に行きたくないパイロットが多く、当時のパイロットの多くが貴族や高所得者層であり、国民とは対極の存在。こういったパイロット以外…すなわち国民寄りのパイロットが多くを占めた。

 その結果は日本との非戦を願う人間が多いという結果。

 つまり皮肉にもスエズ戦線は参戦している主力部隊であるオスマン帝国、情報上の主導権を握るオーストリア=ハンガリー帝国軍双方に日本とではなく、優先的に英国と戦う理由があった。

「英国部隊向けのお土産も準備していますよ。」

 というのは整備兵。桟橋から乗り込むパイロットや観測員の横につき、声をかける。

「いや任務はドゥミヤートの日本軍へのお土産だ。それは後でだ。仕事自体は1時間ぐらいで終わるからすぐにそれ積んで英国軍爆撃だ!!」

「わかった。積めるだけ準備しておくよ。」



 ドゥミヤート 総司令部

「降伏勧告のビラか…。」

 オーストリア=ハンガリーのローナーEが散布したのは英、日連合軍への降伏勧告のビラだった。

「俘虜は無理だな。総指揮を執る帝国の責任問題になる。住民の避難状況は⁉」

「残り3時間以上かかります。」

「それだけ経てば夜になる。おい!!敵に通達しろ。避難地域と避難完了時間を通達しろ。一晩時間を稼げば最終防衛線の再構築、英国の残存兵の再編と配備が終わる。水上機を何とか着陸させて民間人避難領域」


 オスマン艦隊旗艦 旧独巡洋戦艦 ゲーペン 現ヤウズ・スルタン・セリム

「提督。夜になります。もうこれ以上待てません。以上待てばオスマン軍の着弾観測指示が届かない状況になります。」

「降伏勧告が受け入れられていればすでに連絡が入っている。彼らは住民の安全を守るうえで最良の選択肢を放棄した。すなわち、戦時国際法の民間人保護の義務を敵が犯したことになる。」

「提督⁉」

「ドゥミヤートへの砲撃を開始せよ。」

「しかし…。」

「さっきも言っただろ。降伏勧告を黙殺したのだ。それが民間人保護に対する唯一の選択肢でもあるのにかかわらずだ。民間人を盾に使っているのは敵だ。それなら盾を貫いて殺してやるだけだ。」

「りょ、了解。」


 オスマン帝国最前線 砲兵観測員。

「砲撃です!!」

「ドイツ艦からの砲撃か!!」

「住民の避難が終わっていないんだぞ!!」

「住民が残っている間のほうが降伏に対する圧力が強いということなんだろ。糞野郎どもが!!」

「着弾観測指示はどうする⁉」

「できるだけ外れるように誘導しろ。さっきオーストリア=ハンガリー帝国機が落としていった地図を参考に避難が完了しているだろう地域に砲弾を落とすようにするんだ。」

「了解!!」


ドゥミヤート 総司令部

「沖合からの砲撃です。」

「ラス・エル・バー方面に向かった騎兵斥候と通信部隊から入電。『ラス・エル・バー沖に敵艦見ユ。発砲炎ヲ確認』とのことです。」

「それが目的だったのか!!」

「それだけではありません。海岸線と沖合の貨物船に灯火を確認。陸上部隊と物資の揚陸作業中の模様です。」

「ラス・エル・バー揚陸部隊に対する防衛線構築を各方面に指示せよ。」

「すでに参謀内で部隊配置転換についての計画は策定済みです。各方面への指示もすでに。」

「そうか。」

「中島中佐率いる渡河支援部隊からの作戦上申です。」

 伝令兵が封筒を渡す。総司令の浅田はそれをすぐに破いて見る。

「本当にいいのか?犠牲は大きいぞ。」

「私は作戦について何も知らされておりませんが、中島中佐のお言葉があります。『民間人の命を救うにはこれしかない』とのことです。」

「……すまない。作戦を承認する。砲兵隊に資材を至急運ばせろ。」


 ドゥミヤート 河川付近 木工所

「中佐…よろしいのでしょうか?」

「すまない。所長。無理をさせた。」

「そんなことはありません。あなた方のやろうとしていることを思えば…お願いです。生きて帰ってきてください。そして町を焼きつつあるこの砲撃を止めてください。」

「わかった。」

 そして中島中佐は振り返る。

「志願を取り消すのなら今だぞ。」

「中佐こそおやめくださいと言いたいですな。あなたのような方は日本に必要ですから。」

「部下にだけ行かせられるかよ。」

 笑いがその場を占める。この時代のパイロットは死と隣り合わせだ。機体の安定性、耐久性、経験不足は現代と比較にならないぐらいに悪い。その結果は冗談や笑いが飛び交う職場になる。

「総員。俘虜になれ。ただし、目的を果たせ。目標は敵戦艦。このドゥミヤートに砲撃を行っているから目立つだろう。砲撃の光を頼りに進め。」

 総員が姿勢を正す。

「全員の生還を」

「全員に生還を」


今回は若干長めです。

物語の再編の必要性はございますか?主人公ありの作品にしたほうが面白いでしょうか?意見を求めます。


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