第5章 第1次世界戦争編 A-0002 西欧派遣軍の足止め
申し訳ございません。 交通事故(物損単独川に落ちた自動車は修理可能)で足腰腕を痛め作成が遅れました。
今回はセルビア戦線の激変に伴う影響です。
エジプト スエズ運河 日本海軍所属航空機運用艦 大翔艦内 日本軍欧州派遣部隊司令部
1914年10月15日
日本軍の西部戦線派遣部隊司令部は本隊よりも先行し、スエズに入った。海軍所属の航空機運用艦 大翔 は建造中に他国に新鋭巡洋戦艦が完成したことによる陳腐化により建造計画の見直しが行われ、中止になった巡洋戦艦を改造した試作航空母艦ともいえる船である。この時点ではダウべ陸上機の発艦には成功、着艦はできていないそのために水上機の運用を前提として運用されている。この経緯の関係で通常の輸送艦よりも速力が早い。インド洋で通商破壊任務中の独巡洋艦エムデンに対抗できるだけの護衛をつけ司令部要員と航空隊および航空要員、一部近衛師団兵を乗せ先行に成功した。情報を確認するためである。その情報収集及び情報の報告のために搭載されている水上機を使用し、司令部にあいさつに行ったときにとある報告を聞いた。
「セルビア戦線にブルガリアが後背から参戦しただと⁉」
前日に宣戦布告したブルガリア軍の動きだった。
「セルビア軍はオーストリア=ハンガリー帝国と互角の戦闘を繰り広げていたはずだ。国力比からしてセルビアは全力で同国に対抗していたはずだ。となれば予備戦力なんて残ってはいないはず…」
「ブルガリア軍の侵攻はセルビア戦線の膠着を完全に打ち破りました。セルビア軍は早急に撤退していますが、一部部隊は脱出が困難と小管は予想します。」
「オーストリア=ハンガリー帝国がベオグラードでやった虐殺(都市に対する掃討戦の際に多くの市民に犠牲者が出た) は伺っております。そのことはセルビア国内中に周知されているでしょう。避難民や敗残兵が脱出してくると思われます。」
「助けられないでしょうか?」
この発言…柴五郎の発言に場が凍る。
「この派遣の目的は名目的とはいえフランスへの増援です。宣伝的な行為でありますが、我々が遅れるのはいささか問題があると愚考いたしますが、」
「しかし、民間人を救うこと自体は軍人の役目であります。」
「では方法は?」
「単純です。陸軍である我々はスエズで下ります。そして船を救援に回す。少なくともここから空輸できる空軍の輸送が主体である大翔は投入すべきです。」
「空輸するには航続距離が足りない機種もある。」
「ここに引き渡し、現地訓練用に使用する。そうすれば航空隊も兵員のみの輸送でよい。そして航空機はフランスで現地調達する。もしくは航空隊の航続距離内まで大翔で輸送。発艦させ、その後難民輸送任務に使用する。フランスに行くことが宣伝というのであればこの艦をセルビア救援に回すのも宣伝効果があります。」
「そんな大きなこと本国に報告しないでできるか!!」
「ならば報告してください。本国がどういうか。名目的な作戦よりも現実的な行動をすべきではありませんか?」
日本国 大本営
「ということがあったそうだ。海軍の動きが陸軍将校の発言で左右されるのは思うところがあるかもしれないが、私としてはセルビア救援に賛成したい。」
陸軍参謀総長である長谷川好道大将は史実では編成されなかった第1次世界大戦に伴う大本営にて海軍代表である軍令部総長の島村速雄中将に話す。
改史では訓練艦隊指揮官であったが第1次世界大戦開戦に伴い、同艦隊が解散され席が空白化していた。史実よりも発覚が遅れたジーメンス事件の責任を取って辞任した伊集院五郎の後任として総長になったのが島村だった。史実では1914年4月22日からの就任であったが、改史では9月22日となっている。
「当方も同意でしたが、既に貸している船を奪って救援に向けたいとは言いにくかったので、先におっしゃてくれてありがとうございます。」
島村が頭を下げる。実はこれについても水面下で海軍側から陸軍側に要請があった。海軍から提案するのではなく、陸軍から提案してほしいということだ。彼らがそれを認めたのは島村が第1次世界大戦の船舶による陸軍輸送についての独り言を陸軍参謀本部でつぶやいたことに感謝したためである。
「空軍としては航空機をフランスまで送りたい。そこで発艦によってフランスに空輸したい。しかし水上機は航続距離が短いので困難です。」
「フランス海軍に水上機母艦の派遣を要請して港まで中継してもらうようにしましょう。」
「陸軍司令部は海軍護衛艦艇に分乗して輸送しましょう。」
日本海軍所属航空機運用艦 大翔 艦橋
結局、司令部は艦を降りた。
この時甲板上に並んだ航空機 タウベ の航続距離はわずか140㎞、安全距離を考えてフランス沿岸、着陸可能な平原まで100㎞の位置まで来た。
「本当にできるのか?同時に多数の陸上機を船舶から発進させるなんてことが」
後ろから英語が聞こえてくる。手には古い撮影機材をもっている。動力がないために横から出ているクランク形状のハンドルを回している。
「滑走距離の関係で一部機体の離艦は失敗するでしょうが、貴国の駆逐艦の協力により救助体制は万全です。損耗分の補充もすでに手配済み。しかしながら一機でも多くの機体を早急に送り込むことが重要。それならば港湾で時間をとられることも避けなければならない。」
港湾に飛行機を下すとすれば一度分解しなくてはならない。輸送に組み立てに何日かかるだろうか。空輸ならば数十日かかる距離が数時間で十分だ。航続距離と現地の準備状況次第だが。
「まあ、着艦は不可能だから」
「発艦準備」
「合成風力を稼ぐ。艦首を風上に機関最大。」
「機関最大!!釜焚きもう少しだ。頼むぞ!!」
「取り舵!!」
「駆逐艦は追従せよ!!飛び込み要員用意」
「風上に向け終わり。機関最大まで残り3分(もともと機関出力を上げていた)」
「艦橋収納。必要要員はデッギ端まで走れ!!」
人々が動く。この艦の艦橋は現代空母と比較して特殊な構造をしている。飛行甲板前方に小さな箱型の艦橋がある。これは史実の黎明期空母の一つである英アーガスと同様の構造だ。発艦にとって邪魔でしかない。それはわかっていたので甲板下に引き込む方式を採用している。
そのため、艦橋内にいた発艦管制担当の士官や航空機の艦艇での運用を見学に来た英国人たちはよく見える位置に走り出さなければならない。
「発艦はじめ」
安全地帯に逃げ込むと同時に発艦管制担当の士官が信号拳銃で信号弾を上げる。同時に先頭の機体のコックピットからも同様に信号弾が上がる。機体整備員の一人が車止めを外す。
離陸滑走距離の関係で4機しかいない甲板をギリギリまで使って先頭が走り始める。そして甲板の先端から海に落ちて消える…と思った瞬間、一度海面すれすれまで下りた機体が持ち上がるように姿を現す。
「やった!!」
歓声を上げる人間の横で次の機体が走り出していた。
24機搭載していた陸上機たちは1機がエンジン不調を起こし、海面に激突、搭乗員が1名死亡。1機が機体不調から離陸断念し、力業で海没処分。生き残りの搭乗員3名と整備兵、英国人は救命艇に乗り込ませ、海域に放置、航空機運用艦大翔はこの海域から離脱した。
この救命艇は護衛の英国駆逐艦に回収され、フランスのマルセイユ港に入港することになる。
これ以外に水上機が連絡機用の1機を除き、3機が同じくマルセイユに送られた。
HOI4などで航空隊はすぐに遠距離でも空輸されますが、実際は飛行場で解体→陸上輸送→船積→船舶輸送→港で陸揚げ→陸上輸送→飛行場で組み立て
という手順を踏まないといけないので大変なんですよね。(当時の機体は航続距離が短い上に港湾荷役は全て人力ですからね。)
第2次世界大戦中に小型空母が航空機輸送艦として使用されるようになりました。航続距離の短過ぎる機体の輸送は大変ですね。
なお、沖縄戦のころは補充の艦載機輸送のために護衛空母が多数、マリアナー沖縄間やフィリピンー沖縄間で運行されていたそうです。




