第5章 第1次世界戦争編 F-0007 ガリシアの膠着
ガリシア戦線終了。かなり無理やりです。今回も出来立てほやほや。次の工程が出来上がっていません。どーしよ!!
若干、時をさかのぼり、マンネルヘイム騎兵旅団浸透直後。
オーストリア軍司令部
「ガリシア北部戦線への補給網が破壊されている!?」
戦局が若干の硬直状態を経ると問題は補給面に移る。攻勢のための物資の集積には生産力と輸送力だ。この場合、輸送力に対し大幅な妨害が加えられている。
「鉄道に対する爆破が最も痛いですね。しかも不足しがちな機関車をつぶされている。」
「鉄道地雷の原理はシンプル。どうやら通電を利用したもののようです。車輪が電線を踏み、レールと通電することで起爆するもののようです。」
「先頭を走る機関車をやられるのは痛いな。」
「そうです。すでに機関車の前に補修用物資を積載した貨車を連結させて行動しています。ですが、2回目の仕掛け爆弾は厄介なことに機関車の位置を狙うかのように起爆装置と主爆弾部が離れています。なので機関車の被害も甚大です。」
「線路は復活できても牽引力がなければ意味がない。」
「予備の機関車を手配しています。まあ、物資を消費するので後送に使用する牽引力が余剰になるのでそれを補充に充てていますが」
「それも仕掛け爆弾で次々に破壊されているというんだな。」
「はい。北部の2個軍は物資不足により、徐々に後退中です。塹壕戦に移行しようにも塹壕掘削を砲撃に邪魔をされています。それに銃弾の供給不足で塹壕戦の有効性が…」
防御側に有利とされている塹壕戦だがそれにはいくつかの条件がある。特に重要なのが兵站。敵の突撃を破砕するだけの火力が必要だ。当然だ。塹壕戦の利点は砲弾の被害を最小にすることと、最小の露出面積で敵を射撃することができる点にある。たとえ壕を掘っても兵士が銃を持っていなければ早急に白兵戦に持ち込まれてしまう。
今回の場合、銃はあっても弾がない。という事態だ。この場合、より厄介だ。銃がなければ白兵戦用の武器を持てる(往々にしてこの手の武器は壊れにくい)が銃では塹壕内の取り回しに難がある銃剣と肉弾だけになる。その上ベルの問題も生じる。
「塹壕を掘る手間すら惜しい…飯がないからその体力も少ない。」
「はい。すでに前線地帯の村にある物資は底をつきつつありますので」
「徐々に後退するのはや無負えないか…おそらく挺身騎兵戦法だ。捜索隊を出し、せん滅するしかあるまい。」
マンネルヘイム騎兵旅団 簡易飛行場(ただの草原ともいう)
「偵察機発進します。」
羽に黒十字が描かれた飛行機が空に飛び上がる。
「旅団長。国籍の偽造は国際法違反ではないのでしょうか?」
「偽造したまま攻撃をすればな。海軍の世界では港湾や敵船襲撃の際に国籍を偽造することはよくあることだ。攻撃を開始したタイミングで国籍を明らかにしておれば問題ない。今回の場合、墜落でもしない限り、あの機体が直接敵を攻撃することはできない。一応、防衛用の機関銃は積ませているがな。」
「はあ…」
「現時点で敵軍に航空機の気配はない。すべてセルビア戦線に投入されているという情報がある。」
「もしも敵航空機が現れたら?」
「素直に逃げ出すさ。だから前線方向の偵察も怠らぬように。隙を見つけて戦線を突破するから。」
「了解。」
オーストリアハンガリー帝国軍参謀本部
「北部戦線に兵を割き、重心を割いていることで、東部への補充兵輸送が遅れています。さらに北部に続き、東部レンベルクまでの路線も爆破の被害を受けています。一部補給列車は爆破と同時の襲撃で全員戦死、物資を奪われたものもあります。」
マンネルヘイム騎兵旅団の兵站破壊はオーストリアハンガリー帝国に深刻な影響を与えていた。ロシアよりも輸送力を無理やり低下させることで、ロシア軍の行動を相対的に早めている。ロシア第3軍が前進しつつあるのにもオーストリアハンガリー帝国軍は全く応戦できていない。
「深めの位置に防衛線と兵力集結地点を設けた関係で従来よりも大きな問題はありませんが、戦闘が始まり次第、物資不足に陥るのは目に見えています!!」
「作戦の中止を!!」
「ならん!!レンベルクは奪還する!!敵兵力もせん滅する!!」
参謀総長は冷静さを欠いている。戦争は戦場で決まるものではない。いいや。これが彼らにとって普通なのだ。第1次世界大戦まで欧州は数十年大規模な戦争のない平和を享受した。植民地に攻め込むことはあっても大国同士の戦争全面的な戦争はない。大国同士の戦争などドイツとフランスがまともに戦った戦など40年以上前の普仏戦争以来だろう。
その前の戦争はいわゆる戦列歩兵の世界だ。この当時の戦争は第1次世界大戦と違い、物資の消費量が段違いに少ない。そして、時に劣勢の場合でも、戦術、練度さえ優れていれば大勢の敵にも勝利することがあった。時に敵側に新兵器があった場合でもだ。
当時の戦争は戦場でのみ起きていたといってもいい。後方での兵站よりもはるかに前線での働きのほうが重視された。
すなわち、精神論の世界ともいえる。彼はその時代の戦い方を士官学校で学んだ人間だ。そしてそれ以前の軍務は多くが反乱鎮圧などまともな戦争ではない。確かにある程度先進的な兵器などを知っていたとしてもそれの使い方、動かし方を知らない。
(この糞爺。現実を見ろ!!)
中止を提案した人間は苦虫をかみしめる。
「了解。」
彼は会議が終わると、すぐに通信室に向かうことになる。
時は戻り、ロ墺双方の戦闘が再開されている中 レンベルク西方地帯
マンネルヘイム騎兵旅団
「挺身騎兵戦法の終了を宣言する。今回の作戦は敵戦線に大穴を開けることを目的とする。飛行機は司令部と弾薬庫を見つけ次第、これを攻撃せよ。騎兵隊は突き抜けることを優先しろ!!それで敵軍が崩れる。」
各部隊長がマンネルヘイムの言葉を伝える。
「英雄として凱旋しよう。」
『ウラ―!! ウラ―!! ウラ―!! ウラ―!!』
その場の兵士たちの叫び声はつらい戦場でも兵士たちの士気の高さを示していた。
第8軍 レンベルク市街地部隊
「部隊は建物を徹底的に利用しろ!! 狙撃しろ!!」
第8軍は建物を利用してオーストリアハンガリー帝国兵に対し優位な姿勢で射撃している。建屋全てが簡易要塞化されている。いくらもとは民家であったとしても小銃射撃ではどうにもならない。攻撃側ができることは砲撃でことごとく破壊するか、もっとも外側の建屋から一つ一つ制圧するしかない。敵国の都市ならば前者でもいい。敵国人を守るのは敵国軍の仕事だ。だがレンベルクはもともとオーストリアハンガリー帝国側の都市。つまり自国民だ。防御を放棄した時点で住民感情は最悪。町ごと破壊するような攻撃はさらなる住民感情の悪化を招くだろう。そんな攻撃はできない。
となれば一つ一つ建屋を制圧するしかない。これで住民が巻き込まれるリスクがあるが、それは民間人の退避義務を怠った敵軍のせいにできる。例えば、病院船や戦時捕虜、拘束民間人を輸送する交換船などへの攻撃で、敵に対しこれらの用途の船舶であることの通告すなわち、被攻撃側の非戦闘員保護への努力を怠れば、拿捕、攻撃の対象になることもある。実際、日露戦争時に日本はロシアの病院船を通告していなかったことを理由に拿捕。戦後、ロシアからの条約違反非難に対し、日本が船をロシアに返還と同時に非難宣言の取り消しをするという事態も出ている。一応、条約違反と言ことではない。
むろん、通告があった船舶への攻撃は戦時国際法違反に該当するだろう。実際、太平洋戦争時、日本が通告したにもかかわらず攻撃された病院船は多数、交換船では阿波丸が有名である。
なお、このように非攻撃目標への攻撃行動が活発化されれば、当然、どうせ攻撃されるのでは被攻撃目標であることを悪用しようという考えも生まれることもある。病院船などに対する軍事物資の積載などの条約違反行為の遠因になる行為であると推察するが、逆の可能性もある。まあ、鶏か卵どちらが先かということだ。
今回の場合、ロシア側から銃撃が行われた建屋は船でいう軍艦。攻撃対象。ここに民間人がいて死亡したとしても民間人の避難を怠ったロシア側のせいにできる。
「いつもの通りだ。最上階の下のフロアが制圧されたら建屋を放棄!!後方の建屋に移る。お土産もくれてやれ!!」
ロシアもそれが分かっている。一つ一つ制圧するしかない。ならば制圧対象の建屋に兵を忍ばせ、要塞化する。
建屋を要塞化するのと同時に彼らは仕掛けをすると同時に階段をすべて落とす。そして洗濯物干しに偽造したロープを隣の建屋に向けて敷設し、退避ルートにする。
「最上階以外の建屋が制圧されました。後方の建屋からの支援射撃開始。」
「よし偽装をとれ!!」
3階以上の建屋であればこれで十分。前方の建屋の制圧が完了しない限り銃撃が集中する建屋同士の間に入ることはできず、制圧した建屋からの銃撃も後方からの銃撃で十分できない。後方が支援してくれている間に洗濯物に偽造した布を外し、退避可能にする。あとはそこら辺の工場から手に入れた部品で作った滑車で隣のビルに飛び移る。いくら支援射撃があったとしても宙にいる間は無防備。この間に打たれれば死ぬか大けが。早急に後方に後送しなければならない。
「生存人員総員退避完了。」
「よし。爆破。」
置き土産が爆発すると先ほどまでこもっていた建屋が敵軍側に倒れるように倒壊。がれきの山になる。当然、中の兵は壊滅。そしてその山になったがれきはより進撃を妨害する。悪路で足を取られている間、坂になっており、行軍が遅れた隙、狙い打たれる。避けようとがれきの少ないところに出ればそこは十字砲火点。ロシア第8軍兵士とオーストリアハンガリー帝国第2・7軍の戦死者は圧倒的な差が生じている。市街地部隊は両軍の攻めに徐々に後退しながらも耐えている。
「爆破に失敗。拠点破壊。成功せず。」
だが時々、このような事が起きる。敵が各階を制圧したのちに爆破線を除去された場合だ。
「糞、や無負えない。後方の砲兵隊に建物を破壊してもらう。支援要請!!」
ほとんどの第8軍砲兵が南部に送られているとはいえ、少数は残っている。その砲兵に建屋を破壊させる。運が良ければ爆薬に引火してくれるだろう。
「糞味方を打つな!!衛生兵!!後送しろ!!」
だが誤射の確率が高いのが欠点だ。だが精密射撃を目的としているから砲撃速度は遅い。
「火炎瓶で引火させろ!!」
シンプルな手段だ。非正規的な手段だが、即席兵器。これを砲撃の間に投げ込む。各陣地に設置されている爆薬、そして同じように存在する火炎瓶の燃料に引火すれば御の字だ。だが、火炎瓶には大きなリスクもある。
「糞、狙撃された!!」
火炎瓶を投げる瞬間は隙ができる。その間に敵軍の銃弾が投擲兵を襲う
「後送しろ!!急げ。破壊できぬとあれば崩壊誘発させるだけだ。1階の制圧状況は!!」
「前の陣地よりも悪いです。既に1階は制圧されています。」
「支援射撃は厳しいか。」
「2階放棄!!」
「ここの仕掛け爆弾を確実化せよ。脱出する。ここの置き土産が後方の建屋を崩してくれることを祈ろう。」
「負傷者全員後送。」
「我らも続くぞ。脱出完了後ただちに爆破だ!!」
「了解。」
マンネルヘイム騎兵旅団
「飛行機第3軍弾薬庫集積場を確認」
「機は熟した突撃!!敵を突き抜けることを優先!!落馬したものを助けている余裕はない。自分の命を最優先にしろ!!突撃!!」
マンネルヘイム騎兵旅団は走る。先頭は当然マンネルヘイム少将自身だった。
ロシア第3軍
「マンネルヘイム騎兵旅団後方より奇襲を開始。敵弾薬庫爆撃を確認。」
「続け!!突撃だ!!第11軍と騎兵連中の犠牲を無駄にするな」
墺第3軍
「弾薬集積場航空機に爆破されました!!」
「後方から騎兵隊の襲撃!!」
「右翼敵第3軍前進を開始!!戦術予備の動員を!!」
墺第3軍の戦局は一気に悪化した。前方はもともと総司令部からのロシア第11軍に対しての攻勢命令で無意味な消耗を生み、疲弊していた。言語の関係上、時代遅れの銃剣突撃しかできないオーストリアハンガリー帝国軍はロシアの蛸壺塹壕に設置された機関銃になぎ倒されるだけだった。その補充に戦術予備を送り出し、さらに兵站妨害がある中何とか調達したなけなしの弾薬を与えた。その残りの弾薬も空爆ですべてが灰と消えた。弾薬を大量消費する砲兵隊はもちろん弾薬庫のそばにいた。巻き込まれただろう。
後方の敵騎兵は味方に混乱を生むことを優先しているようだ。彼らはわざと戦線に穴をあけ、自軍内に駆け込んでいる。騎兵隊も元々消耗していたのだろうが、その中、温存されたロシア第3軍からの攻撃。オーストリア軍兵士は騎兵隊が開けた穴に向かい、押し出されるように後退してゆく
「…敵騎兵には後方を遮断してくれていたほうが我々にとっては有利だったな…」
「すでに戦術予備はありません。」
「糞。後退開始。第2軍に伝達。市街地から突出するロシア第3軍側面から攻撃。第3軍後退の支援に当たってもらえ。我々は後退して防衛線を再構築する。総司令部に補充兵の総動員を要請してくれ。出してくれるかわからんがな。」
最後の言葉だけは誰にも聞こえないような独り言だった
総司令部
「なぜ後退するのだ!!」
ある参謀が叫んでいる。現実を受け入れられない男だ。その一方。冷静さを取り戻したいいや冷静になっている男がいた。総参謀長のフランツ・コンラート・フォン・ヘッツェンドルフだった。先ほどまで攻勢を叫んでいた男だ。
「潮時だ。」
ヘッツェンドルフは叫んだ。彼自身、先ほどの迄の攻勢論は演技である。彼自身、ロシアに対し軍事的勝利が可能であるとは思っていなかった。国力比、戦力比、実戦経験すべてに大差がある。
だからこそ攻勢に出た。攻勢をし、敵の攻勢を遅らせる。それで時間を稼ぐ。その間にセルビア戦線を攻略、全力を持ってロシアと対峙する。それが計画だった。
だがそれは分の悪い賭けだ。自軍の攻勢が撃退、大損害を受けた場合、弱体化した兵力でこれを死守しなければならない。さらにセルビア戦線が長引いた場合、状況は最悪になる。実際、史実ではそうなった。
ヘッツェンドルフはその攻勢に見切りをつけたのだ。
「第3軍の再建を急げ。現戦線を放棄。後退を開始。後退目標作戦計画通り。整然と後退し、敵に漬け込む隙を与えるな。」
「了解。」
ロシア第8軍 司令部 第8軍指揮官ブルシーロフ
「偵察機が敵軍後退開始を確認!!」
「偵察機には伏兵の存在を確認させろ!!」
「市街地方面建屋倒壊につき悪路多数!!通路には機関銃を確認。偵察機手製弾で制圧行動は可能か!!。」
ロシア第8軍は活性化している。戦局の好転はこれまで継続的に攻められ続けていた前線兵士からも攻勢可能である旨の連絡や攻勢に必要な情報の伝達が進む。
「追撃を開始する。」
指揮官のブルシーロフの判断は早かった。味方部隊が敵左翼第3軍を瓦解させたことをしり、敵勢の衰えを予測していた。だからこそ偵察機を飛ばし、敵勢の衰えと漬け込む隙を探していた。
「左翼部隊は塹壕を捨て前進を開始。砲兵の速度に合わせる必要はない。おいて行け。さらに右翼部隊への支援を忘れるな。総司令部に人夫の派遣を要請。敵軍が放棄した武装の鹵獲を行え。」
「了解。」
オーストリアハンガリー帝国軍は当初の計画通りの防衛線に向けて撤退を開始。現地にはすでに住民の手で防衛陣地の構築がなされており、兵士たちは防衛陣地すなわち塹壕の中にこもる。防衛線はサン川西岸およびビスワ川南岸。河川防御を利用した強固で簡易な陣地。すなわち塹壕。改史世界大戦東部戦線南部で初めて用いられた組織だった塹壕。
オーストリアハンガリー帝国軍はこれを死守した。史実では陥落し、戦士86000、捕虜117000を生んだプシェムィシル要塞を補給拠点とした。いくら日露戦争を経験し、塹壕戦を研究していたロシア軍でも河川により行軍が遅れた挙句、狙撃され、架橋してもそこに十字砲火を浴びせられる状況では突破は困難。双方ともにこの川を挟んで塹壕を掘り始めるのは当然の流れだろう。
これにより、ガリシア戦線は膠着した。史実ではロシア25万、オーストリアハンガリー初動動員90万、捕虜12万以上、戦死25万以上、を生んだこの地域の戦いではロシア30万、オーストリアハンガリー帝国初動120万、戦死30万。戦死者こそ増大した。
しかしそれ以上に大きな影響があったのは布陣地域だ。史実で布陣した高山地帯であるカルパチア山脈に布陣しなかったことにより、凍傷、病の発生が抑えられ、史実80万の損害は20万まで減少した。
時に1914年9月のことであった。
史実におけるガリシアの直接被害は捕虜10万以上、戦死20万以上、戦病死80万の犠牲者だけで100万といわれています。この大敗はWW1中足を引っ張ることになります。
でも改史は50万史実の半数で、しかもガリシアの戦い膠着成立までにロシア30万人。史実よりはましですね。
次はどこやろうかな?セルビア行く?それともロシア派遣軍かな?




