第5章 第1次世界戦争編 F-0006 策に溺れる
今回の投稿ストックがないので出来立てほやほやの投稿です。
結局墺第3軍の殿部隊は一人たりとも第3軍本陣への到着はかなわず、さらにマンネルヘイム騎兵旅団による通信ケーブルも破壊されていたために殿部隊の壊滅すら第3軍本隊は気が付くことができなかった。殿部隊司令部をも手に入れた第11軍は第3軍本隊に対しての偽電すら行ってその損失を隠した。
「耐えろ!!第11軍到着まで食い止めろ!!」
第3軍司令官ニコライ・ラズスキー大将は墺第3軍本陣の到着に叫んだ。いつ到着するかは伝えない。捕虜から情報が漏れるのを防ぐためだ。
その戦局が変わるのは3日後。ロシア第11軍本隊が到着したことに始まった。これに疲弊した墺第3軍は壊走。これにつられて洪第8軍も後退。いいやこちらも壊走だ。疲弊したロシア軍が早急な追撃をしなかったからこそ大損害を受けなかっただけであり、練度不足から相互支援後退すらできていなかった。
その南ではのちに有名となるアレクセイ・アレクセーヴィチ・ブルシーロフ対象が率いるロ第8軍が洪第7軍に対し継続攻勢をかけてじりじりと侵攻を継続していたが、現時点では戦局はロシア有利の膠着状況で大きな影響を与えていない、
北ではロ第4・5軍と墺第1・4軍の戦局硬直状態にありあまり動きはない。
さらにその北ドイツ対ロシア軍の戦場では第4・5軍の後背地ワルシャワに迫るドイツ第2・8軍をロ第9軍とその東側面にいたロシア第10軍、第2軍残存の臨時編成部隊が防ぎ膠着。
さらに北バルト海沿岸では独第1・3軍がロシア第1軍と首都サンクトペテルブルク防衛を担っていた第6軍が任務を日本から到着しつつあったロシア派遣軍に引き継ぎつつ逐次前進。これも膠着状況に陥らせた。
(そして残りのロシア第7軍はルーマニア方面の抑え。)
各戦線が膠着している以上、露第3・11軍の勝利は膠着これを崩す機会だった。しかしロシアは動かない。動けない。ロシア鉄道網の関係上南北のつながりが薄いが、史実より苦戦している北部、中部に兵站、予備兵力を集中させている以上南部に回る補給物資は当然少なくなる。
しかしその動きの遅さはオーストリアハンガリー軍に時間を与えることになるだけだった。
オーストリア軍司令部
「第8軍を第7軍に編入させろ。第8軍はすでに軍としての体をなしていない。」
「第2軍を前進。第8軍の位置に入れろ。」
敗戦とその損害の増大。それに対しての対応に追われる司令部。まさに地獄である。過労死が出ていないのが不思議になる。その忙しさはとある出来事を忘れさせた。水上の通商破壊と同様に戦力以上に厄介と言わしめる戦法を実施する部隊を。
マンネルヘイム騎兵旅団
「任務はどうなりますか?」
隣の副官が馬を走らせながら聞いてくる。
「南は無理だ。奴らも第11,3軍と交戦していた連中の補給・補充で兵站が動きまくっているだろうが、その分多くの兵が配置されている。長期の作戦を考えれば損害が増えるのは避けたい。その一方北部は膠着している以上、兵站破壊が有効だ。」
「ではまず通信の遮断とそののちに兵站の破壊ですね。特に鉄道線。破壊工作用の物資がある分、荷駄の重みから行軍が遅れていますので、早く有効活用して重量を減らすべきであると愚考いたします。どんどん吹き飛ばしましょう。」
「わかっているじゃないか。鉄道線だけじゃなくて同時に車両も壊したいから仕掛け爆弾と行くか。」
しばらくして墺第1・4軍に対して補給列車とその帰りの列車が爆破される事件が多発した。しかし一度雨が降ったのち(車輪が電線を押しつぶすことでレールと接触、通電する仕組みだったので雨で通電してしまった。) にその事件は一時落ち着いた。
しかしその補給不足のタイミングでロシア軍の攻勢が始まり、墺第1・4軍が、徐々に後退することになる。
オーストリア軍司令部
「思い切って包囲しようか。」
オーストリア軍総参謀長フランツ・コンラート・フォン・ヘッツェンドルフがつぶやく。
「どうされるのですか?」
「レンベルクを放棄する。」
「なんですって!!」
「さすればロシア第11・3・8軍はレンベルクに入る。それを第2・3・7軍で包囲殲滅する。」
「閣下!!」
「奴らは住民を保護し、食わせなければならん。都市に閉じ込めてしまえばあとは消費するだけの住民。備蓄が尽きれば飢える。」
「それは焦土作戦と同様です!!住民を食い物にするようなものです!!」
「ギリギリの線で降伏させる。住民も一時飢えるだけだ…いいや食料は隠させろ。徴発にも応じるなと知らせろ。」
「それでは略奪を誘発するようなものです!!」
「略奪が発生してもしたほうが悪い。ガリシアの住民はロシアを恨み、生涯、ロシアに帰属することを拒む。」
「我々に恨みが向かうことは!!」
「幸い、第3軍は西方、第8軍が南方に撤退した。レンベルクに迎撃に迎えるのは第8軍のみ。その第8軍は戦える状態ではなく、第7軍に合流予定ときた。非難されるはハンガリー人部隊だ。別に問題なかろう。」
「そ、総参謀長…。」
「それに虐殺が行われれば国内への報道攻勢で兵の供給も可能。レンベルクの虐殺を忘れるなとな。それに現実的にレンベルクを守るすべがない以上、その中で効果的に敵を撃破するすべを探すしかあるまい。」
ロシア第3軍 司令部
「偵察機からの情報ではレンベルク方面ががら空きです。」
「なんだと!?レンベルクはガリシア南部防衛の拠点だ。ここを放棄するつもりなのか!!奴らは!!」
司令部にその報が伝わると、喧騒に包まれる。
「何かの罠ではないのか!!中国の空城の計というやつなのか!!」
「罠に動かせる軍はあるか!!」
「は、偵察機の情報では第8軍が空いていますが」
「第8軍の兵力が少ないか…すでに壊走士気が十分に残っている保証は」
「警戒はすべきです!!奴らの残存がレンベルクに潜んでいる可能性も!!」
「レンベルクはハンガリー人部隊の兵員供給拠点としての役目もある可能性もあります。」
「兵員供給拠点なら早急につぶすべきだ!!そうすればハンガリー人部隊の第7・8軍は無力化できる!!」
会議は紛糾したが、結局きわめて低速、確認等を徹底してゆっくりと進撃を開始した。目標はレンベルク。
ただこの遅々とした進撃はオーストリア軍に立て直しの時間を稼がせることになる。ただその時間は想定よりもはるかにかかることになる。
オーストリアハンガリー参謀本部
「第3軍しか入っていないだと!?」
フランツ・コンラート・フォン・ヘッツェンドルフが叫ぶ。
「第3軍と第8軍のおよそ半数が市街地に入りましたがそれ以外は…」
「年に入った兵力が想定の半数にも満たしません。敵両翼に第11・8軍の主力が展開しており、包囲網の形成には至れません。」
「ならば両翼を強行突破、包囲殲滅戦に移行する!!第8軍と第3軍に攻勢命令を出せ!!」
墺第3軍
「こりゃ処分されてたほうがよかったな。まあ処分している暇がないということなのだろうが。」
無断退却を実施した第3軍司令官のルドルフ・フォン・ブルーダーマンはぼやく
「突撃命令ですね。いくら本国から補充兵、補充部隊が送られてきたと言えども武装はドイツ製の速射性が低い小銃、兵士は練度不足。従来通りの戦力としてみなすべきではありません。」
「従来の7割程度の戦力としてみるべきだろうな。」
「それで再編成後に兵力充填されたロシア軍相手に突撃しろと?」
「総司令部は相手も消耗していると思っているんだろ。全く、武装一つとっても撤退時放棄したものを鹵獲運用できるロシアと違ってこっちは後方から持ってこないといけないというのに。」
「で命令は?」
「できるわけない命令守るだけ無駄だ。形だけの攻勢、逆撃に備えて陣地構築を急げ。」
ハンガリー第7軍
サボルチ・ホルティー 中尉
前線は地獄だった。ロシア第8軍はレンベルク市街地とその南オーストリアハンガリー帝国軍第7軍正面に展開している。およそ戦力比は1.5倍。通常ならば苦戦はしつつも前進はできるだろう。しかし前進できない。
「糞!!なんて巨砲を打ち込んでくるんだロシアめ!!」
兵士たちは巨砲が開けた地面の大穴の中でうずくまるしかない。
ハンガリー第7軍にとっての不利はロシア第8軍の砲弾幕の中心点に突入してしまったことにある。
ロシア第8軍は砲兵隊が展開すれば、対砲兵射撃で住民に犠牲を生む可能性が高い市街地に半数が展開している。そのために市街地でない領域を守備するロシア第8軍に対する砲兵支援が極めて手厚かった。さらに攻勢あることを予期し、各種機関銃陣地(これも当時の機関銃がのちの重機関銃であったことから市街地では機動性のなさが問題になる)重砲兵陣地すら設営。迎え撃てる状況にあった。そこにハンガリー第7軍が突っ込んだ形になったのだ。
その結果、砲弾の雨が降り注ぐ戦場となった。塹壕を掘っている暇のないハンガリー軍はその砲弾にまともにさらされることになった。兵士たちは砲弾が開けた穴に逃げ込む。何もないところよりは死ににくい。
「砲弾が来るぞ急げ!!」
砲弾の飛翔音がする。空を見上げる。稀に飛翔中の砲弾が見える場合がある。その時筋に見える砲弾は当たらない。だがその砲弾は点に見えた。
「飛べ!!そのまま伏せろ」
サボルチは叫んだ。と同時に自らも地面に頭をこすりつけるかのように伏せた。だが間に合わない。背から砲弾の破片、爆風に吹き飛ばされた。
ロシア第3・8軍共同司令部 レンベルク
「総司令部からの伝令兵です。先日のレンベルクの市街地戦命令の続報です。」
「最悪だな…失敗したらおそらく処刑もんだな。」
伝令兵から見せられた書類を見ると将軍はつぶやく。
「ラズスキー大将(第3軍司令官ニコライ・ラズスキー大将のこと)私の左翼第8軍の正面を広げる。敵の攻勢の隙間を縫って戦術予備を展開させる。右翼第3軍は反攻に備えてくれ。」
「ブルジーノフ大将(第8軍司令官アレクセイ・ブルジーノフ大将。史実1916年に行われたブルジーノフ攻勢の発案者)すまない。ねらい目はハンガリー第8軍を吸収した第7軍ではなく、第3軍。奴らが後輩に到着し次第、攻勢を開始。およそ2.5倍の兵力差をもってこれを撃破する。」
「祖国の勝利のためだ。問題ない。それに左翼の相手はハンガリー兵だからな。練度が低い。狩場だ。多少兵力が少なくとも影響はない。」
「練度不足か…我々も人のことを言えんがオーストリア=ハンガリー帝国軍はそれ以上にひどいものだな。」
「正面の墺第2軍はセルビアからの転戦部隊だそうだが、練度が低い。第3軍もだが大量の補充兵が入っているようだな。ハンガリー人部隊の7軍はもちろん、合計1.8個軍の攻勢をわが第8軍だけで短時間ながら食い止めれている…第11軍と第3軍が墺3・8軍の熟練兵を始末してくれたおかげだな。」
「では待つとしようか…。」
正直ガリシア戦線情報なさ過ぎて書くのに時間がかかる。情報がビミョーな線であってはっきりとしたものがないというえげつない状況。完全オリジナルできればそんなん気にしないで済むのになー




