表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
改史 大戦  作者: BT/H
67/83

第5章 第1次世界戦争編 F-0004 戦局の狭間

ストックが…ない!!

 1914年8月30日 ロシア近衛騎兵旅団および第11軍司令部

「お待たせした。」

 第11軍司令官アンドレイ・ニコラエヴィッチ・セリバノフ大将は頭を下げる。

「セリバノフ大将閣下そのようなお言葉」

 マンネルヘイム少将がまじめな顔から笑い顔に変えながら

「第3軍に勝ってからにしたいものですな」

 と言い放つ。同時に場が笑いに包まれる。

「そうじゃの第11軍も到着しているのは快速部隊と徴発した馬車に乗ってきた部隊だけ。少将が敵を分散させておいてくれたから対抗できているだけじゃ馬車は直ちに戻してピストン輸送させる。」

「はい。少なくとも第5軍方面への進撃を止めねばなりません。」

「そこでだ。第11軍から近衛騎兵旅団に補充の騎兵を回す。多大な損害が出ているだろう。だがもうひと働きしてもらうぞ。」

「了解いたしました。」

 直後、マンネルヘイムは顎に手を当て考え事をする。

「どうした」

「そうですか。ならば旅団は最右翼ですな。敵軍撃破と同時にわが旅団は敵領に侵入します。」

「しょ、少将は挺身騎兵戦法をするつもりかね。」

 マンネルヘイムは首を縦に振る。

「無謀だぞ!!死に行くようなものだ」

「空の目があれば十分です。部隊の輸送完了後、調達した馬車に航空燃料と整備兵を。積載してゆきます。そして偵察機も。」

「すまぬな。無理をさせる。」

「勝利のために。」


 墺第3軍

ルドルフ・ニコラウス・リッター・フォン・ブルーダ―マン騎兵大将率いるオーストリア=ハンガリー帝国陸軍第3軍はロシア帝国第11軍と会敵した。

「敵兵力増大。右翼前方方向にロシア軍師団規模が展開の模様。」

 オーストリア=ハンガリー帝国軍は兵力の増大に対して恐怖する。マンネルヘイム近衛騎兵旅団の活躍で多くの部隊が戦力を保持しながらも脱落した。後続部隊が追いつくとは言えども戦力の逐次投入になる。

「ですが、敵兵力は騎兵を除き、師団レベル。しかも歩兵のみ」

「それについては我々とほぼ同じではないか」

「ですので増援到着時間までが勝負です。」


 1914年8月30日 ロシア近衛騎兵旅団および第11軍司令部

「ですので増援到着時間までが勝負です。」

 マンネルヘイムは作戦会議で状況を説明している。

「通常ならばいつ敵が来るか騎兵偵察をかけるのだが…」

 答えるは第11軍司令官アンドレイ・ニコラエヴィッチ・セリバノフ大将同軍の参謀以上に彼を信用しているようだ。そこには差別意識はない。

 のちにフィンランドの英雄と呼ばれるカール・グスタフ・エミール・マンネルヘイムは当時、ロシア帝国に支配されているフィンランド出身である。当然、被支配民に対する差別意識があったのだろう。

 彼がロシア帝国軍人時代、できるだけロシア本国から離れた地域で任務に就いたこと、徹底的にロシア皇帝への忠誠心をつらぬき、母国語であるフィンランド語を忘れるほどであったのはこの差別意識に対する行動ではなかったのではないかと考える。その行動によって近衛騎兵旅団を任されるとは皮肉だっただろう。

「しかし偵察機がいます。敵軍の情報は我々に優位性があります。」

 いいやむしろロシア人になりきろうとしたのではいだろうかとも思える。

「便利な時代だな。騎兵に頼らずに敵情が分かるとは…」

 老将は過去の戦争を思う。

「便利ではなく必要になってくるでしょう。先日イリヤー・ムーロメツを見に来た日本の徳川空軍中佐(当時)も同様のことを言っておりました。」

 ロシア帝国は開戦当時世界有数の航空大国だった。自国開発の機体は少数だったが輸入やライセンス生産機が多いのだろう。史実開戦時の保有機数は200機を超え、ドイツとほぼ同数、英国の倍の数だった。

 このようなロシアで開発された世界初の4発大型旅客機S-21ルースキー・ヴィーチャシとその発展量産型のイリヤー・ムーロメツである。かの有名なシコルスキーの設計機であり、当時のロシア航空業界を支えていた人物でもある。徳川もこの飛行機に興味を持ち、見学に来ている。

 なお、この飛行機の見学直後にサラエボ事件が発生。徳川は本国に報告書と電報を送ると同時にオーストリアハンガリー帝国に移動、開戦確実になると、大急ぎでイタリアに逃れ、そのままイタリアでの兵器調達を行っている。

「徳川か…確か日本の将軍の一族の者か…普通ではありえんな。生かされていること自体が。」

 日本以外では考えにくい。滅んだ王朝の関係者が皆殺しになることが多い世界では。だがその分興味を持たれるだろう。それだけでも交渉初めの話題作りにはなる。話すネタがある分、交渉は早く進むのだろう。

「まあ、今回の戦生き残らないと話にはならんでしょう。徳川のごとく生き残りましょうよ。あとわが騎兵旅団は…」


 墺第3軍

 墺第3軍と露第11軍との戦場は双方が強行軍であったがためにすべての師団が戦前に到着してからではなく、五月雨式に互いの部隊が到着。それによってたびたび戦力比がひっくり返る動きの激しい戦場になった。

「糞。ロシアめこちらの増援に対して的確な用兵をしやがって突破できぬではないか。」

 大きな違いはオーストリアが攻め、ロシアが守る。そのような戦闘が繰り広げられた。攻勢側が不利になるのは当然だ。

「敵右翼部隊は先日から時間稼ぎを仕掛けてきた騎兵部隊だぞ。疲労の極致にあるはずだ。」

「し、しかし、最も機関銃の弾幕が激しいです。あれを!!」

「四の五の言うな」


 マンネルヘイム近衛騎兵旅団

「機関銃部隊出番を待たせたな。打って打って打ちまくれ。」

 確かに主力部隊は疲労の極致にあっただろうが、支援部隊である重機関銃部隊は騎兵の機動的攻撃についてゆくことができず、基本的に後方待機していた。その状況では騎兵隊主力と比較し、疲労は薄い。

「騎兵砲隊。支援砲撃。わが軍唯一の砲兵火力を見せつけてやれ。」

 同様に疲労のたまっていない部隊に随伴の騎兵砲兵がいた。騎兵砲は騎兵隊と進撃できるほど軽量の大砲である。ただし、携行できる砲弾の数に制限があるので長期の砲撃はできない。だが今回の戦いの場合。遅滞用の夜間のハラスメント砲撃というあまり砲弾を消費しない任務しか行っていなかった。そのため砲弾がある状態で会敵したた。

 何よりも味方の補給線と接続できたので時間さえ待てば補給の砲弾が到着する以上砲弾をけちる必要はなかった。そして双方が強行軍であったがために動きの遅い砲兵が脱落。到着が遅れていたために両軍唯一の砲兵であった。


「備蓄砲弾が切れて構わん。撃ちまくれ。」

 騎兵砲による砲撃が戦術的な優位を維持できる期間は短い。敵味方のどちらかの砲兵が到着した時点で戦力価値が失われる。それならば今使い切ったほうがいい。

「今後の作戦を考慮に入れれば騎兵砲は足手まといだ。騎兵砲は一時的に第11軍に引き渡したほうがいい。」

 マンネルヘイム旅団長は自ら志願した作戦の困難さを思う。


 墺第3軍 増援部隊

 上空にはロシアの偵察機が飛んでいる。

「飛行機か…便利だな。」

 指揮官がつぶやいている。

「セルビア戦線に航空兵力を回さなければ我々も!!」

「フランツ・フェルディナント皇太子の仇討ち戦争だ。それに統合参謀本部の作戦案に基づき、優先撃破の方針だ。我慢するしかない。」

「しかし第2軍はロシア方面に転戦しています。」

「第2軍は転戦時にセルビア方面軍の補充のために一部師団が抽出されている。セルビア方面に残存した2個軍は消耗しきった軍ではなく、編成完結した軍だ。セルビアの反抗があっても橋頭保を確保できる。今の第2軍は帰還した第2軍残存と国内で新規編成されていた予備軍によって構成されている。だからこそ第2軍は一部とはいえ戦場に早々に到着している。」

「なぜ!!」

「2個軍は2個軍だ。諜報にとってみれば消耗した2個軍か完全充足の2個軍かは判断がつかない。ついたとしても時間がかかる。幸い、セルビア方面にも多数の貨物列車が向かっているから輸送面への防諜は問題なかった。セルビア戦線のほうが早期終結が可能ならばそちらを優先する。そうしなければロシアに対して守勢をとることすら困難になる。セルビア戦線を終わらせなければならないのだ。」


 ロ軍後方簡易飛行場 イーゴリ・イヴァーノヴィチ・シコールスキイ技師

「秋山殿と徳川殿…」

 目の前にある機を見てイーゴリ・イヴァーノヴィチ・シコールスキイ技師はつぶやく。

 彼は開戦寸前、このイリヤー・ムーロメツを視察しに来た大日本帝国空軍所属徳川空軍中佐はこの機体を見てすぐに原型機と派生爆撃型を発注した。そしてすぐに爆撃型の試作に入った。そしてそれは開戦決定とともに急がれた。結果、旅客機型を急遽改造した急造爆撃機型の製造がおこなわれた。

「客室の一部の撤去に伴う軽量化と爆弾を落とすための扉の設置…程度の急造機だが、爆撃のテストには十分だな。」

 それを見る機長はつぶやく。

「第11軍からの支援要請が届いています。墺第3軍の進撃遅延を目的とした爆撃行動…。まあ敵軍の中に爆弾ばらまくだけの任務ですね。」

 同副機長がつぶやく。

「前線基地にもすでに爆弾に使う物資の接収を行うように命じてある。まあ、陶器に火薬と火種、入れそれに破片を入れるだけの簡易爆弾だから正式なものではないし現地調達もできる。燃料・整備兵も現地基地にある航空機のものを流用すればいい。いくらでも反復攻撃を仕掛けてやれ。」


 マンネルヘイム近衛騎兵旅団

「敵がイリヤー・ムーロメツの空襲に手を取られている間に当方の増援到着。」

 イリヤー・ムーロメツの空襲は散発的な代物だった。それでも犠牲者が出る。それを助けるために時間を費やされ、先行すればさらに部隊は分散させられる。そしてオーストリア軍の第1陣増援は大きく減少した。

「行軍を敢行していればよいものを。そうすれば各個撃破してやったのに!!」

「グダグダ言っている前に陣地を増援師団に引き渡して旅団は作戦行動に入る。相棒(馬)を迎えに行くぞ!!」

 マンネルヘイムは叫ぶ。マンネルヘイム近衛騎兵旅団はかつて自軍の世界最強とうたわれたコサック騎兵を打ち破った秋山支隊の戦術である下馬戦闘を実施している。行軍中の機動性、戦闘時の離脱能力では騎兵は優位であるがその巨大な馬体は射撃の的になるため守戦では不利になる。その場合の対抗処置としてあえて馬から降り、歩兵となる。

 歩兵ならば塹壕に隠れ、銃弾をやり過ごしながら射撃することができる。それに逃走防止にもなる。

「戦死した連中の馬は荷馬に回せ。奴らのためにも勝利するを!!」


 墺第3軍 司令部

「敵右翼部隊に敵増援が到着しました。戦力比が逆転しております!!攻勢の中断を!!」

 ロシア右翼に展開するマンネルヘイム近衛騎兵旅団を攻撃している部隊は大きな被害を出している。ロシアの増援が到着した今、消耗した部隊では突破は困難だ。

「攻勢を続けろ!!消耗した部隊は増援で到着した連中と入れ替えて再編成しろ!!」

 指揮官は焦っている。戦局を決めるために北に転進したというのにそこに向かえないのでは意味がない。特に北側の戦線を突破、タンネンベルクの戦いで勝利し、ワルシャワに向けて進行するドイツ軍と合流すれは突出部の部隊すべてをせん滅することができる。

 これはハンガリー第8軍と共同で露第3軍を撃破する以上の戦略的な利点であった。

 それゆえに彼らはそれに固執した。そのため消耗した部隊を補うために五月雨式に到着した増援は移動による疲労をとる暇もないまま戦線に投入された。

「攻め口を変えられないのですか!!」

「ロシア第11軍は待ち受けているのだ!!双方消耗しているロシア右翼に攻撃を集中したほうがいい!!」

「戦略目的を達成することはすでに不可能です。これ以上戦力差が開けば敵騎兵が再び行動の自由を得ます。その場合、増援部隊に進軍妨害攻撃を仕掛け、さらに戦力差を増大、そのうちに敵増援部隊が両翼に展開。先鋒が包囲全滅されます。先鋒部隊にはわれら第3軍司令部があります。第3軍は全滅しないものも将が討ち死に戦力価値は皆無になってしまいます。その前に戦力の維持に努めましょう。将軍!!」

「しかし…司令部には…報告を…」

「上に何か報告したのですか!?いいや報告してもその報告に対しての返答が間に合うのですか!!『上からの命令を待ったって状況がよくなるわけではない』んです!!」

 カッコ内はかの有名な大モルトケの言葉でもある。

「独断専行せよというのか!!戦略目標の統一に背くぞ!!」

「戦略目標自体が無茶苦茶だったのです!!その戦略目標を策定した奴が阿保なんです!!上がミスをした際に現場は独断でより被害を少なくしなければなりません。」

「しかし…」

「閣下、このままで司令部は失われます。撤退しても司令官は同じ道を歩むことでしょう。」

「おい!!」

「…」

「しかし救える部下をも道ずれされるのは本末転倒ではありませんか!!この戦闘は祖国防衛のための戦闘なのですぞ!!兵士も国民。無駄に兵を死なせては!!」

「わかった…後退しよう。騎兵隊への新規部隊の突撃をやめさせ、損耗した部隊をかばわせろ。全力後退が可能になったタイミングで左翼部隊は全力後退。牽制をしていた中央・右翼の隊は殿だ。相互支援後退をしつつゆるゆると下がるぞ。いかにも防戦中と見せかけるようにそのほうが敵前逃亡と思われないだろうからな。」

「ありがとうございます。」


感想は燃料です。どしどしお願いします最近ないよ―――(泣)

士気が落ちる。別作品書きたくなる。(飽きる。)


 次回更新は30を予定(いつもより1週間遅いです。ストック不足。)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ