表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
改史 大戦  作者: BT/H
66/83

第5章 第1次世界戦争編 F-0003 マンネルヘイム騎兵旅団

 1914年8月15日 クラニスク ロシア帝国軍第4軍

「第5軍敵との交戦の突入。側面を攻撃された上に敵の罠にはまり、出血を強いられております。」

「第9軍の増援もまだ到着しません。」

「…増援には来れないか…追撃されないように後退。クラニスクは放棄する。これ以上敵の侵入をさせないように防衛線を構築する。上からは第3軍の戦局優勢とのことだ。マンネルヘイム近衛騎兵旅団長からの作戦案を承認する。第3軍に向かうように伝えてくれ。」


 同刻 オーストリアハンガリー帝国軍司令部

「第1・4軍はロシア第4・5軍を撃破しましたが敵軍も陣地を整えて容易に突破することができません。両軍はロシア第4・5軍を分断すべく行動中。両軍からの上申書です。」

 伝令に来た兵士が作戦案の書かれた書類を渡す。

「第3軍を北上させろ。第3軍はロシア第5軍左翼から敵を包囲しろ。」

「第3軍は交戦中ですが…」

「穴埋めに予備軍の第8軍を前進させる。守備ならできるはずだ。」

「了解いたしました。」


 1914年8月19日 近衛騎兵旅団 マンネルヘイム少将

 ロシア近衛旅団は露第4軍を離脱。露第5軍後方を迂回して露第3軍方面に向かっている。ほかにもタンネンベルクの敗戦でワルシャワ方面の守備が薄くなったために露第9軍の露第4軍への援軍は中止。ワルシャワに引き返している。

「偵察機だ。」

 マンネルヘイム少将が空を見上げる。ロシア軍は広大な領域と比較して航空機の数が少ない。そのため航空偵察は不十分だった。それでも航空偵察に関して半ば強引に要請、実施させていた。

 これは当時の航空機の航続距離が短く、ロシア国内に近い領域を走る近衛騎兵旅団が偵察による支援を受けやすい状況であったことも良い方向に働いている。

「『テキグンミユ』あとは位置情報と進行方向です。」

 偵察機は発火信号のモールスで敵に関する情報を知らせてくる。

「迂回するしかない。敵軍だからな。」

 敵=オーストリアハンガリー帝国軍、軍=軍規模、見ユ=発見 ということである。軍規模は2個軍団以上、すなわち4個師団以上の兵力が存在する。師団の半分から7割程度の戦力価値しかいない旅団にとっては荷が重すぎる。

「しかし他軍には知らせる必要があるかと。」

「夜間威力偵察を実施する。例の武器の用意はできているな。」

「試作品ですけど用意できています。レバーアクション小銃の用意も。」

「短時間の火力は十分だ。少なくとも1人以上お友達を招待する。軍の名前がわかれば敵軍の動きがはっきりする。だがその前に第3軍と第5軍に伝令を出せ。」

「ハッ」


 同日夜2345 オーストリアハンガリー帝国軍第3軍

「襲撃だ!!」

 野営をし、一部の兵士を除き眠りにつくオーストリアハンガリー帝国軍は馬の足音と砲撃音で目を覚ます。襲われたのは前哨陣地ではなく、右翼の立哨兵だ。

「敵は騎兵。馬を攻撃しろ!!砲兵隊には照明弾を打たせろ。炸裂高度は気にするな!!」

「しかし!!それでは着弾してしまいます。」

「着弾しても構わない。直撃しない限り死ぬことはないし、低高度至近距離で炸裂した照明弾は閃光と同じ。馬を混乱させられる。」

「了解。」


「新兵は捕虜を載せて後退しろ。騎兵砲兵の交代準備を手伝え。」

 兵士たちが気絶した捕虜を馬に括り付けて後退する。直後、空が明るく照らされる。

「照明弾です。」

「後退しろ。砲兵は航空隊が何とかしてくれる。騎兵砲兵対抗射撃開始。急げ。」


「位置座標打電。手製手榴弾投下」

 この時、マンネルヘイムはロシア司令部に大規模な航空支援を要請していた。そして十数機の航空機が集結した。全機が無線機を搭載しているだけではない。それは逆に功を奏するときもある。無線機分の重量を別に使えた。手製手榴弾を搭載することができたのだ。

 この手製手榴弾は現地製造品の正式採用品であるが名称自体はない。初の実戦は日露戦争。どちらが初めてこれを作ったかは分からない。はじめは手に入る陶器やガラス製の瓶に火薬を詰め栓と導火線を繋げたものだった。これを投げ地面にぶつかれば割れる。導火線の火に中に入っていた火薬に引火。爆発する。

 戦中戦後、日本はこれを改良した。やわらかい地面に当たれば割れない可能性があるし、現地に都合よく十分な数の陶器があるわけでもない。投げ返されるリスクや中に鉄片などを仕込みたい関係上この状態では不十分だった。

 内部構造を二重化し、内殻内に火薬、外殻(陶器製)と内殻(不明)の間に鉄片や小石、ガラス片、陶片などを仕込んだ。着弾時に確実に爆発するように着発信管を備えた。改史ではこの図面はロシアの開戦、日本の参戦とともにロシアに提供された。ロシアにも手榴弾はあった。だが製造に火薬以外の戦略資源を必要としない陶器製手榴弾は有用な兵器だろう。

 目標はオーストリアハンガリー帝国軍砲兵陣地だった。


 1914年8月20日 ロシア近衛騎兵旅団

 ロシア近衛旅団は逃走に成功した。騎兵隊は後方に置いていた騎兵砲を回収、複数の捕虜を得て敵の追跡範囲から脱出することに成功した。

「損害は軽微。捕虜からの情報で敵は第3軍です。」

「第3軍は当方の第3軍と交戦しているという情報だったが、北進しているということになるな。」

「当方の第3軍と交戦しているのは第3軍ではないのですか!?」

「戦局は刻一刻と変わる。それは古い情報になっただけだ。第3軍は他軍により足止めされており、その間に墺第3軍が北進していると私は推測する。」

「なるほど…」

「この軍はどこに向かうと思う?」

「北に向かっているということは…当方の第5軍側面が危ないと思います。」

「総司令部に増援要請をしろ。第5軍がやられたらワルシャワは持たない。編成中の第7・11軍のどちらかを向かわせなければ戦線が崩壊するぞ。」


 1914年8月21日 オーストリアハンガリー帝国軍第8軍

 レンベルクで編成が完了したオーストリアハンガリー帝国軍第8軍はハンガリー人部隊である。史実、オーストリアハンガリー帝国では多くの兵士がドイツ語を話せることを基準に選ばれており、それ以外の民族は軍隊内の意思疎通の関係で兵士にならなかった。改史では軍単位で各言語をそろえることで2個軍の編成を可能にした。しかし、同様のハンガリー人部隊の第7軍の編成が優先されたために部隊の充足率が低かった。しかし戦局はそれを待ってはくれない。ロシア帝国軍に局所優位を構築させる戦術をとる。その関係で戦域を離れる第3軍の穴埋めに第8軍が前進したのだ。

「反対です。われらが第8軍はドイツ人部隊よりもはるかに武装が劣る上に今回は数が足らない。明らかにハンガリー人に血を流させる作戦に乗る必要はありません。」

 ハンガリー人部隊にはもう一つ特徴があった。武装がドイツ人部隊とは違うのだ。ドイツ人部隊は最新鋭のマンリッヒャー1895のドイツ製銃弾仕様、ハンガリー人部隊は予備武器として保管されていたドイツ製モーゼルGew98小銃である。銃弾の共通性こそあるが速射性能があまりにも違いすぎた。マンリッヒャー1895は速射性が高い設計だったがその分製造コストと労力を必要とした。工業力についても列強に劣るオーストリア=ハンガリー帝国は改史においてはドイツ系銃弾である7.92㎜モデルへの換装・新規製造に製造能力をとられている。結果的に予備武器のすらドイツ帝国に頼らざるを得ない。

ドイツ人部隊のマンリッヒャー1895がストレートプルボルトアクションライフルであることと比較して速射性能は低いそれはすなわち瞬間火力の低さを意味する。

さらに世界初の軽機関銃ともいえるマドセン機関銃はその数の少なさ、戦時新規編成ということから配備はなく、自国製のシュワルツローゼ機関銃も予備の不足から第8軍にだけ配備数が少ない。

「命令だいくらわが軍の戦力が低くても死守しなければならない。ハンガリーの同胞はすべてわが軍に送り込まれてくる。耐えれば勝てる。耐える策を講じろ。」

「了解。」


 1914年8月21日 近衛騎兵旅団

「本当に偵察機とは便利だな。敵軍の弱点が手に取るようにわかる。」

 マンネルヘイム少将が率いる近衛騎兵旅団は墺第3軍への襲撃行動を継続している。目的は時間稼ぎだ。第11軍の到着まで時間を稼がなければならない。そうしなければ露第5軍は壊滅。次につぶされるのは第4軍だ。第4軍が失われればワルシャワと第9軍、第2軍残存部隊だ。

 だが、兵力差は圧倒的だ。そこで偵察機の出番だ。陣形の弱点や兵力の粗密を見抜き、襲撃する。

 元々露第3軍司令官のルツスキーという男は慎重だった。鈍重ともいえる彼は守勢に強い人間だったと思われる。これに襲い掛かった墺第3軍の損害もばかにならない。その上時間稼ぎのための英雄的襲撃行動だ。

 この場合、騎兵旅団も大損害が予想できる。墺第3軍が襲撃に備えれば戦略目的を達成できるが、いわば罠の中に飛び込むようなものだ。

「少将。便利ってもんじゃありませんよ。空の目がなければ我々は全滅しています。」

 その中で近衛騎兵旅団が許容範囲内の被害で済んでいるのは上空からの目。偵察機からの情報だ。彼らの作戦行動には必ず発火信号装置を搭載した偵察機が随伴。敵軍の情報を的確に収集。襲撃と被害を最大効率にしていた。

 これで陣形が分かる昼間は問題ない。夜間は夜間で昼間のうちに見つけておいた野営地に対して騎兵砲によるハラスメント砲撃だ。

 これらを防ぐには進撃を停止しなければならない。

 この場合、最も厄介戦術は快速部隊による先行。この場合、先行部隊の存在に気がつければ問題ない。足止め部隊分戦力は減るうえに快速部隊をたたけばいい。これも偵察機で把握、快速部隊を襲撃することを繰り返す。

 さらにこの場合戦力の遊兵化や分散もできる。その分犠牲は大きい。決死の時間稼ぎだった。


 皆さんお気づきのようにマンネルヘイム少将は日露戦争時代にも登場しています。そしてのちの世にはもっと有名な人間です。

 実際、彼の活躍書くこと多いですがすべて創作です。日本語資料しか読めない私にはわかるわけない。それに架空戦記ですしね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ