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改史 大戦  作者: BT/H
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第5章 第1次世界戦争編 F-0002 遭遇戦

 ロシア対オーストリア軍の遭遇戦の開始です。


 ガリシア戦線

 1914年8月8日 

 オーストリア=ハンガリー帝国軍前進開始。


 1914年8月12日 クラニスク オーストリアハンガリー帝国軍第1軍

「撃てェ」

 オーストリア=ハンガリー帝国軍はロシア第4軍と不機遭遇戦に発展した。

「狙いと速射性で敵を圧倒しろ!!」

 再記するが、第1次世界大戦初頭の戦闘は有名な塹壕戦ではない。塹壕にこもらないで平地にて散兵戦となる。この散兵戦は一世代前のマスケット銃兵による戦列歩兵の横列陣形を一掃した。これを実現したのは銃の命中精度と速射性の差だ。マスケット銃という旧式銃は命中精度が極めて悪く、多数の歩兵による一斉発射による弾密度の向上で補うほかなかった。

 しかし、命中精度と速射性の向上は多数の歩兵が集まっている戦列歩兵をただのでかい的に変えた。そしてそれは同時に兵士により訓練を課すことになる。

 戦列歩兵と散兵では教育レベルに大きな差がある。そのうえ条件も厳しい。

 後者については説明が簡単だ。戦列歩兵の横列陣形後方には指揮官が控え、敵前逃亡した兵がいればその場で射殺することができる。しかし散兵はマスケット銃よりもはるかに強力な機関銃陣地に突撃することさえある。この恐怖は戦列歩兵とは比べ物にならないだろう。そして指揮官は広範囲に部下が散らばっているために敗走する兵士を射殺することができない。

 つまりその条件がない兵士では散兵は成立しない。

 すなわち命を懸けて守るべき存在。それは家族であり、国家、名誉である。散兵は守るため命を懸け、命を捨てる。すなわち防衛的な欲求に伴うことだ。

 教育レベルは戦列歩兵が兵士たちと指揮官の距離が物理的に近いことや取れる戦術が限られていること。武器はマスケット銃。訓練すれば速射性や命中率が向上するが、練度が低くても戦えないことはない。何しろ目標はたった数十mの距離で撃ち合うのだから。(ライフルは数百メートルで使用するので訓練なしではまぐれ当たりに期待するしかない。すなわち練度の低い兵士の戦力価値はほとんどない。)

 では両軍の双方の条件はどうだろうか。

 命を懸けて守るべき存在では簡単だ。ロシア不利だ。

 ロシアは帝政末期。日露戦争の敗戦や日露戦争での負担、失政や行き過ぎた階級制度など不満がたまりにたまっている。この中、国家のために戦いたいものは少ない。特に一般兵士のレベルはかつて被支配階級の農奴とよばれた存在達だ。自分たちをいじめてきたやつらのために戦うなど馬鹿らしい。

 オーストリア=ハンガリー帝国は皇太子を暗殺され、自国の顔に泥を塗られた。そのための懲罰戦争という意識が強い。復讐心。これは広義における防衛的な欲求に該当する。

 そのためにロシア軍よりも戦意は圧倒している。

 前者についてはロシアもオーストリア=ハンガリー帝国も変わらない。双方ともに総兵力・人口に比して予算が少なく、練兵に金をかけられない。そのため練度は低い。ロシア軍は人口が多すぎることが足を引っ張り、オーストリア=ハンガリー帝国は予算がないことが足を引っ張っているのだ。

 そしてオーストリア=ハンガリー帝国の正式小銃シュタイヤー=マンリッヒャーM1895は他国のそれと比較して速射性が高い。練度はほぼ同じ。しかし単位時間当たりの投射弾数の差が大きい。

「機関銃陣地の敷設急げ」

 しかし、それを阻害するものはある。機関銃だ。機関銃の投射弾数は小銃の比ではない。

オーストリア=ハンガリー帝国軍はシュワルツローゼ重機関銃。ロシア帝国はPM 1910重機関銃やマキシム重機関銃が主力だ。これらの機関銃は重機関銃という分類がなされている。

 この重機関銃は速射性が良い代わりに重量が極めて重く、複数人での運用が前提になる。そのため展開に時間がかかる。

 問題はそれ以外の機関銃が存在することだ。

 マドセン機関銃…世界初の軽機関銃とのちに呼ばれる兵器だ。軽機関銃は重機関銃よりも速射性は低いが、圧倒的に軽い。一人でも運用ができないことはない。そのため重機関銃よりも早く展開することができた。

 オーストリア=ハンガリー帝国では史実1914年に632丁、ロシア帝国は1250丁を日露戦争に投入している。

 改史では開戦初旬にドイツ帝国から製造国のデンマークに外交圧力がかかり、マドセン軽機関銃の製造設備と製造特許すべてを半分奪われるようにデンマークはドイツに売却した。その設備はこの時点では製造開始されておらず、戦前導入分以外にオーストリア=ハンガリー帝国で運用されているその数632丁すなわち史実で1914年の導入された銃の総数である。

 これをドイツ系兵士の所属する第1~6軍に各100丁。残りは練兵や試験運用されている。

 ロシア帝国は広範囲に軍を分散させているが、東欧を除く極東、西アジア、中央アジアなどの国境はすべて同盟国が軍事レベルのはるかに劣る国家、もしくは軍事力をなめられている国家に囲まれている。そのためこれらの地域にマドセン軽機関銃が配備されることはないだろう。そのために脅威になる東欧に存在する9個軍と編成中の3個軍計12個軍に1200丁各100丁 すなわちほぼ互角だった。

 しかし、製造設備の奪取により、今後、デンマークから連合国に武器が輸出されることはない。この世界初の軽機関銃もだ。その点ではオーストリア=ハンガリー帝国が有利だ。だがこの戦闘には全く関係がない。

「しっかり狙え!!やみくもに撃っても勝てんぞ!!」

 小銃と機関銃双方には利点と弱点がある。小銃は1発ずつ狙って撃つので機関銃よりも命中率がいい上に弾薬消費が軽い。機関銃はその逆であるが、制圧力…すなわち敵を前進させないようにすることや小銃兵の射撃を妨害することが得意だ。

 シュタイヤー=マンリッヒャーM1895の連射速度を考慮すればオーストリア=ハンガリー帝国軍が若干有利といったところだろう。

 さらに改史ではロシアよりもはるかに早くオーストリア=ハンガリー帝国が戦闘を開始したことによるロシアの戦闘準備不足があった。

「マドセン機関銃!!掃射。小銃手は移送中の機関銃を妨害しろ!!敵の小銃兵は機関銃に任せろ」

 双方銃撃を避けるために伏せる。その状態で敵を討つ。

「突撃してくるぞ!! シュワルツローゼ機関銃全力射撃開始。敵を近づけるな!!」

 戦力がほぼ拮抗している以上、敵に対して突撃を敢行することは不利をもたらす。

「イワンの奴ら焦ってやがる。」

 それをわかる人間は叫びながら応戦する。セルビア戦線がオーストリア=ハンガリー帝国有利に進んでいたためである。それに対抗してオーストリア=ハンガリー帝国軍も時折突撃を敢行するので戦線は膠着状態に陥った。


 同刻 ロシア帝国第4軍所属 近衛騎兵旅団

「マンネルヘイム旅団長突撃命令です!!」

「軍司令は馬鹿か!!騎兵が騎兵陣地に突撃しようもんならただのでかい的になるぞ!!」

「しかし…命令は命令です。」

「ならば適当に戦って後退する。次の作戦を考えるぞ。」


 1914年8月15日 クラニスク東方 オーストリアハンガリー帝国軍第4軍

「見えた…総員着剣…マドセン機関銃手は前に出ろ。総員突撃用意。」

 指示を出す将官が稜線から若干頭を出し、双眼鏡で敵を見ている。後方では敬礼をし、走り出す伝令兵。命令が伝わり、音を鳴らしながら小銃の先端に小さな刃物をとつける兵士たち。

「間合いが遠すぎます…敵陣に到達する前に兵が疲れ切ってしまいます。」

 副官が同じように双眼鏡で敵を見ながら将官に伝える

「…射撃しながら休め…全員が先陣で突撃する必要はない。だが先陣は名誉だ。一番槍を入れた者は名誉と勲章、賞金が与えられるぞ。一番に突っ込むのと一番槍は違うぞ。生き残らねば一番槍とは言わん。生き残ることを考慮に入れて突撃するよう命じろ。」

 再度、伝令兵が走る。

 さらに彼はさらなる命令を伝える。

しばらくして伝令兵が戻ってきて準備の完了を伝える。将官は腰のサーベルを抜く。

「突撃!!我に続け!!」

 兵たちが走り出す。直後、機関銃手がマドセン機関銃による支援射撃を開始する。

 オーストリア=ハンガリー帝国第4軍はロシア帝国第5軍との交戦状態に突入した。このロシア帝国第5軍はクラニスクで交戦中のロシア第4軍を援護するためにオーストリア=ハンガリー帝国第5軍に側面を向けた。その結果、行軍中に側面を突かれたのだ。

「シュワルツローゼ機関銃使用可能です。」

「マドセンは掃射しながら走れ!! シュワルツローゼは支援射撃を引き継げ!!砲兵隊は支援砲撃と照明弾の準備、工兵は鉄条網の敷設だ。急げ!!」

稜線の頂上にシュワルツローゼ機関銃の射撃状態を形成しようとする。が、ロシア軍の小銃弾によって斃れる

「糞機関銃手がやられている。第2陣歩兵支援だ。機関銃展開まで時間を稼げ」

 この時突撃した歩兵は4個師団以上所属する第4軍のうち1個師団だったそのほかの師団については突撃しないない。第二次作戦の準備をしている。

「砲兵隊準備よし。」

「工兵隊野戦築城完了。」

「照明弾発射。撤退支援開始。」

 

「撤退しろ。」

 照明弾は合図だった。この戦術は日本が日露戦争の四平市決戦で用いた戦術である。

 拳銃の信号弾では気が付かないことがあるが、大砲が打ち出す照明弾であれば判別ができる。日露戦争当時に照明弾は存在しているが、このような作戦に使用できるほどの数はないそのために砲撃いう荒っぽい手段がとられていたが今回は照明弾の保有段数もそれなりにあった。

 今回はさらに地形も加えている。小さな丘を利用し敵に見えないように野戦築城している。

 この時の野戦陣地はただの鉄条網を張っただけであり、敵の砲撃に対して防ぐものではないが、攻撃方向を限定し、機関銃による掃射と支援の小銃による精密射撃に特化している。

「撤退支援射撃開始。」

 乱戦になっては味方に当たる可能性を考慮して機関銃の乱射はできない。そのために乱戦に巻き込まれていなかったマドセン機関銃手が撤退しようとする味方小銃手を追うロシア歩兵に対し銃弾の雨を浴びせる。

「相互援護後退開始。」

 大抵、敵から逃げる際には部隊を2つに分ける。後ろ向きに歩くにしても追いかけるほうが早いのだ。ならばどうするか。妨害するのだ。

 この2隊をA隊・B隊と呼称する。この相互支援後退はA隊が全力後退(背を向けて走る) している間、B隊が敵軍の進撃を防ぐために敵を射撃する。A隊が適度な位置に来た時、その役割を交代する。すなわちB隊が逃げ、A隊が妨害射撃をする。この役割交代を繰り返す。これは後退においての基本戦術の一つである。

 今回は、これを突撃した部隊全体で行った。この場合、敵から完全に逃げるのではなく、後方に戦場を移動しているともとれる。完全に敵から逃走する場合、相当な練度もしくは殿という囮・被害担当部隊を置く必要がある。これは敵から逃げるのではなく、敵をおびき寄せるといったほうが良い行動だった。

「追撃しろ!!」

 ロシアの現場将校はこの行動に際し、追撃を命じる。この相互支援後退の利点の一つに敵兵力を削りながら後退できるという点がある。特に負傷させるだけの場合、この効果は大きい。負傷兵は戦死よりも厄介だ。助けに無傷の兵士2人以上を必要とし、医療品も消費する。そしてその負傷兵が叫べば士気に大きく影響する。

「飲まれるな!!」

 この相互支援後退には弱点がある。2つの部隊が相互に命を張ることだ。片方が恐怖にのまれ、片方を見捨てたとき、兵力の半分を失うとともに見捨てたほうも追撃を受け、壊滅する未来しかない。

 戦闘での死者のほとんどは追撃で生まれる。この後退・撤退は極めて難しい行動だ。

「マドセン補給のため後退します。シュワルツローゼ支援を引き継ぎます。」

「防衛線に接近。距離300」

「総員一斉撤退。」

「砲兵隊照明弾一斉発射」

「キルゾーンに敵が入った。打ち方はじめ!!」


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