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改史 大戦  作者: BT/H
56/83

第5章 第1次世界戦争編 E-0007 追撃の守り

「卑怯だぞ!!」

「戦時国際法違反ではない。そんなことを言っている前に敵艦隊の撃破の手段を考えろ!!」

「糞!!」

 敵艦に見つからないように極力光を抑えた暗闇の中艦橋要員が叫んでいる。

「…救命艇を用意しろ。艦尾に重油缶を積載・油をばらまいて待機させろ。」

「は?」

「合図次第火をつけて流せ。江風に知らせる必要はない。回避してくれるはず。2隻でまとまっているよりも分散していた方がいい。蚊やハエのごとく目障りに動いてやる。敵艦隊推定位置の後背に回り込め。」


 ドイツ東洋艦隊 旗艦シャルンホルスト

「回頭90度。減速。砲撃再開。副砲、小型巡洋艦撃ち方始め。」

 東洋艦隊は装甲巡洋艦2隻を先頭に3隻の防護巡洋艦が続いている。主砲弾は艦隊戦に際して必要だ。補給物資を積載する艦隊随伴の貨物船にも予備砲弾はもうない。使えない。

 しばらく砲撃が続く。しかしその時見張りが叫ぶ

「後方に異変あり!!…敵です!!駆逐艦サイズ数不明。光の向きの関係で敵の様子がわかりません。」

「駆逐艦だと!!応戦しろ!!」

「主砲は!!」

「節約だ!!右舷砲と小型巡洋艦のみで応戦しろ!!」

 ドイツ艦隊との戦力比が圧倒的。しかし、ドイツ艦隊は駆逐艦の水雷兵器を警戒した。伝統的に日本海軍の水雷戦闘は侮れない。初陣は日露戦争開戦時。最終的には日本海海戦で複数の戦艦を撃沈するまでに成長している。

「火を確認。敵艦炎上した模様。」

「火を狙え。さらに砲撃を継続」


 日本駆逐艦 浦風

「作戦成功。3隻目と4隻目の準備急げ。」

 浦風は自身の撃沈を偽装したのだ。明らかに射程外から気が付かせるために砲撃。しばらくして砲撃をやめた直後に救命艇を燃やし艦尾から流す。それを2回。それで浦風と江風の撃沈を偽装したのだ。

「無駄打ちしてやがる。」

「やつら砲弾の補給もままならん。砲弾1発でも消耗させてやれ。」


1914年8月29日 AM01:40仏領マルキース島 時津風

「磯風・浜風に引火。」

「石炭の放棄急げ!!」

 ドイツ艦隊が放った砲撃が長距離作戦に備えて積み込んだ石炭に引火した。各艦ともに石炭を捨てる作業を大急ぎでやっている。だが間に合わない。特に磯風・浜風は炎上する4隻の一番近い位置で補給をやっていたそれは両舷から石炭を捨てられないことを意味した。片舷を乗員救助に投入するしかないからだ。

「あの2隻の自沈の必要性はあるか?」

「2隻が明かり替わりなり、他艦が狙われる隙を生みます。」

「止む負えない。自沈命令だ。」

「了解…」

「これで駆逐艦6隻…防護巡洋艦1隻…大きすぎる損害だな。」

しかも駆逐艦はいずれも最新鋭。損害が大きすぎる。

「砲撃密度が落ちてきたな…」

 ちょうどその時、浦風・江風が後方から攻撃を開始したころだった。

「今のうちに機関始動と石炭投棄を急げ。」

「了解。」


 ドイツ東洋艦隊 旗艦シャルンホルスト

「再び駆逐艦と思われる砲撃を確認。」

「これで3回目だ。」

「提督火は囮かと思われます。火に照らされた艦は3回とも同じ艦艇と思われます。」

「ならば我々は無駄打ちしていただけなのか…。」

 一部士官が落胆に陥る。

「先のことよりも目の前のことを考えろ!!眼前の敵を撃破しろ!!主砲の使用を許可!!湾内の敵艦を撃沈しろ。」


 1914年8月29日 AM01:50仏領マルキース島 時津風

「防護巡洋艦筑摩被弾!!被害甚大!!」

「糞!!ドイツ艦隊が本気出してきやがった機関室動かせんのか!!」

「蒸気圧がまだ上がりません。航行しようにも低速までしか不可能です。」

 残存は駆逐艦2、防護巡洋艦1勝てるわけがない。

「動かせる船は撤退する。この島に味方の戦艦が来るとしたらいつになる」

「タヒチから直行ならば3日。最も近い船ならば2日といったところでしょう。」

「逃げられるか?」

「殿次第だと。」

「第1駆逐隊の時津風、天津風は撤退支援を実施する。商船2隻とその護衛を逃がせ。」

「了解。」


 日本駆逐艦 浦風

「時津風から入電。『駆逐艦4を殿に商船2、防護巡洋艦1を逃がす。』とのことです。」

「…我らも殿か。」

「しかし、民間人を死なせるわけにはいかない。」

「江風誘爆轟沈します」

 見張りが叫ぶと同時に闇夜が明るく照らされる。

 江風は魚雷に砲弾を食らったのだ。魚雷は駆逐艦唯一の諸刃の剣だ。威力は絶大。大型の戦艦すらこれで葬り去れる。しかし、使えるのは1発ただ1回の攻撃にすべてをかけなければならない。射程・弾速も遅く、命中率は引くい。何より誘爆リスクが大きいのだ。

 今回、独防護巡洋艦の主砲弾が魚雷発射管を直撃したのだ。命中された魚雷は誘爆。破片や火の玉を周りにまき散らし、破損した船体内にある重油に引火、大火災を発生させる。

「江風から離れろ。光源だ。狙い撃ちにされるぞ!!」

「時津風!!今のうちに突入しろ!!」


 時津風

「商船は出港したか!!」

「1隻は旧式の円管式です。蒸気圧がまだ上がりません!!」

「もう1隻は水管式だな。自沈させろ。石炭を鹵獲されるわけにはいかない!!1隻だけでも石炭を確保しろ!!」

 当時の商船の蒸気機関は水を蒸気にするボイラーと動力を取り出す機関とに分けられる。機関に関しては第1次世界大戦直前のころから軍用艦船では蒸気レシプロ機関から蒸気タービン機関への発達が見られる。

 ボイラーに関しては日露戦争前の時期から新造艦に搭載されるボイラーが円管式から水管式に転換されている。この円管式は蒸気圧が上がるまで大型のもので12~24時間、小型でも4~12時間かかり、事実上の緊急出港ができない。

しかし、商船はどうだ。実は史実ではこの時代、蒸気船だけでなく帆船すら運用されていた時代だ。円管式の前世代の箱型缶をも採用している船も多い。当然最新鋭の水管式及び蒸気タービン機関を搭載する商船などまれだ。史実でほとんどの帆船が退役するのは第1次世界大戦で多くの商船が沈み、新造船と比較し圧倒的に性能不足な帆船が廃棄されたこと、戦後の造船不況による船体価格の低下による旧型船舶の更新が生じたためである。

 改史では第2次米墨戦争にて第1次世界大戦にはるかに劣るとはいえ船舶の喪失を生んだ。結果、この当時の最新鋭船舶の商船の就役が進んでいる。そのため史実よりも水管式ボイラーを搭載する商船の調達が史実よりも容易になっている。

「了解。もう1隻はすでに出港可能。全速こそ出せませんが」

「出港させろ。マルキース島に知らせろ。備蓄燃料を焼却しろ。ドイツ野郎に石炭を渡すわけにいかん。」

 タヒチからの情報ではドイツ艦隊はタヒチ襲撃で燃料の鹵獲に失敗した。ここで燃料を鹵獲させなければ大きな利益がある。沈没船から石炭を回収、乾燥させて使用する手もある。しかし、その場合、急遽引き返してきた主力艦隊に捕捉される可能性が高くなるうえに塩分を含んでいるためにボイラーに負担をかけることになることは目に見えている。

 この場合、自軍が追撃に使用する石炭まで喪失することになるが、今回、自軍が使用できる石炭が別口で用意できる。だからそのような思い切った手が打てる。

「フランス植民地政府に要請しろ。『ドイツ艦隊が現れ次第直ちに燃料を焼却せよと。』奴らにもわかるように大声で!!言ってやれ。」

「平文ですね。」

「そうだ。」

「江風被弾!!炎上しています。」

 江風の被弾は反対側で戦闘を行う

「今だ!!突撃せよ。」

 江風の逆に位置する時津風と天津風彼らにとってはチャンスではある。江風は海上の巨大松明となし、闇夜に目立つ。浦風は敵艦隊に狙われないようにすぐにその場を離れている。目立たない反対側には注意が不十分だ。しかもまだ1発も砲弾を放っていないので存在すら知られていない

「水雷戦闘用意。天津風には知らせんでもいい。こっちの動きで分かる。目標は敵艦。砲火を目印に忍び寄り、後方から雷撃、撃沈しろ。」

 駆逐艦は浦風に砲火を集中させるドイツ艦隊に接近する。

 天津風と時津風の2隻が運用している44式45㎝連装水上発射管3基6門は44式2号魚雷は雷速36ノットで距離4000mの射程がある。1隻当たり12本これを搭載している。しかし、戦闘中の素早い次弾装填は困難で第2次世界大戦中の戦いでは次弾装填装置なしの艦の場合30分以上かかっている。しかもそれは安全に停泊している状態でだ。戦闘航行中、砲弾の雨と揺れの激しい甲板上では次弾の装填は難しい。

「推定距離3000」

(まだだ…まだだ…)

「距離2500」

「砲火を確認。気づかれました!!」

「このまま進め。相対速度が大きい。命中率は悪い。至近距離から魚雷をぶち込んでやれ!!」

「距離1500」

「至近弾2」

 左右の海上に水柱が立つ。うち1発は装甲巡洋艦の主砲級すなわち8インチ砲だ。

「かまうな。突っ込め!!」

 直後、防護巡洋艦の10.5㎝砲弾がマスト(旗を掲げる棒) に命中。戦闘旗が海中に没する。

「距離1000!!」

「右舷水雷戦用意。扇状に攻撃。命中を期待するな。回頭左90度魚雷発射管撃ち方用意。」

 船が大きく右に傾きつつドリフトするかの如く曲がってゆく。

「各発射管発射!!」

 時津風は魚雷を発射。それに倣い天津風も発射。

「離脱する。回頭左90離脱せ」

 言い終わる前に敵弾が命中した。

「機関被弾!!水線下。浸水します。」

「糞!!」

 館長は顔を上げる。

「舵そのまま直進して擱座させろ。」

 目の前にはマルキース島の海岸線。時津風はそのままマルキース島に擱座した。


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